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星聖エステレア皇国  作者:
終章
91/100

星の記憶

 ウラヌスと共にあの山の頂に立ってから、しばらくの時が流れた。


『星詠みさま……!!』


 とくに混乱の酷かったエレヅではローダー皇子が冠を戴き、城に監禁されていた星詠み達はついに解放された。


『こんなに遅くなって……ごめんなさい』

『いいえ、いいえ。信じておりました。貴女様が、私達の希望でした……!!』


 わたしをエレヅ城から逃してくれた彼女と再会を果たし。お互いが生きていたことを噛み締めあった。

 こうして全ての星詠みはエステレアへと帰国し、エステレアとエレヅ間には平和のための協定が結ばれた。


『エイコ、今ならまだ間に合うぞ。我が妃となる気はないか』


 戴冠式に参列したわたしに、皇帝となったローダーは相変わらずの調子で言った。

 これにはウラヌスが勝手に答えた。


『無理だ』

『……存外、奴は狭量だぞ』

『どの口が言う』

『まぁ、まだ時間はある。気が変われば、いつでも来るといい』


 ローダーの軽口に微笑うわたしの耳に届いたのは、後ろに控える仲間達の密やかな話し声。


『好きなら好きと、おっしゃればよろしいのに』

『な〜? ほんと、素直じゃなね〜の』

『お、おい! 皇帝陛下に不敬だぞ!?』


 う……嘘でしょ? 聞こえる……聞こえるからやめて。

 飛び出した真偽の定かじゃない話。でも変に意識してしまって、いたたまれない気持ちにうつむく。


『エイコ』


 そんなわたしを、陽だまりみたいに温かで柔らかな声が呼んだ。

 だけどウラヌスじゃない。まさか……そんな思いで見上げると、見たことのない穏やかな表情(かお)で、彼はわたしを見下ろしていて。


『ーー愛している』


 伸びてきた腕に、抱き込まれた。少しだけ慣れたとはいえ、まだまだ馴染みのない匂いに包まれて、ワッと胸が騒いだ。

 大切な、大切な宝物を扱うみたいな抱擁に熱を上げた顔。

 周りがとても騒がしかった気がするけれど……全部いっぱいいっぱいになった、わたしには分からなくて。


『ウラヌス殿とローダー陛下が個人的に開戦する前に……お暇しましょうか』


 ノーヴの揶揄うような、呆れたような声だけがかろうじて聞こえたのだった。

 そしてわたし達は、今日を迎えーー。



「おめでとうございます」

「おめでとうございます」



 たくさんの人々が祝福をくれる中を歩く。エステレアの伝統的な式は夜に行われ、星空の下で愛を誓うのだ。

 花嫁の後ろには、白い明かりを持った皇女と貴族の若い娘達が続き、その居場所を知らせる。

 そして花婿は一番大きな明かりを持ち、待っている。花嫁が道に迷うことのないようにと……。


(わたし、ここまで、来たんだ……)


 初めてこの世界に来た時は、ただ絶望していたわたしが、今は愛する人と結ばれようとしている。


(これは物語の終わりじゃない。わたし達は、アザーごと星を眠らせてしまった。これからどんな世界になるのか、誰にも分からない。本当の苦難は……これからかもしれない)

 

 わたし達の選択は、あまりに増え過ぎたアザーの浄化を星に託すこととなった。

 ウラヌスの剣はアザーごと星を封印し、世界の混乱は収まった。正確には星は眠っただけで生きている。やがては星の力がアザーの全てを照らし、目覚めの時を迎えるだろう。

 それがいつになるかは、分からない。


(でも、一緒に生きるって決めたから……)


 どんなに険しい人生だとしても、彼となら、きっと乗り越えていける。


(星よ、待っていて。あなたが少しでも早く目覚められる、世界にしてみせるから)


 いつも導いてくれた。良い未来を迎えられるように、警告をくれた。あなたの大切な世界が続くよう……頑張るから。

 わたしの行く道を示すような光に向かい、自分の足で進む。わたしの光。地上の光。



「……エイコ」

「ウラヌス……」



 星が人の姿を取り、地上に降りたんじゃないかって……そんな風に思うくらい、麗しい姿が迎えてくれる。

 二人で星に永遠を誓い、見つめ合う。視界いっぱい白で満たされて、恥ずかしく、でも堪らなく幸福だった。


「ーーようやくだ」


 大好きな手が頬を包む。この手に触れられると、わたしは満たされるの。

 万感の想いを込めたようにウラヌスは言葉を紡ぐ。それを夢見心地で聴いていた。

 グッと近くなる距離に、気恥ずかしくて目を伏せた。

 そんなわたしにウラヌスは額をくっつけてきて。


「これできみはおれのもの。さぁ……幸せになろう。我が花嫁」


 わたしのーー花婿。

 視線だけで見上げると、星の煌めきを宿した青がわたしの視界を奪ったのだった。




fin

ハッピーエンドはここまで

ありがとうございました♡

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