if end 星なき世界
星の力を掻き集めた大剣を星に突き立て、封じる。その恩恵を得ながら、仇で返すような鎮め方しか出来ない私達を星は、嘆くだろうか。
大戦と滅びの記憶。
星の警告を上手く活用出来ずに、分岐点で無様にも失敗した我々は異界の星詠みを失った。
『ウラ、ヌス……』
『話すな! すぐに治してやるから!!』
『ごめ……ね……』
『クソッ…効け、効け! 早く……!!』
彼女に掛けた治癒術は水のように流れていった。星術の影響を受けやすい体質と私の力。その二つが合わさっても奇妙な程に彼女の灯火は弱まるばかりだった。
冷たかった。彼女がこんなに冷たいはずがないと苛立ったのを覚えている。
無情に光を失っていく瞳に、己の中も冷えていったのだ。
『エイコ!! 愛してる!!』
その意識が拾う内にと、咄嗟に声を張り上げたが、嗚咽混じりの酷い声だったと思う。あの時はそんな事、どうでも良かったが。
『…して、る……』
ぴくりともしなかった真っ白なかんばせ。ほとんど喉だけでエイコは返してくれた。それが最後だった。開いたままの目蓋を閉じるのが惜しくて、そのままにしているとオージェが閉じたのだ。
『……エイコは、死んだのか』
それを口にした途端、己の今生も終わったのを感じた。
もはや私の乙女はいない。それでも世界はまだ続いている。なればエステレアの皇子として生まれた己の、平和を取り戻す使命は健在だ。
私にアザーを浄化することは出来ない。災厄となった星を正気に戻すことも叶わない。
しかし微かに残されていた星の意思が、星の力を集めるすべを私へ与えてくれた。だがそれは、世界を構成する全てから星の欠片を掻き集めても、異界の星詠みの力には到底及ばず。故に大剣を象り、母なる星へ突き立てた。どうなるか分からない。しかし他に為すすべがない人類の……賭けであった。
禍々しい闇が剣を介し封じられていく。何者も近寄らぬ絶海の孤島へ。その全てが呑み込まれていった末に訪れたのは、晴れ渡る空と透き通る海、心地良い風。
「ーーこうするしか、なかったぜ」
私にオージェは言った。君の優しさに上手く微笑い返せただろうか。
(世界はまだ、続いている)
治世の使命はまだーー続く。
その後巡った世界は災厄の収束に喜んでいた。幸いにも残されていた自然は多く、生命が飢えに苦しむことはないだろう。多少威力が減ったとはいえ、変わらず星術を使える者も多い。復興までそれほど時間は要さないだろうと思われた。
ーー今のところは。
(全ての生命の源が眠りについた。これより生み出されるものがあるとしたら、それは全て、星の加護なき命)
剥き出しのそれは……どれ程の脆さであるか?
(星が眠っても、世界には続きがあった。だが我々はいつまで続けられる? 日常を、生を。未来はあるのか?)
もはや問える存在はいない。始まってしまった。始めてしまったのだ。この広大な世界の何処にも、我等を見守ってくれる、導いてくれる彼女はいない。
創造主なき世界。
ーー星なき 世界。
→ギャルゲー世界線?




