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第97死 丘梨栄枯は架空の人物

 黒い砂漠の死を超えて日常というものはこうも待たずに、繋がりすべりはじめていく。昼に起きてトートバッグを持ち地下鉄の電車に揺られていた記憶はおぼろげだ──気づけば稽古帰りの栄子がそこにいて、もう1人スタイルの良いお姉さんが夕暮れのカフェテラスに腰掛ける、ウッドデッキの上白いパラソル華の下の異質な空気感でコーヒーを飲む。動きやすいカジュアルなシャツを着ているが、彼女はまだ少しこの世界に馴染めてはいないようだ。


「エイコ、本当にすごいことだこれは。まさか主役が増えるとは五味監督も遅れてサプライズで来たお前を見た瞬間怒りとイライラはすんとどこへやらだ脚本を書き直すなんて言い出したものだから、ふふ、アレには驚いたぞ、そして通してみたこれはどうだ? 私史上最高傑作間違いなしだ! どうしたんだエイコ本当にべらぼぅに見違えたぞ!」


「ふふ、私がですか?」


「お前以外にあるか、なんといっても今のエイコはひじょうにキレがある余裕がある煌めきがある。AIではないだろうな?」


「ふふ、AIなら遅刻はしません、それにそれは見えすぎじゃないでしょうかないものまでを」


「いやこの私が言うんだ間違いない。遅刻などかまうものか、今まで全ての稽古が無意味だったのだからなはは! やはりこの日本で私と張り合えるのはお前だけだ」


「先輩と張り合うつもりは面倒臭そうなのでありませんが、主役の座は譲れなくなってしまいましたね」


「ははハハ、安心しろ主役は2人だエイコ!! 私たちジム・スタイルズともうひとりのポッと出こねこねじゃないちゃんだ」


「ふふ、なんですかそれは。可愛いのじゃないですか」


「可愛いだけだろう、煌めきがない、スタイルがない、それに捨てられない」


「煌めきなんて捨てたときの一瞬でいいんじゃないですか、ええ。まぶしすぎても、私はそこまで前に出るつもりはないですよ」


「フッ。ま、そこらの釘を私たちの間に打ったようなお飾りな配役バランスだろうな。さすが五味監督だ。それに前に出なくても……明らかだろう?」


「先輩これは陰口なのでは? ええ、ひじょうに?」


 栄子の向かい席の先輩はコーヒーカップに口をつけて、左に流した眉にかかる栗色の前髪をすこし整えた。そして前傾し、ひそひそとおおきく。


「……ひじょうにそうなるな。……べらぼぅにあのお嬢さんに配慮しろエイコ、本番では無視でな」


「ふふ、それはいけませんよ。私は監督に恨みを買いたくありませんので」


「やはりずいぶんと余裕があるな」


「これが普通なのでは、先輩とちがい私が浅いのでしょうが、ええ」


「ははそうだな。普通に大事な舞台役者仲間だ」


「……そういえば事務職には戻らないんだなエイコ、お金はどうしてる次の職のアテは」


「はい? 私は舞台役者ですよ?」


「まだ見せるかその見えない余裕を! おしえろ!」


「ふふ、あはは、くすぐったいので離れてください、ええ、ひじょ────」


 大の大人どうしが夕暮れのカフェテラス席ではしゃいでいる。アレから新しい太陽がはじまりもう沈みゆく、死のダンジョンの吐い信の後始末とつづきよりも栄子がなんとなく選択していたのは栄子としての後始末でありここでしか見られない光景の、この道だった。




▼▼▼

▽▽▽




 アレから音沙汰がないとはこのことであり、丘梨栄枯、栄枯教本部は死鳥舎様に対しての不誠実な吐い信者の行動に荒れに荒れている……というわけでもなく彼女の選んだ行動にたいして熱はまだ冷めてはいないようだ──




ぼこ:栄枯、しんだってよ


ぼこ:栄枯、しんだってよ


ぼこ:ガチでしんだ?


ぼこ:栄枯だからね


ぼこ:焦らすねぇ


ぼこ:おばみんは嘘つき


ぼこ:おばかみんだからね


ぼこ:じまんしぃ


おばみん:美少女「栄枯はぜってぇ生きてるわかったね?」(焼そば)


ぼこ:これは、つまらん


ぼこ:ドッツのお馬鹿吐い信者


ぼこ:オーバーとんちんかん


おばみん:↑さすがに言いすぎだろ。


丘梨栄枯さん私天下のオーバー未夏侯惇様がまさかの嘘吐きあつかいの大ピンチです。はやく連絡よこしやがれください。マジで舐めてますとこちらからおそいにいきますよ、ええ、ひじょうに。


ぼこ:通報した


ぼこ:何も言わなければぼこられなかったのに!


ぼこ:丘梨栄枯は架空の人物


ぼこ:栄枯なら電子の海に帰ったよ


ぼこ:リメンバーエイコ


ぼこ:フェードアウト


ぼこ:あのノッポが見つからないわけがない


ぼこ:ノッポを探せ!


ぼこ:ノッポは栄枯!


パラソルガール:馬鹿ねやめなさいよみっともやい。鳴かぬなら鳴くまで待ちなさいぱっぱらぱー、いい女は待ちがいがあるでしょうに。男として間違いよ。ま、場が違うのよあんたたちぱっぱら族とは。ふふふふふふ、丘梨栄枯このパラソルガールにこれ以上の放置プレイをしても無駄よ、私には時代の先を読むチカラがあるのは知っているでしょう。あなたが選択しているのは小さな小さな過程にすぎないのよ解っていて? ライバル同士いずれめぐりあうのなら早い方がいいじゃない? ふふふふふふさぁ! 今日のラッキーパラソルは白い傘よ、ぱっぱらぱーたち!! いいわね!!


ぼこ:よくない


ぼこ:いいわけない


ぼこ:良いわけがない


ぼこ:こいつを出禁にする方法


ぼこ:栄枯、来なくていいからコイツをなんとかしろ!


ぼこ:みっともやい。


ぼこ:ラッキーパラソル(38)


ぼこ:誰もしらない誰も欲してないヤツ


ぼこ:ぱっぱらぱーを気にいるな


ぼこ:もう終わりだよこの本部


ぼこ:丘梨栄枯さんをわすれないで


ぼこ:丘梨栄枯(31)、明日はちゃんと学校に来い!

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