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自覚させる恋情

作者: 朋樹

好き嫌いに性別なんて関係ない。

これは、小野が自分の好き嫌いに対して無意識にしている言い訳だ。


時に彼女は、少年誌を読んで熱血になったり、

時に彼女は、制服にスラックスを選び、

時に彼女は、ストレートな下ネタを男子と語らい、

時に彼女は、女子の感情論に理論で返したり。


はっきり言うと、性別にあまり無頓着。

ただ、イケメン男子に対する変身願望があった。


髪型はウルフカット寄りのショートヘアに近く、男子と混じっても違和感がない程度には凄くスレンダー。腹筋バッキバキ。

男子全員は彼女を女子だと全く気づいていない。

今日の放課後も何も考えずにとある男子の家に遊びに行く予定だ。


「池田ん家に遊び行くから、そこまで運んで〜。」

放課後、小野は眠そうにしている。


話しかけられた男子は呆れていた。

彼女は授業どころか昼休みもずっと寝ていた。

昼食も10秒も経たずに食べた完全栄養食のパンだけ。寝ている間もお腹なってた。周りはいびきとお腹の騒音が気になってしょうがなかった。最終的に男子は小野に購買で弁当を奢った。


そう考えたら、いま眠そうにして何かお願いしているのはなんか違うのでは?必死にあの手この手で逃れようと、誤魔化そうと何か口実を考える。「池田」と言う名前を聞いて、学校で広まっている噂を使って、断る口実にしようと考える。


「というか、池田はやめとけ。

あいつホモなんだろ?ケツ掘られるぞ。あと、女嫌いとか有名だし。」

「そ〜なの?」

池田とは、他の男子と同じように、仲が良く、よく家に遊びにいっている。

最近、学校に来ないと心配していたが、そんな噂が広まってることについては小野は知らなかった。


でも、別に構わない。気にしてもいない。

脳のエネルギーを振り絞った。

「でも、あいつは今独りなんだろ〜?僕が差し伸べなきゃ誰が救ってくれるんだ?」

そして、体力が枯渇したのか、飲みすぎた酔っ払いみたいに、もたれかかる。うわ言を言っている辺り、まさに酔っ払いだ。

言い返せなかった男子は結局、池田の家まで運ぶことになった。


小野が目覚めた時には、池田の部屋にいた。

「フガッ」

鼻をつねられて起こされた。

「いつまで寝てんだ。映画を一緒に観れねぇだろうが。」

「あぁごめんごめん。じゃあどんな映画がいい?」

「じゃあ、お前がいつも推しているこれにするか。」


池田の家で映画を見る時は、月額課金の動画配信サービスを使って見ている。それもチューナーレステレビで。チューナーがついていない分が安くなったのか、画面が大きいし、画質が綺麗すぎる。これが話題の8Kらしい。


タイトルは池田が事前に予告編を見て、すごく面白かったもの面白そうだったものを追加しているリストの中から、小野に選ばせている。

今日、二人が見る映画は恋愛をテーマにしている。予告編を見て池田は、図々しいくらい押し付けがましい演出だらけで、胃もたれしかけたが、主役のイケメン役を演じている俳優が、小野の今の最推しというだけで一応リストに入れていた。


小野は推しのかっこいい姿が観れるという理由だけで、興奮していた。

池田は少し胸が苦しくなってた。


ハズレだった。


やはりというかなんというか、30分あたりで持たなかった。ヒロインが結構苦しんでいるのに、イケメンがまだ出ない。余りにも展開がグダグダすぎる。

池田は貧乏ゆすりを始め、トイレに行く頻度が多くなる。小野はまた爆睡し、映画の雰囲気をぶち壊す程度にいびきをかく。疲れているのだろう、映画が終わるまでは起こさないであげよう。それが池田にできる最大限の思いやりだった。


