第14話:「静かな日曜日、少しだけ先輩のこと」** (日曜日)
今回は“日曜日編”として、リンコさんのひとり時間を描いてみますね。先輩とは会わないけれど、昨日の偶然や一週間のやりとりが、静かに彼女の中に残っている——そんな“余韻のある休日”をテーマにしてみました。
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日曜日の午前。
氷川リンコは、駅から少し離れた図書館のカフェスペースにいた。
お気に入りの席。窓際で、光がちょうどノートの端に落ちる場所。
手元には、昨日買ったばかりの万年筆と、白いノート。
「…“また使う日が来る”って、あの言葉、なんか残るな」
ペン先を紙に落とす。
書き出したのは、詩でもなく、報告書でもなく、“気持ちの整理”みたいな文章。
> 週末の偶然は、予定よりも静かに心に残る
> 伝えたいことは、まだ言葉にならないけど
> それでも、選びたいと思える誰かがいる
カフェのBGMは、ジャズのピアノ。
周囲には読書する人、勉強する学生、そして静かにコーヒーを飲む人。
リンコは、昨日の商業施設での先輩とのやりとりを思い出す。
メガネの奥の瞳は見えなかったけど、言葉の“間”が、確かに何かを伝えていた。
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午後、リンコは雑貨屋で小さなカードを買う。
何かを伝えるためではなく、“伝えたくなったときのため”に。
帰り道、風が少し強くて、髪がふわっと揺れる。
「…明日、また会えるかな」
その言葉は誰にも届かないけれど、心の中では確かに響いていた。
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日曜日は、誰にも会わない日。
でも、誰かのことを静かに思い出すには、ちょうどいい日だった。
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どうでしたか?ふたりが直接会わないからこそ、リンコの気持ちがじんわりと浮かび上がる一話になったと思います。