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EP 1 白髪一本で没落した俺、商会で人生を立て直したい

白髪一本で没落した元貴族、シボネン。

人生を賭けて商会への就職に挑むが、そこに待ち受けていたのは想像を超える現実だった――。

再起を目指す彼の奮闘記、ここに開幕。

―書類選考に合格しました。面接は今月15日に実施いたします―


シボネンは、震える手で紙をじっと見つめた。

嬉しいような、やりきれないような、複雑な気持ちだった。


「…まさか、商会への就職に命を懸ける日が来るとはな」


かつては公爵領を統括するエリート従者であり、王都からもスカウトが来ていた。

しかし今は、没落した下級貴族の身だ。


「それでも、諦められるか?」


シボネンは、人生最悪の日を思い出した。


帝国のベルン公爵領。

勢力家であり王族でもあるベルン公爵が主催するパーティー。

多くの貴族たちが見守る中、彼はある令嬢の白髪を一本抜いてしまった。


『お美しい髪に、冬の霜が舞い降りましたね』


自分でも悪くない台詞だと思ったし、令嬢が顔を赤らめたのも照れ隠しだと思った。


だが、すぐに衛兵が駆けつけ、ベルン公爵はシボネンを睨みつけながら言った。


『貴様、自分が何をやったか分かっているのか?』


最初は誤解だと思っていた。

だが、公爵の城の地下牢に叩き込まれたとき、ようやく事態の深刻さに気づいた。


――公女を侮辱した罪は、本来なら王都で極刑。しかし、慈悲深いローレン公女様のご配慮により、領内での処罰に留める。


公女は、シボネンが自分を撫で回し、侮辱的な言葉を投げかけたと証言したのだ。

シボネンの弁明は、一切聞き入れられなかった。


『この男を裸にして、拘束具に縛り、一週間放置する刑に処す』


それを"慈悲"と呼ぶらしい。


「どこが慈悲だ、畜生公女め…感謝なんかしてたまるか」


たった一本の白髪を抜いただけで、人生のすべてが崩壊するとは、夢にも思わなかった。


牢獄で惨めな日々を過ごした後、裁判にかけられた。


『罪人シボネン・ヘッドウィカーは、すべての位階を剥奪。国法に基づき…』


選択肢は二つ。

莫大な罰金を支払うか、西方開拓地への強制労働送りか。


「…罰金の方がマシだな」


そう判断したものの、財産をすべて売り払っても足りない額だった。

名誉も地に落ち、追放は時間の問題だった。


「まずは目先の火事を消す。話はそれからだ」


位階は失っても、まだ貴族だ。

国家機関には、かつての彼を知る者も多かった。


「ここで終わるものか。絶対に立ち直ってみせる」


だが、現実は厳しかった。

裏切り者を雇いたい貴族など、どこにもいなかったのだ。


月末までに罰金の利子を払わなければ、即追放。


「こうなったら、民間にも履歴書を送ろう」


焦る気持ちで、商会や開拓会社にも応募し始めた。


やがて、最初の返事が届いた。

期待を込めて開封すると、それは公爵領の下級貴族であり、かつての婚約者からの手紙だった。


――シボネン。あなたの醜い行為と恥知らずな振る舞いが、私たちを引き裂いたことを自覚しなさい。

あなたが皆の名誉のために、自ら命を絶つことを祈っています。


かつての婚約者、シャリカからの、あまりにも冷酷な絶縁状だった。


続いて、両親からも手紙が届いた。


――シボネン・ヘッドウィカーよ。お前はもはや我が家の者ではない。

お前の汚れた欲望が、家門に災いをもたらさぬことを祈る。


両親からの絶縁。

シボネンは、その瞬間、すべてを失ったことを実感した。


「大丈夫だ…俺には、まだ道がある」


彼はこれまで、領地発展のために努力し、軍学校と大学を卒業してきた。

無駄だったはずがない。


「絶対に、仕事を見つけてやる」


しかし、その意気込みもむなしく、日々は過ぎた。

もはや罰金の支払いも滞り、追放が現実味を帯び始めた。


