第15話:「静かな月曜、仕事と余白」** (月曜日)
今日は月曜日、ふたりの距離は変わらないようでいて、ほんの少しだけ“次につながる余韻”が残るような一話です。
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月曜午前。
企画部の先輩は、週初めの資料整理と進行チェックに集中していた。
モニターには、週末のイベント報告と次週の提案書。
キーボードを打つ音だけが、静かなデスクに響いている。
「…先週の反応、数字は悪くない。けど“伝わり方”はまだ甘いか」
メガネのレンズは白く光っていて、瞳は見えない。
でもその背中には、確かに“考えている人”の気配があった。
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午後、藤村部長がふと声をかける。
「章太、今週の提案、少し“感情の余白”を入れてみたらどうだ?」
「…感情ですか」
「数字だけじゃなく、“誰に届くか”を意識すると、言葉が変わるからな。
…中身は心配してないから、もっと我を出してもいいんじゃないか」
先輩はその言葉に、少しだけ手を止める。
そして、週末に買った万年筆をペン立てから取り出した。
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夕方。
退勤間際、共有スペースでリンコがコピーを取っている。
先輩は通りがかりに、ふと声をかける。
「…週末、楽しかった?なにかおもしろいことあったか」
リンコは少し驚いた顔で振り向く。
「え?あ、はい。図書館でノート書いてました。先輩の言葉、ちょっと残ってて」
「…それなら、書いた言葉も“伝わる先”に届くかもな」
ふたりはそれ以上言葉を交わさず、すれ違うように歩き出す。
でもその一言だけで、月曜の空気が少しだけ柔らかくなった気がした。
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先輩のデスクには、提案書の下に白いカードが挟まれている。
それは、誰かが“伝えたくなったときのため”に買ったものかもしれない。
月曜は、仕事と余白が静かに交差する日だった。
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どうでしたか?先輩の“仕事モード”を中心に描きつつ、リンコとのやりとりはほんの一言だけ。でもその一言が、ふたりの関係に静かな余韻を残すような回になったと思います。