やはり宣伝費と主役にお金を掛けていそうな映画は地雷なのだろうか。

次からはレビューも吟味して、映画の選び方に一層の注意をせねばならない。二人はそう心に誓った。


二人で緊急会議を始めた。

テーマはズバリ、「恋愛映画を面白くする方法」。


役者や原作の名を借りたことで、文句なしに訴求力はあったと褒めたり、世界観が共有し辛いと批判したり。いろんな議論を交わした。

そして、池田はテーマの根本について聞いてみた。

「そういえば、恋ってしたことある?」

「ない。」

「多分、俺も。」

そもそも、さっきの映画を見るのは、恋愛映画を好む層を鑑みて、間違いだったかもしれない。そう後悔する池田だった。


「あ、でも、一度はしてみたいなとは思う。だって、あの映画は言ってたよ?恋は人を変えるって。もし自分が恋をしたら、どんな見た目・性格になるか、なんか期待しちゃうじゃない?」


小野の発言に池田は何かを確信するように見つめる。

「何?顔になんかついてる?」

「やっぱりお前、女の子なんだな。」


彼女は少し動揺した。

「あれ、私の性別って言ってたっけ?

まぁ、隠しているつもりはなかったけど。」

「いや、うちの母親が初対面の時から気づいてたらしい。お前の性別を知った時の俺の間抜け顔を見て高笑いしてたよ。」

「うわ想像つくわ〜。(笑)


で、それで?僕が女の子と知った時、どう思ったの?」


彼は一呼吸を置いてから、正直に答えた。

「…別にどうも思わないよ。男女関係なく、お前は不登校である俺との娯楽に付き合ってくれるいい奴だ。お前の事情とか気にする余地なんか無いよ。」

「ただの友達として見てるって事ね。よかった、よかった〜。」

少し胸を撫で下ろした。


「じゃあさ」

小野は、池田の両肩を掴み、自分の口を彼の右耳に近づけた。

(こんな感じに囁かれても、何も感じないよね?)


もちろん、彼女は本気で言ってる訳じゃない。

一片も曇りない眼で異性として見ていないと言われ、何故かモヤモヤしたので、少し遊んで揶揄ってるだけだ。彼の体が震えている事に気づいた時は、静かにほくそ笑んでた。


そして、彼女の余計な一言が、囁かれた彼の理性を霧散させた。

石鹸をバラバラにしている下手なASMR動画よりも何十倍の生命感のある囁き声が脳に快楽を呼び起こした。

状況が良くない。家にいる人はリビングのソファに座っている二人だけである。もはや、このサイトに書き込めない展開に入ってしまう可能性の方が高い。


小野は押し倒された。

「え、ちょ、なに」

「お前がそう言うなら、これから俺がお前にすることに文句はないよな?」


彼女の唇が彼の呼吸を感じる。眼がキマっている池田の顔を見て、さっき初めて聞いた噂を思い出し、これから自分がされる事を想像して、小野は彼を突き飛ばしてしまう。

「あいや、あの。その… …なんかごめん、もう帰る!」


学校指定の靴下のままで走ってしまった、故に階段で滑って転ぶ。

しかし、転んだ痛みとか知らんと言わんばかりに急いで玄関を出た。


後悔や雑念を振り払うように、走る、走る、走る、走れ。

この時の速度は音速をも超える。そう錯覚させるぐらい、心臓の鼓動が速く鳴っていた。蒸気機関車の汽笛のように叫んだりもした。


心を落ち着かせる為に、一旦止まる。道の曲がり角の手前にある電柱で人目がつかないようにうずくまった。

彼女は性に関してはあまり頓着がなかった。彼を突き飛ばしてしまった理由を考察して、初めて自分の性別を実感した。これは自分の何もかも変えてしまう。


自分の家に着いた小野はクローゼットにしまったスカートを履いてみた。

男子の内輪ネタで、一度は履いて見せた事がある。その時の写真と鏡に映るを比べて見た。可愛い。なんかこう、佇まいがエロい。一回転をする。スカートの広がり方すらも美しく見える。


翌日の学校でもスカートを履いて、登校した。

足を出しているせいか、いつもより男子の目が気になってしまう。自分のどこを見ているのか手に取るようにわかってしまう。でも、悪くない。


生活指導の先生が少し狼狽えていて、何か言い淀んでいたが、小野はこう黙らせた。

「女の子が女の子の格好しちゃだめですか?」

言った瞬間、周りにいた男子全員がどよめいた。彼女は少し笑って、艶かしく男子を睨んだ。


授業態度も優等生そのものに変わった。授業の内容全てを理解している訳ではないが、せめて、自分は授業を真剣に聞いているというアピールをしておかないと池田に幻滅されるかもしれない。こんな感じで、小野の行動指針は池田を軸にしていた。


