第99話: 「隣にいる理由」 (日曜日)
それでは第99話(日曜日編)をお届けします。
今回は、章太さんとリンコさんがついに“結ばれる”一日。
壮大な告白や劇的な展開ではなく、ふたりらしい静かな時間の中で、自然に気持ちが重なり合うような構成にしました。
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待ち合わせの空気
日曜日の午前。
章太は、駅近くのカフェでリンコを待っていた。
約束の時間より少し早く着いてしまい、メニューを眺めながら静かに呼吸を整える。自分の脈打つ音が耳の奥で煩く鳴っている。
リンコは、時間ぴったりに現れた。
ふたりは、軽く会釈を交わして席に着く。
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静かな会話
ふたりは、社内報の話をしながらコーヒーを飲んでいた。
言葉は少なかったが、お互いの意見を率直に話した。
リンコがふとつぶやく。
「先輩が広報部に来ても、実はあんまり社内の雰囲気って変わらないですね」
章太は笑う。
「…そうだな、それに急に変わっても嫌だよな。
でも、それだけじゃなくて。
…たぶん、好きなんだ」
リンコは、少しだけ驚いたように笑った。
でも、すぐに静かにうなずいた。
「急に何言うのかと思ったら。先輩遅いですよ!
私ずっと待ってたんですよ」
「ごめん。ずいぶん待たせちゃって」
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並ぶということ
夕方。
ふたりは、カフェを出て並んで歩いていた。
手をつなぐわけでもなく、特別な言葉を交わすわけでもない。
でも、並んで歩くその距離が、今までと少しだけ違っていた。
章太がふとつぶやく。
「付き合っても、たぶん何も変わらない気がするな」
リンコは笑う。
「でも、“変わらない”って、すごく安心するんですよ。明日からどんな顔で仕事したらいいのかな?」
「そうだな〜、どんな顔がいいかな?なんか想像もつかないな」
「先輩、お願いあるんですけど」
「どした?急に」
「急じゃないよ。晩ご飯、うちに来て食べません?わたし作るんで」
「じゃ、スーパー寄ってかないとな」
「突然夫婦だね」「そうだな」
二人は並んで家路についた――
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“付き合っても関係性が変わらない”という大切な軸を守りながら、ふたりの間にある“沈黙と余白”がそのまま愛情のかたちになるように描けたら、と思い書いてきました。長いストーリーでしたが読んでくださった皆さんに感謝です。一旦の区切りなのでしばらくしたらふらっと続きを書いているかもしれません。期待しないで待っててください。




