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EP 3 謎だらけの巨大商会、その一端に触れる

オリン商会の内部に足を踏み入れたシボネン。

そこには厳重な暗号セキュリティと、想像を超える規模の組織が待っていた。

そして、彼に最初の任務が与えられる――。

シボネンはイスリンに続いて歩いた。


「シボネンさん、得意な外国語はありますか?」


イスリンの問いに、シボネンは自信満々に答えた。


「北部王国語に堪能です。南部連盟語と東方語も、少しならできます」


それを聞いたイスリンは、むしろ心配そうな顔をした。


「北部王国語以外は、業務が難しいかもしれませんね。

でも大丈夫。私が同行すれば問題ないですから!」


にっこり笑う彼女に、シボネンもつい質問した。


「イスリンさんは、どの国の言語が得意なんですか?」


少し考えたあと、イスリンは答えた。


「北部王国語、南部連盟語、東方語、西部開拓地の言語……全部できます。

最初は東方語と西部語が少し苦手でしたけど、慣れました」


シボネンは驚いた。

(このレベルなら、商会じゃなくて外交官になれたのでは?)


「えっと……」


何かを聞きかけたが、失礼かもしれないと考え、口をつぐんだ。


「ん? 何か聞きたいことありますか?」


「い、いえ……イスリンさん。頑張って覚えます!」


イスリンは、気合の入った新人だと笑った。


(ベルン公爵領の行政を担当していた俺だが、民間商会って、想像以上に規模がでかいな……)


そう実感しながら、イスリンに従った。


「さて、次は私たち現場部の部長に会いましょう。

シボネンさんも、現場部で働くなら指示を受けることになりますからね」


歩き出すイスリンに、シボネンは手を挙げた。


「子供みたいに手を挙げなくても大丈夫ですよ。何でしょう?」


シボネンは前から気になっていたことを聞いた。


「……この建物、もともとこんなに広いんですか?」


外から見たときは三階建て程度にしか見えなかったが、内部は十階以上ありそうだった。


イスリンはすぐに説明した。


「私、説明し忘れてましたね。

実は、最初に入った入口じゃないんです。

暗号の呪文を唱えて、別の場所に移動したんですよ」


彼女は、建物に入るとき唱えた暗号を覚えているか尋ねた。


「確か、『十三、茂みの地、第五馬車』だったかと……」


その答えに、イスリンは驚き、シボネンの肩を軽く叩いた。


「すごい記憶力ですね!

入口の暗号は、内部エリアに入るためのセキュリティ呪文です。

認証された者だけが入れる仕組みなんですよ」


(……セキュリティ、ガチガチじゃないか)


そんな驚きもあったが、業務には確かに便利だと思った。


「では、現場部に行きましょう!」


イスリンに案内され、オフィスのような場所に到着した。

中では多くの団員たちが忙しそうに働いていた。


奥に座る、山のように書類を積み上げた女性に、イスリンが紹介した。


「こちらが現場部部長、リシェさんです。

現場部の業務は、すべてリシェさんの承認が必要です」


リシェは三十歳前後に見える、南部連盟国風の褐色肌の女性だった。


紹介されても顔を上げず、書類に目を落としたままだった。


(忙しそうだな……)


イスリンは気まずそうに笑い、他の人物も紹介した。


「こちらは現場担当官、メルビンさん。

主に東方方面の現場業務を担当しています」


メルビンは三十代後半ほどのがっしりした体格で、短い赤髪と髭を蓄えていた。


彼はリシェの様子をうかがいながら、イスリンに軽く手を振った。


「……さて、話を戻しましょう」


リシェが突然立ち上がり、イスリンに書類を差し出した。


「今日から新人が来たので、マスターレプルから現場任務を渡されたわ」


イスリンは戸惑った。


「えっ、でも……今日入社したばかりですよ?」


「それはマスターレプルに聞いて。

とにかく、任務を引き受けて、適切に配分して」


渋々書類を受け取ったイスリンは、シボネンに苦笑した。


「シボネンさん、とりあえずこちらへ」


彼女はシボネンに椅子を勧め、渡された書類を見せた。


【北部王国ログラード、商会の魔法石輸送業務】

輸送日数:7日間

荷馬車5台+補給馬車1台

予算:金貨7枚、銀貨23枚

輸送担当:ウィスパー上級秘書 イジ

現場担当:プレート現場官 イスリン

護衛担当:ディッシュ コードC ジェンソン、アタリ 他6名

外部傭兵:3名(北部王国傭兵団)

難易度:Aランク

備考:必要に応じて商会支給の防護装備を着用。


イスリンは不安げに言った。


「最近、帝国とマラン王国の間で小競り合いがあって……

国境付近はあまり安全じゃないんですよ」


シボネンも、カール侯領とマラン王国で小規模な衝突が起きていると聞いていた。


「まずは国境守備隊に輸送許可を申請して、それがダメなら西方未開拓地を回るしかないですね」


「……未開拓地か」


そこは未だに魔獣がうろつく危険地帯だ。


イスリンは続けた。


「ところで、シボネンさん。地図測量ってできますか?」


シボネンは頷いた。


「よかった。では、予算内で補給計画を立ててもらえますか?

目的地までの日数も合わせて計算してください」


「了解しました!」


イスリンは微笑んだ。


「そんなに急がなくていいですよ。

明日、カール侯領本部に申請する予定なので、それまでにゆっくり考えてください」


シボネンは初めて任された仕事に、強い使命感を覚えた。


「それと、暗号呪文を使えるように、認証印を刻みましょう」


イスリンに連れられ、手に認証印を刻まれた。


「適当に呪文を使わないでくださいね。

使えるのは、商業地区内だけですから」


イスリンは業務があるため、そのままシボネンに自由行動を許可した。


シボネンは寮に戻らず、新人マニュアルを読み込むことにした。


【新人マニュアルで判明したこと】


許可エリア

商会内の記録保管室などに自由に出入り可能。


商会構成


実行部「プレート」


秘書部「ウィスパー」


護衛部「ディッシュ」


部署の役割


プレート:行政・貿易業務


ウィスパー:業務管理・指示・商会主サポート


ディッシュ:輸送・警備担当


マスターたち

プレート、ウィスパー、ディッシュそれぞれに部門長マスターが存在。


福利厚生・行動規則


(思ったより、オリン商会は規模が大きいな……

帝国最大級かもしれない)


シボネンは、まだ謎の多い商会に思いを馳せながら、次の業務に備えた。


(まずは、イスリンの期待に応えなければ)


そして、彼は記録保管室の扉の前に立った。


「暗号は、六 八 コーヒーカップ 二回目のリフィル」


呪文を唱えると、扉が開き、書物で埋め尽くされた空間が現れた。


その中に、誰かが立っていた――。



最後までお読みいただき、ありがとうございます!

シボネンの新たな挑戦が始まりました。

次回もぜひお楽しみに!

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