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星聖エステレア皇国  作者:
大エレヅ帝国編
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第22話 エステレアからの迎え

 研究所を出て噴水広場に戻ると、相変わらずエステレア人が何人かいて、どの人がそうなのか、違うのかわたしには判らない。ただ一人、青髪の艶麗なお姉さまの姿を見つけて釘付けになる。

 するとそのお姉さまがこっちを見て、にこりと微笑むとわたし達の前へ歩いて来た。


「お待たせしたようね。お迎えに上がりましたわ」


 はんなりとした、同性のわたしでも惹かれる声と口調だった。


「いや、よく来てくれた。紹介しようエイコ。彼女はシゼル。おれ達を迎えに来てくれた待ち人だ」

「よろしくね。お話はうかがってますわ。エステレアまで貴方のこと、しっかりお守りするから任せてくださいな」


 すごく近くでわたしを見る綺麗なお姉さまに緊張して、すっかりあがってしまう。


「エイコです。よ、よろしくお願いします」

「もちろんよ。殿方二人に囲まれて不便な事もあったでしょう。これからは、何でも私に言ってよろしいのよ」

「ありがとうございます…」


 優しそうな人で良かった。

 シゼルは薙刀に見える武器を持っている。綺麗で強いなんて羨ましい。彼女を羨望の眼差しで見ていると、これからの事について話し合いが始まったので意識を移した。


「ではこのまま出発するが、その前にシゼルは何か調達する物はあるか?」

「ありませんわ。早く立ちましょう。用のない場所に長居する理由はなくってよ」

「相変わらず見た目と中身の乖離が…」

「あらオージェ、何かおっしゃって?」

「いいえ」


 ーーとうとう、お別れか。

 何とも言えない想いがわたしにのし掛かる。でも最初から分かっていた事だ。

 ウラヌスとオージェのおかげでここまで来られた。二人の献身には本当に感謝してもしきれない。ここから彼らは、ようやく本来の目的に集中出来るんだ。

 こっそりウラヌスとオージェを見つめて、二人を想うと、意外にもわたしの中の波立ちは収まっていく。


(……うん、心から、二人の旅の幸運を祈れる。探している人が見つかりますようにって、言える)


 その事実に安心した時、ウラヌスがついに出発を決めた。ーーわたしの手を取って。


(え? ここでお別れじゃ、ないの)


 その疑問が思わず口を突いて出る。


「ウラヌス? 外まで見送ってくれるの」

「……は?」

 

 返って来たのは、何故か意表を突かれたといわんばかりの表情だった。


「え……? ここでお別れじゃ……」


 言葉を重ねると唖然とされる。それから少しして、急に合点がいった様子で説明してくれた。


「いや、エイコ。おれ達も一緒にエステレアに帰るんだ。お別れじゃない、置いて行かないでくれ」

「え! だ、だって……」

「ん?」

「……探してる人が、いるって……」


 消え入りそうになった声。また少しの間があったから、聞こえなかったのかもと思った。でもウラヌスはちゃんと拾ってくれたようで、何かを言おうと形の良い唇が開く。

 交差した視線。青空が真っ直ぐわたしを見ていた。


「ーー多分、もう……見つかった」


 そのたった一言が、この心臓を氷に晒したような心地に落とす。


「そ……そうなんだ」


 どうして、こんな気持ちになるの。たった今わたしは、二人の幸運を祈れると確信したばかりなのに。

 苦しい。何かを口走って、ぶつけてしまいたい。

 これじゃわたし、まるでその誰かを……妬んでるみたいだ。


「そーいうこと。だからさ、一緒に船旅だよ~。嬉しいね、エイコ」

「気持ちの強要は良くありませんわ」

「シゼル、どういう意味?」


 オージェの明るい声に少し気持ちが浮上する。そうだ、まだ一緒にいられる。

 

(ーーあれ、わたし、悲観してばかりだった?)


 唐突に気付いて、わたしなりの衝撃が走る。いつからだったんだろう。ウラヌスとオージェの事になると、後ろ向きで悩んでばかりだったかもしれない。ああ……そうだった気がする。

 違う。もっとーー幸せに目を向けたい。

 そう思い直してウラヌスに視線を戻すと、彼はその瞳に優しい温もりを灯して。


「エステレアまで一緒だ。一緒に、行こう」


 優しい誘いに、わたしはしっかり頷いた。そして思う。

 この恩を何か返せたらって。

 この時間が限りあるからっていじけるんじゃなくて、明るい未来を想像したい。

 そのためにはまず、この不安定な足場をしっかりさせなきゃいけない。皇子様に逢って、この世界に呼ばれた理由を知って、自立して。

 そうしたら……ウラヌスとオージェに恩返しがしたい。お荷物のわたしを見放さずに、ずっと傍にいてくれた人達。神様みたいな二人。


(わたしに何が出来るかな)


 まだ何も、分からないけれど。きっと何か出来る事があるはず。

 それから二人と本当の話がしたい。記憶喪失のわたしじゃなくて、異世界から来たわたしで、ウラヌス達と話したい。向き合いたい。


(それが出来たら、ウラヌスとオージェの事も教えてもらいたいな。どんな所で育って、どう生きて、ううん……もっと些細な事でも良いの。だってわたし、二人の好きな物一つ知らないもの。でもまずは自己紹介をやり直したいな。わたしの名前はーー)

 

 野々咲エイコです、って。

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