なので、完全栄養食のパンすら食べない。食事のメニューをおざなりにしてる事に気が引けて食べようともしない。急転する雰囲気の変化に対して、流石に近づき難く、妙な肩身の狭さを感じた男子はもの凄く声を掛けづらかったので、何か事情を聞けと女子に目配せした。察した女子の一人が面倒くさそうにしながら、小野に声を掛ける。


「お、小野さ〜ん、昼食を食べなくてダイジョ〜ブ?いつもより元気ハツラツに見えるけど〜」

「元気とはちょっと違う。少し胸が苦しいだけ、声を掛けてくれてありがとう、大丈夫だから」

「あら〜そ〜。体調管理、気をつけてね〜。」


教室にいた男子全員の脳が破壊された。

彼らの心の叫びは皆同じ。

(池田ァ、俺たちの小野に何をしたぁッ⁉️)


翌日の昼休み、新聞部の部長である3年女子は小野の最近の変化について取材をしたい、そうインタビューの申し出をした。別に断る理由はなかったので、小野は了承した。


翌週の放課後、小野は事前に取材場所と決めていた新聞部の部室に入った。

部室には、小野を含めて3人。

部室の左奥の椅子には、インタビュワーと思われるレコーダーを自らの目の前に置く2年の女子。その隣には、以前取材の申し出をしてくれた新聞部の部長が座っていた。


「改めてご紹介を。私、部長の相川と今回のインタビュワーの沼津です。今日はよろしくお願いします。」

「小野です。こちらこそ、いい記事ができるように、全力で答えます。」

「沼津です。今回は取材を受けていただきありがとうございます。それではさっそく質問、というより真実の擦り合わせしましょう。」

沼津は期待するように、楽しみを待ちきれず後から駄々をこねそうな幼稚園児のようにワクワクしていた。この時点で小野は雲行きの怪しさを予感がした。そして、その予感は悲しいくらいに見事に的中する。


「小野さん、あなたは池田くんに強姦されたのでしょう?」


突飛な発言に部室にいる他の二人が眉をひそめた。

小野は否定できない訳ではないが、そんな強烈な表現をされる筋合いは無かった。それでも、沼津は小野が話す間もなく捲し立ていく。

「男子を中心に聞き取りしたところ、池田くんはあなたに何かをしたのが、みんなの共通認識でした。そして彼には、同性愛者で女性嫌悪者という悪い噂が流れています。分かっています。つまり、池田くんはあなたを男と勘違いして性加害をした。もしくは、女と知って服で皮膚が隠れる部分に暴力を振るった。だから、あなたは男子全員に抗議をしたのでしょう?実際、あなたの抗議の効果は絶大的だった。」

「は、はい?」

「スカートですよ。スカート。す・か・あ・と。あの女装は『男子は私に近づくな。』という抗議が暗喩として込めているのは分かっています!本当は男が嫌いなんでしょ?」


どっちが取材されてるか分からなくなっていた。

「いやあの、少しは喋らせて

「いいえ大丈夫です、無理に話さなくて!あなたの苦しみは誰よりも分かっています!」

私はあなたの目線に立って、恨み嫉みを代弁します!と崩さない沼津の姿勢に思わず引いてしまった。己の主義主張が正しいと叫ぶ為に、「当事者」を作り奉る助平心が滲み出ているのが悍ましく見えてしまう。


熱く盛り上がっている沼津を横目に、相川は青ざめていた。

「あんた、自分が何言ってるのか、分かってんの⁉︎」

「部長は黙っててください!この乱れ腐った学校の風紀を正す千載一遇のチャンスが来たんです!この事件を見逃せと⁉︎」


新聞部自体は腐ってない、全てはこいつの暴走であると。

小野はそう理解した後、机を強く叩き立ち上がる。


「もう黙っててください。池田はありのままの自分を見てくれた。それが心が躍るくらい嬉しかった。あの人のことが好きなんだ。今の私は、あの人に一番見せたい私なんです。だから、あなた方みたいな下衆に被害者扱いされるのは勘弁してください。」