そんな中、ようやく届いた一通の通知。

それは、民間の商会からだった。


――書類選考に合格しました。


三日間、何の連絡もなかった中での、唯一の希望だった。


最良の服を着て、面接会場へ向かったシボネン。

だが、心のどこかで引っかかりを感じていた。


「…公爵領の行政を担っていた俺が、商会勤めだなんて」


それでも、彼を呼んでくれたのはここだけだった。


面接室に通され、シボネンは遠慮なく質問を投げた。


「報酬条件についてお伺いしてもよろしいでしょうか?」


中央に座っていた中年の男が、書類から顔を上げた。


「君は、どの程度の待遇を希望しているのかね?」


シボネンは躊躇わずに答えた。


「契約金五枚、月給も五枚の金貨を希望します。

勤務日は月二十八日まで可能です」


男は眼鏡を押し上げ、書類をじっくり読み込んだ。


「…経歴は確かに華々しい。だが、前科もあるそうじゃないか」


その言葉に、シボネンの心臓が凍りついた。


(…そんなこと、書類には書いてないはずだ)


噂は、すでに商会にも届いていたのだ。


「はい。承知しております。しかし、私は必ず商会に貢献できる自信があります。

過去の不運を乗り越え、必ず成果を上げてみせます」


もはや、後がなかった。

ここを逃せば、本当に終わりだ。


「いいだろう。では、君がどんな"革新"をもたらせるのか、聞かせてもらおう」


シボネンは深呼吸し、冷静に語り始めた。


「北部王国と東方語に堪能です。主に貿易関連の現場で即戦力になれると考えます。

さらに、ベルン公爵領の行政業務に二年以上従事し、

運送コストや護衛部隊の配分を最適化するノウハウもございます。

帝国大学および軍学校を卒業し、実際に軍将校として二年間の実務経験もあります」


面接官たちは黙って聞いていた。

(やりすぎたか?)と一瞬不安になるシボネン。


「もちろん、商会の規則に従い、与えられた任務に忠実に従います。

記載していない業務にも柔軟に対応できます」


中年男性は、隣の面接官たちと視線を交わし、笑った。


「…興味深いな。君の能力は疑いない」


しかし、横にいた女性面接官が冷ややかに続けた。


「ただし、それは"過去の栄光"に過ぎません」


シボネンが何か言いかけたが、女性面接官は制した。


「提出書類と、今のお話は参考にさせていただきます。

結果は後日ご連絡いたします。

本日は面接、お疲れさまでした」


――悪い予感がした。

本能が、警鐘を鳴らしていた。


「…あの、最後に一言だけよろしいでしょうか?」


中年男性は笑いながら、どうぞと促した。


シボネンは、必死で言葉を絞り出した。


「私は何事にも万能ではありませんが、環境への適応は誰よりも早い自信があります。

商会の一員にふさわしい働きを証明する機会を、どうかお与えください」


自尊心など、もはや贅沢だった。


「…分かりました。参考にさせてもらいます」


女性面接官は封筒を手渡した。


「本日の面接、ありがとうございました。ささやかですが、交通費をご用意しております」


シボネンは深く頭を下げて、封筒を受け取った。

そして、心の中ではただ一つ。


(……詰んだな)


帰路。

(いっそ財産を処分して夜逃げするか?北部王国の奥地へ逃げ込めば――)

そんな考えが頭をよぎる。


だが、自宅に戻ると、そこには税務官たちが待ち構えていた。


「……ああ」


史上最悪の徴税人たち。

ありとあらゆる財産が没収された。


身ぐるみを剥がされ、残ったのは銀貨二枚と銅貨数枚。


これでは、今夜の宿すらままならない。

韓国スタイルのファンタジー小説です。

拙い部分も多いかと思いますが、これから応援していただけると嬉しいです。

一生懸命、連載を続けていきます!

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