第78死 脱出ラストバトル!
濃密な死のダンジョンで共に過ごしたパーティーメンバーとこれが最後のお別れ、目を合わせタイミングを合わせて欠片程に溶けたのど飴を飲む。
丘梨栄枯は微笑む、さいごは最高の笑顔を咲かせて飾った黒い砂漠の上の3人は────
「飲み込んだよな栄枯……」
「ええ、ひじょうに……ごっくんと」
《梅マッチャ味!》
「ふふふふ、小麦粉味」
「ははは、レモン」
《アハハっ》
またも笑顔を咲かせ、向き直った黒砂漠に映えるあの白いモンスターの方向。結果的にこちらをその脚とも顔とも言えないモノで睨み続けいつまで経っても仕掛けて来なかった相手であった。
各々は再度武器を構え直し警戒。
「ということのようです、この黒い砂漠のせいでしょうか?」
「ま、古参ナイト的にんな気はしてたがな」
《逃げられないラストバトル!》
「ふふ、ラストバトルかは知りませんがまだ仕掛けては来ません、水でも飲みましょう」
ぼこ:うわっ、丘梨栄枯!
ぼこ:↑ちんきす
ぼこ:つまんね
ぼこ:↑つまんなくはねぇよ
ぼこ:まず面白いとかどうでもええやろ……
ぼこ:逃げられない模様
ぼこ:なんでだ
ぼこ:バグってんな
ぼこ:まぁさっきからずっとバグってたからわからんでもない
ぼこ:ファック! チンキス! 死のダンジョン!
ぼこ:これはあんまりだ
ぼこ:強制ボス戦のもよう
ぼこ:さいあくッ!
ぼこ:そりゃねぇよ
喉を潤し黒い砂漠を歩き続けたが一向に出口は見つからず。延々と同じような黒砂漠がつづくだけであった。
「既に試して予想はしていましたが」
《バグってる!》
「やっぱりバグだな栄枯」
「ええ、バグと思います。もう一つ考えられるのはあの雪原の景色のように偽りから偽りに塗り替えられたという事でしょうか」
「なるほどな! 知らないけど」
《わたすも知らないけどわかったよ栄枯!》
「ええ、ふふ、まぁそんなことはどうでもいい事です。シンプルに一つ──」
栄枯と仲間たちが見つめた方向、白竜の存在が遠くにまだ確認することが出来る。
黒に映える白の一部が宙を泳ぎ。
「栄枯、なんかこっち来てねぇか……」
《12なてるバインきてる!》
「命令です下がっててください、まずは一番強い私がアレを見極めます!」
仲間をその意志の強い目で制し、赤く焼けた右手にブラック包丁を握りしめて吐い信者は前へと躍り出た。
風音もなく向かってくる。
黒い景色を泳ぎ突っ込んで来た白龍の脚。
一流の探索者ならば殺気というものを感じる事が出来る。攻撃の気配や静寂との差異こちらへと暗く歪み伸び迫る意志を──星色の瞳は読み取り。
宙に浮かぶ白い牙のような脚から鋭い針が伸び突き刺さる。読み切っていた栄枯は身体を半身にし一刺を逸らし合わせて刃を振るい、両断。
更に繊維を絡めた針は脚から幾多も放物線や角を作るように折れ曲がり、黒と黄色の長身女性へと収束していく。
黒い砂漠に激しく降る白い雨を包丁一本で耐え凌いでいく。ただの人体ただのクールな女性ではあり得ない動きと読みで回避し受け止め刻み、ぶつかり合い火花で彩り激しくかつ華麗に踊り続ける。
ぼこ:もはやナニガおこってるのかわからん
ぼこ:完全に雑魚モブ視点
ぼこ:化け物VSバケモノ
ぼこ:栄枯育ちすぎ
ぼこ:貧乳ノッポだけどな
ぼこ:↑はいチンキス
ぼこ:なんやこれなんやこれ……
ぼこ:人間やめたお姉さん
仲間たちもそんな背姿を黙って見ているわけではなかった。【SR】ワナゲポールボム、宙に浮かび止まる白い脚に色とりどりの輪を投じた。相手をしている栄枯に対して十時射撃で爆破援護していく。
《ワナゲ効いてない!》
「これはレベチだぜぇ、下手すりゃあ爆撃は栄枯の邪魔になる他の手を考えるぞ金ポデ!」
《うん、マークトゥー剥いてそなえる!》
これまで散々貯めてきていたカードパックも連戦と長引いた巨城との戦いで残り少ない。各々の秘蔵のカードパックを剥きMMOで整頓。使えるカードを探し出して金ポデとナイトは協力しパーティーで1番強いリーダーである栄枯を援護する手段を考えている。
次なる手を考えている間にも──
執拗に狙う白い雨を凄まじい動きで切り抜けていたオンナに浮遊していただけの巨大な脚が突如──ミサイルのように迫り襲った。鋭いイチゲキが栄枯を貫く寸前を反応したブラックなナイフは受け止め火花を上げて圧されていく。
黒い砂漠を滑り、白い巨大質量が長身を一瞬でどこまでも運び──
──MMO──
栄枯:【SR】身体能力UP1.1倍60秒
ナイト:【SR】ワナゲポールボム
金ポデ:【SR】ワナゲポールボム