沼津は自分の間違い受け入れられずに唖然とした。

「それは、ちがう。」


「あなた達が伝えたいことが大体分かりました。今回の取材はお互いの為に無かった事にしましょう。今回のことを脚色して新聞に書いたら、弁護士雇って訴えますから。」

相川はすぐに頭を下げた。

「本当にすみませんでした…!」

「なに謝っているんですか、相川先輩!あ、ちょっと小野さん⁉︎言質…じゃなくて、取材はまだ取っていませんよ!どうなっても知りませんからね〜!」

小野は足早に帰り、新聞部部室のドアを強く閉めた。階段を下っている時、何かを鞭で打ったような音が少し響いた。


あれから一週間が過ぎた。

新聞はいつも通りに発刊されたが、小野と池田に関する記事は流れなかった。教室にいる男子全員が溶けていたのは梅雨明けの暑さも原因の一つではある。そんな男子達にどこ吹く風という表情をしながら小野はここ最近、池田の家に行けてないことに憂いていた。昼休み、窓の風景の奥側を見て、黄昏ていたら、教室が少しざわついた。


「小野」


声を掛けられたので振り返ると、池田がいた。

彼は苦虫を噛み潰したような顔をして、たまに目を逸らしては、たまに目を合わせる。その度に、小野のブレない上目遣いを目に入る。心臓を自ら握り潰しそうになる。

「な〜んか、今は会いたくなかった顔をしているね。」

「いや別にそんなことは…!あるかも。」

「で?ど〜して来てくれたの?」

「その格好に衝撃を受けすぎたバカ野郎どもが、俺が何をしたのか問い出す為に家に押し入ったんだよ。」

「そうなんだ。やりすぎちゃったっぽいね。」


沈黙。


「だからその、あの、あの時はごめん!」

池田はおでこを膝にぶつけそうな勢いで、頭を深々と下げる。

「要件はそれだけ!それだけだから!」


池田は小野の目を合わせようともせずに、すぐに帰ろうとする。

彼女は彼の左手首をすぐに掴む。すぐに離れようとするも、全然離れない。

「私はまだ許してないよ、池田くん。」

彼女は察してしまった、ここで別れたらもう二度と会えない気がする。絶対にこの手を離さないと火事場の馬鹿力を呼び起こし、一時的とはいえ、小野の握力は校内全体で一番となった。


池田が振り返り、目があった瞬間の痛恨の一言。

「悪いと思っているなら、私を女の子にした責任とってよ。」


一瞬、時が止まる教室。また脳が破壊される男子も、恋の話題に飢えている女子も響めく。池田は自分がしでかしてしまった事の大きさに気づいてしまい、段々と過呼吸になる。そして意識は遠のき、小野の方に倒れ掛かる。


「…またやりすぎた。よいしょ」

小野は池田を背負う。

「あちょ、小野さん、ホント大丈夫?」

「ん?ああ、コイツよりはマシだよ。じゃあ私、保健室に行くから。」

「私、支えるからゆっくりね、ゆっくり!」

「うん、ありがとありがと〜。」


池田が眼を覚ます。

気づいたら、保健室のベッドの上にいる。

左手に小野の右手が万力の如く握られている。鉄球と鎖の様に、相変わらず離れない。彼女は、上半身をベットの上に突っ伏しながら、寝ている。

時計を見たら、もう放課後の時間だ。


示しを合わせたかの様に、新聞部の部長である相川が入る。二人を見つけ、深々と頭を下げる。両手には二人分の菓子折りと紙切れを持っていた。


「沼津は…どうしたんですか?」

「私が一喝して新聞部をクビにしたら、引き籠っちゃった。あなた達が責任を感じる必要はないですよ。

…あの時は、止められなくてごめんなさい。沼津さんがあなたの尊厳を貶める記事を書くのをやめさせようとしたけど、利益を重視をした当時の部長に押し切られてしまって…根も葉もない噂が流れた時には、もうどうしようも無くて…なんと詫びればいいか分かりません…。」

