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その頃① sideマリー

その頃① sideマリー





「では、行って参る」


そんな言葉を残し、旦那さまとジンとナターシャは王家の迎えの馬車に乗って行った。


本来なら、女主人としてこうした領主不在の日は私がハルカスの主として残るのだけど、今日は偶然が重なり私も町を開けることになっている。


勿論こういう事をあるので、そういった日にはシールドという迷宮品で町を守る事が出来るので別段心配はない。



だけど、それでも、



「さくちゃん、本当に大丈夫?

もちろん、貴方のスキルの中にいれば絶対安全なのもわかってるし、カカのスキルも使ってるから「マリーママ大丈夫だってば。昨日からずっと心配してくれてるけど、私本当に良い大人だから。安心してってば」



クスクスと笑った後に、心配してくれるのは嬉しいけどなんて言われてしまう。



分かってはいるのです。

それでも、心配してしまうのが親心というものでしょう?



「お母様お気持ちわかりますわ。

本来でしたらご一緒にと言いたいくらいですが、一番安全なのはこちらですものね。

でも、それでも、心配ですわよね」



そんな気持ちを汲むように娘のシーシャもうなづいてくれる。


とはいえ、シーシャの言う通りで今日向かうのは冒険者ギルドである時点で、町の外に出るという事だけでなくその場所だけでも危険があるので連れていくなんて事は出来ないんだ。




「もう、2人とも時間時間!

気をつけてね!行ってらっしゃい!」



そう背中を押され、私たちも冒険者ギルドが寄越してくれた馬車へと向かう。





「お母様、心配していても仕方ありませんわ。

今日はさくお姉様から頂いてるカロリークッキーのお話し合いでしょう?良縁が結べると良いですけど」




「ええ、でも、それこそ心配していないですよ。

喉から手が出る程に欲しがられる商品でしょうからね」




そうシーシャに伝えると、流石サクお姉様ですわっと花が咲いたように笑う娘を見て私も顔が綻んでしまう。



シーシャは本当によく笑うようになった。

色々な件でサクちゃんへの感謝してもしきれない中で、シーシャが心底からの笑顔をこうして見れるようになった事もその1つである。



シーシャは町の貧困の原因であるあの男との事件について非が自分たちにもあるんではないかと思っているんだ。

もちろん、本人の口から聞いたことはないが、そう思って自分を責めているんだろうというのは女親として伝わっていた。

何度も何度もそんな事はないと遠回しに伝えてはいたが気丈に笑って大丈夫だとしか言わなかった。


元々はあの男の執着の原因は私だったし、私の可愛い娘たちをなんて、そんな事は元よりこの命が消え去ろうとも許すつもりなどなかったのだから一切の責任なんてないのに、それでも、シーシャはいつもどこか辛そうだった。



ドレスや宝石も買えなくなり、教育さえもまともに受けられなくなって、そして最後には食べ物さえも苦しくなっていく最中でも、シーシャは1つの恨み言を言わずにむしろ自分の物を我先に売ってほしいと、民のみなに与えたいという子だった。



それがまた、悲しかった。

笑っていても、どこか心の底からの笑顔でなく常に頑張っていなければという表情で、母親として傍に居ること以外出来ない事の不甲斐なさに何度ともなく涙を流した。




でも、それがあの日から変わったんだ。




本当にさくちゃんと出会い、町が救われていく姿を見ながらその事への感謝と共に、シーシャの笑顔がどんどんと輝きを取り戻し、幼い頃の満面の笑みを見た日には嬉し涙さえ流した。




もちろんナターシャやジンもそうだ。

ナターシャにとって同世代の心を開ける友達という貴重な存在になってくれ、ジンに関してはもしかしたらサクちゃんに恋心さえ抱いているかもしれないと思ってしまうくらいに慕っている存在になってくれた。



母親として、町を救ってくれた事以上に家族を救ってくれた救世主にはきっと一生頭が上がらないだろう。





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