表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ショートシーン  作者: 木村ユキムラ
1/62

第1話:「缶コーヒーは、ブラックで」** (月曜日)

ゆるやかに始まるふたりの物語。

雨の月曜日に、心が少しだけ動く瞬間をご堪能ください——



仕事帰り、駅前のコンビニ。

LEDの明かりが、雨粒をきらめかせていた。


氷川リンコは、雨混じりの強い風に肩をすぼめる。

レジに並ぼうとした瞬間、後ろから聞き慣れた声が届いた。


「…ブラック派だったよな?」


振り向くと、缶コーヒーを持った先輩が立っていた。

ネイビーのスーツ、少し濡れた前髪。

あの会議での鋭い眼差しとは違って、今は少しだけ柔らかい顔をしていた。


「…えっ、覚えてたんですか?」


受け取った缶はほんのり温かくて、手元がじんとした。

先輩は、照れ隠しなのか視線をそらしながら言う。


「別に。広報部の報告資料、ちゃんと読んでたってだけ」


「そんなわけないじゃん。報告書に好み書いてないし!」

笑いながらリンコは一歩近づく。ほんの少しだけ、足元の雨が跳ねる。


「…ありがとうございます。ブラック、沁みるかも」

そう言って一口飲んだとき、先輩の表情がふっと和らいだ。


改札の音が鳴る。次の電車が近づいてくる気配。

ふたりは言葉を交わすでもなく、缶コーヒーを片手に並んで歩き出した。


傘はそれぞれにある。

でも心の距離は、ちょっとだけ近づいた夜だった。


--

雨粒、缶コーヒー、無言の並び方。

大人の先輩×後輩、絶妙なスローラブの幕開けです

1日1話のショートシーンをお楽しみください

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