金ポデ:【LR】パーティー身体能力UP1.4倍30秒
ナイト:【SR】デバフスナイプ
新たなカードを手に入れた仲間の援護を受け踏ん張りを効かせた丘梨栄枯は白い質量を押し返す。
フルパワーの栄枯となりチカラ比べは均衡が破られた。ジリジリと激しく火花を咲かせて──咲いていくのはそれだけではないチカラ比べをやめたのか、白い針が伸び動けない栄枯の周囲を取り囲んでいる。
予想をしていたまさかの反則行為に……汗がだらりとその美しいカタチの顎を滑りおちていく──
『シルバーウルフファング!』
突然の横槍。銀の狼のオーラが横腹を噛み千切り、3割程を抉り取られた白龍の脚は、更にチャンスをモノにした栄枯の斬撃に刻まれた。
──MMO──
銀狼:【LR】救援ののど飴
ホップ:【LR】スーパードローン
栄枯:【UR】トリプル斬り
「チンキス!」
凄まじい包丁捌きに7割程が一瞬にして電子の藻屑と消え──動けるようになった食べカスの白は攻撃をやめ栄枯を放置し後退を始めた。
一連を制した栄枯の見つめる先は謎の渋い声のした方向。
黒髪のダンディな面相……上下無地の緑色のパジャマ姿の長身。耀く白銀の剣を右手に持ち、死のダンジョンにランダムに用意された茶色のスニーカーを履いている。……が黒い砂漠に立ちこのひじょうなバトル最中でも通る渋く大きな声で伝えた。
「カレ! じゃなく丘梨栄枯くん、まだ死んで無いな!!」
「ええべらぼぅに助かりました、これは……いったい?」
「死のダンジョンの探索者、銀狼だ! これは度を越している助太刀に来た!」
ぼこ:うおおおあのぎんろうが来たぞ!
ぼこ:ぎ、ギンロウだってぇ!?
ぼこ:しらんおっさん
ぼこ:↑あの銀狼を知らないとかヤベェな
ぼこ:どのギンローだよ
ぼこ:銀狼(緑パジャマ一式)
ぼこ:寝てたんやろなぁ
ぼこ:寝起きなら行動力がすごい件
ぼこ:ガチでしらん
ぼこ:ん?
ぼこ:てかなんかさけんでた?
ぼこ:大金持ちかな?
ぼこ:これはイケおじ
ぼこ:王子様きたこれ
ぼこ:(31)を助ける(51)
ぼこ:その年齢あそびをやめろと
ぼこ:パジャマの王様
ぼこ:ナイスダンディ!
ぼこ:おまえらバラエティーに富みすぎな件
ぼこ:ガチで助かた
ぼこ:うおおおおしここ
ぼこ:知らないけど強い助かった!
「ひゅー、助っ人なんてマジかよっまさか伝説のLR救援ののど飴か!」
「そうだ、痛いが全く痛くない出費だ! 裏から彼と共に探していたが全力で協力する生き残ってくれ!」
「ええ、ひじょうに助かります……彼?」
宙でUターンをし繊維をうねうねと蠢かせ編み込み修復しながら再度執拗に栄枯に対してアタックを仕掛けてきた──食べ残しは突如の同色のヒカリに呑み込まれ欠片も残さず食べ尽くされた。
カラフルなスーパードローンは丘梨栄枯パーティーの近く宙を舞い止まり。太く長い閃光を発した方向からみずいろの何かは駆けつけて来ていた。
「栄枯さーーぁんッ!!!!」
「あなたは……無事でしたか!?」
「はぁはぁ……ハッはあぁぁ……ッすみません遅れましたッスナイパーがしつこくて!」
ホットプレートを片手背に。栄枯の元へと蘇り戻ってきたのは──息を荒げてひどく汗をかき彼女の顔を見つめるダークガーネットの瞳。救援に向かったはずが向こうからやって来た……。ブラック包丁を汗ばむ片手に離さず、目まぐるしく変わる状況に驚きに次ぐ驚き、バトルの高揚感とを伴い驚き疲れた丘梨栄枯の頭は意外にクールに稼働していた。
ぼこ:ホトプレぇ生きとったんかい!
ぼこ:次から次へとしらんやつが来てる!
ぼこ:やっぱりね
ぼこ:お前のせいで恥かいたんやぞ
ぼこ:こいつまだスナイパー卒業してないんか
ぼこ:狼青年
ぼこ:スナイパーひっぱるのみっともないからやめろ
ぼこ:はいはい妄想スナイパー乙
ぼこ:スナイパーとの激闘(妄想)
ぼこ:スナイパー狙われて
ぼこ:↑チンキス!
ぼこ:お前のせいで栄枯も幻覚のスナイパーと戦ってた模様
ぼこ:スナイパー(イマジナリーフレンド)
ぼこ:スナイパーの件ゆるさないよ
ぼこ:死鳥舎の敵
ぼこ:死鳥舎ぜんいんスナイパーになったもよう
ぼこ:あ生きてた殺さなきゃ(スナイプ)
ぼこ:しつこくてしぶといのはオマエ
ぼこ:てかなんで生きてんねん!
ぼこ:遅すぎぃもうみんな帰るとこやったぞ
ぼこ:ガチで帰ろうとしてた模様(31)
ぼこ:でたなぁ、不可能は可能マン
「え、いやえ? どういう……スナイパーは倒して」
「くだらないやり取りは後にしてください、スナイパーに撃たれますよ」
「えっと、うたれ……ハイ!!」