「部長さんも責任を感じる必要はないっすよ。あの記事を書いたのは沼津で、その前にあいつの心に傷を負わせたのは、告白をすぐに断った俺なんです。自業自得ですよ。噂に対する批判はだいぶ応えましたけど。」


「ならせめて、ここで噂の真相を記事に書かせてください。あなた達の名誉も少しは回復します。」

「やめてください。どこの社会でも必要なのは『事実』ではなく『叩きやすい悪魔』なんです。もう世間から見ると俺は『叩きやすい悪魔』。多勢に無勢ですよ。悪いと思っているなら、小野の事もそっとさせてください。」

「それでも、今回の騒動を起こしてしまったのは、我々新聞部が遠因になっています。せめて、こちらを受け取ってください。

それに、このチケットの映画は二人におすすめですよ?男女コンビが大きな困難に立ち向かう系の。」


池田は映画に少々興味が湧いた。

菓子折りと一緒に、映画のチケットも受け取った。

「…映画のチケットはともかく、菓子折りは二人分もいらなかったですよ。」

「そう、ですか?」


「一人分の菓子折りを小野と二人で食べますから。」


相川は池田の思わぬ発言を聞いて、吹き出していた。

「あらま、そう。お邪魔したわね…逢引きのところ…フフッ…失礼…しましたブフォッ…!」

少々バツが悪そうに言い残し去っていった。


「んねぇ池田ぁ…」

小野が気づいたら、起きていた。


少し青ざめる。

「小野、全部聞いてた?」

「うん。


…一緒に映画観ようよ!

ところで、なにこの高級そうなお菓子?あれ、二箱もある!ねぇこれ一緒に食べない?」

「そっか、よかったな。」

「うん!」


実を言うと、小野は池田が起きていた頃から狸寝入りしていて、沼津関連の事情も聞いてしまったが、彼の名誉の為にも、この秘密は墓場までに持っていく事にした。


二人で映画を見ようと待ち合わせをした。

池田の服装は普段通りだが、小野の方は気合いが入ってた。

池田は気づいていた。彼女の服装が昨日の朝に流れたニュースバラエティのファッションコーナーで紹介された組み合わせがほぼ同じだった。彼女は着慣れていないのか、少しもじもじしていた。彼は何も言わずに手を繋いで、一緒に映画館へ向かった。


やはり映画館で見ると迫力があっておもしろい。内容の時点で分かっていたが、やはりクライマックスの後に、主人公とヒロインとのキスシーンが流れる。池田は気まずくなってしまう。小野はどんな顔しているのか、一瞬だけチラ見をしたら、彼女はガン見していた。つい、三度見した。

六秒、お互い見つめあって小野が一言。


「ねぇ、チューしよ?」

どうやら彼女は羞恥心を感じていない。いや違う、楽しんでいるのだ。


二人の初めてを奪い合う瞬間を見た者は誰一人いなかった。

初めての終わりは映画の方の終わりと同時。

小野は映画よりも長く濃厚なモノにできなかったのが残念だった。


小野とさよならをした後も上の空だった。映画はハラハラ感があって面白かったが、なぜかエピローグの内容が頭に入ってない。もう配信が待ちきれない。小野と一緒に、家で見た恋愛映画は面白かったのではないかと記憶が修正されていく。


家に着き、さっそくあの恋愛映画を見返した。

面白くはなかった。今日映画館で見た映画よりは数段劣る。でも、小野とまた一緒に見たらきっと面白く思えそうだった。これが経験を通して、視点を変えるという事か、はたまたこれが色眼鏡というものかと身に沁みた。


どっちだっていいと結論を振り払い、今日もネットで最新映画の予告編を見て回っていき、面白そうなものがあったらリストに追加しておく。今度からは映画館で見る予定だ。あ、小野の最推しが主演の映画を見つけた。予告編も面白そう。ちゃんとリストに追加しておこう。

こんにちは。この小説の作者です。

初めて恋愛小説を書きました。彼女は作ったことがありません。

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