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星聖エステレア皇国  作者:
星聖エステレア皇国編
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第44話 緊張のお茶会II

「マーヴスネットでもエイコは青い光を出したぜ。しかもアザーの大群を一発で片付けちまった!」

「やはりエイコだったか。あの時、報告を受けてすぐにマーヴスネットへ飛び君達と出会った。……まぁ、探していた乙女はどこぞへと去っていった訳だが」

 

 自嘲ぎみなウラヌスの呟き。わたしへ直接向けられたわけじゃないのが余計に鋭く刺さった。

 いたたまれないので自ら話題を進める。


「星詠みって、星術は使えないんじゃないの?」

「その通りですわ。一般的な星詠みは、ですけれど。例外……つまり異界の星詠みさまだけは使えますのよ。どの属性にも当てはまらない、星そのものとでもいうべきお力を」

「わたし……使ったつもりはないんだけど」

「星詠みさまがどうやってお力を使うかは、オレ達にも分かんないしねぇ。でもウラヌスが言うには……エイコが使うの見たって」


 オージェは細部をぼかしてくれた。それに心の中で感謝していると、シゼルが細部を話し出す。


「貴方がいなくなった時の皇子は鬼気迫るものがありましたのよ。ようやく籠に戻した小鳥が呆気なく飛んで行ったのですもの。自由は大事だと思いますけれど、どうかもう勝手に出て行くのはおやめになってね。危ないですわ」

「シゼル、その心配ならもう必要ない。おれがよく見ていれば良いのさ。なぁエイコ」

「……うん。あの時は本当にごめんなさい」


 この件においてはもう返す言葉がない。

 何度目かの謝罪を述べると、なぜかこのタイミングでお腹が鳴ってしまう。パッとお腹を押さえたけれどウラヌスには聞こえちゃったようで、改めて食事を勧められたのでキッシュのような物を取った。

 ……キッシュじゃあない。なんかよく分かんないけど生地がもちもちしていて、中にナッツ類みたいにカリカリした歯応えのある物が入っていて美味しい。


「ところでエイコ嬢を追っていた者達は何者でしょうか。見たところ、あのマーヴスネット付近で遭遇した者達と同一のようでしたが」

 

 今度はノーヴが疑問を投げ掛けてくる。咀嚼中のわたしに代わって応えてくれたのはウラヌスだった。


「羽虫さ」


 もちもちの生地が喉に詰まりそうになる。


「羽虫……。ま、まぁエイコ嬢のお姿が見られて良かった。突然の別れでしたからね」

「これからどうするんだよ。囚われてる星詠みさまやアザー崇拝教の事はもう無理だろ?」

「アザー崇拝教だと……? 何の話だい。おれに教えておくれ」


 みんながウラヌスの逆鱗にソフトタッチする話題を繰り出してくる。


「あ、あの……パライオ大森林で売買の被害に遭っていた星詠みの子供達を助けたの。それで星詠みは他国から狙われてるって聞いたから助けたくて」

「……そうだったのか。ありがとうエイコ。民のことを気に掛けてくれたんだな」

「う、うん…」

「それで、アザー崇拝教とは?」

「人身売買の大元を叩きたいけど、どこの誰なのか分からないから……」

「怪しい集団を探ろうとしたんだな? まさか既に探っては、いないな」

「ないです……」


 そこはかとなく感じるウラヌスの圧にだんだん小声になっていく。比例して自然と顔もうつむいていった。

 少しの沈黙の後、頬に温かい手が添えられる。それから向けられたのは予想外に優しい声だった。


「もうおれの目の届かぬところで無茶はしないと誓ってくれ。ここにいつも君を案じている者がいることを、思い出して欲しい」

「ウラヌス……」

「今後の君のことなら一つ決まっている。おれや護衛と共に聖地へ向かおう。あそこは古来より星との繋がりが最も強い場所。君にとって、何か得るものがあるかもしれない」

「皇都の側だからすぐ着くよ。オレとシゼルも行くからさ、安心してね」

「う、うん!」

「……ではその日に向けて、おれはもう少し政務を片付けてくる。皆は引き続き歓談を楽しんでくれ」


 そう言って立ち上がるウラヌスに、彼が無理してこのための時間を割いてくれたんだと気付く。皇子様が異界の星詠みのためにエレヅ国内を旅していたんだから、それはそうだとようやく思い至った。しかもわたしがお城を抜け出してしまったから、多分余計にお仕事が停滞してしまったはず。

 なのに彼はそんな事、一言もわたしに言わないで……。こうしてわたしを気遣ってくれて。

 わたしは、自分の辛さばかりに目を向けていた。星詠みとしての務めが自分じゃない、誰かのための努力だっていうなら、ウラヌスの皇子としての務めだってそうだ。


「ーーウラヌス。ありがとう。疲れたら、甘えてね」


 その袖を引いて願う。彼が孤独にならないことを。わたしなんかが気遣わなくたって、彼の周りにはたくさんの人がいるかもしれないけど。

 ウラヌスは少しだけ目を見開いて、それからわたしの手に手を重ねると、木漏れ日みたいな眼差しで微笑いかけてくれた。


「言ったな?」


 ーーあれ? 言わない方が良かったかな。

 返ってきたのは、思っていたのと何か違う反応だった。

 機嫌良さそうにウラヌスは退室する。残されたわたしに、シゼルがいつものおっとりした口調で鋭く忠言してくれた。


「貴方、やる事なす事、皇子のお心を揺すっていますわね。だから執着されますのよ。お気をつけて。その気のない殿方に、支配欲を煽るような態度を取っては駄目よ?」


 何が琴線に触るって言うんだ。


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