第17話:「言葉の残り香、午後の余白」** (水曜日)
週の真ん中、ふとした瞬間に“誰かの言葉”が心に残っていたことに気づく——そんな静かな揺れを描いた一話です。
水曜日の午後。
広報部のリンコは、社内報の文章チェックをしていた。
画面に並ぶ言葉たち。
でも、どこか“届く感じ”が足りない気がして、何度も書き直していた。
「…“伝える”って、難しいな」
ふと、先輩の言葉が頭をよぎる。
> 「伝えたい人がいるなら、言葉は選ぶ」
その一言が、まだ心の中に残っていた。
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休憩室で、未来がふらっと隣に座る。
「リンリン、今日ちょっと静かめ?」
「うん…なんか、“言葉の残り香”が抜けなくて」
「それ、先輩のやつ?」
「たぶん。火曜に陸さんが“届いてると思う”って言ってたのも、なんかじわっと来てて」
未来は、リンコのカップにミルクを足しながら言う。
「じゃあ今日は、“言葉の余白”を味わう日ってことで。
無理に動かなくても、残ってるものって、ちゃんと意味あるよ」
リンコはその言葉に、少しだけ肩の力を抜いた。
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夕方、リンコは社内報の最後の一文を打ち込む。
> “誰かの言葉が、静かに残る日もある。
> それは、心がちゃんと動いている証拠かもしれない。”
保存ボタンを押した瞬間、窓の外に夕焼けが広がっていた。
水曜日は、言葉の余韻を抱えて過ごす日だった。
誰かに会わなくても、心はちゃんと誰かを思っていた。
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どうでしたか?リンコの静かな感情の揺れを、言葉の余白を通して描いた一話になりました。