第70死 不可能派と可能派
何が起こっていたのかは栄枯自身も分からなかった。だが過ぎていく時の中で信じられないような状況の黒波が迫ってきている。
黒波は加速し広がり──その広大を呑み込んでいった。
瞼を閉じることもなく、その目に映っているものは。
塗り替えられた黒い砂漠。
熱砂の空間は黒い世界へと変貌を遂げていた。
「──ふぅふぅ……どうやら……死にはしなかったがなんだこのバグは? ホトプレは……」
《ホップは……うそ!?》
「これは一体」
呆然とする事態、残党と交戦中であった栄枯たちの前には黒く染まったモンスターたちがいる、角を発光させ目を発光させ黒いシルエットの輪郭を発光させている。モンスターまでもが──
「シールドバッシューう!」
リーダーを狙って突っ込んで来たブラックなサンドランナーに構え射出された盾が横腹に突き刺さり黒鹿を弾き飛ばした。
黒砂に落ちた盾は二本のワイヤーを巻き取りながらナイトの右腕へと戻り。
再度仕掛けようとしてきた黒鹿は栄枯により既にその首を落とされ葬られた。
「丘梨栄枯、突っ立ってるぞ!」
「すみませんナイト……ええ、まずは目の前の敵を殲滅しましょう」
《わかったよ栄枯! 栄枯大丈夫チートなホップナラ!》
「ひゅー、俺は寵愛チートが殺してもしぬとは思わないぜ栄枯! 不可能は可能だからな!」
「ええ……ふふ、では可能だった場合を考えて全力でヤリましょう!」
《あ、でも栄枯スナイパーは?》
「撃つ気なら既に撃たれていると思いますが弾切れなのでしょうか……全くスナイパーかどうかすらもわかりません、どの道ココでは隠れられるものじゃないので敵を倒しながら動き続けてください! 撃たれたら私にどの方向か報告を!」
《わかった栄枯!》
「栄枯、それは無茶で苦茶だぞぉひゅー!?」
「ええ、ならとりあえず斉射!!」
リーダーの栄枯に指定されたカード金平糖手榴弾は切られ一斉に投げ捨てられた。黒砂漠をカラフルに彩り黒いモンスターの残党を蹴散らしていく、その煙幕と砂塵に紛れながら3人おのおの武器を手に取り、突貫。
理解し難い状況でも死のダンジョンの敵は襲いかかって来る。この残党を殲滅すれば何かが好転し分かるかもしれないと吐い信者丘梨栄枯は考えた。ぼこぼこチューブにデカデカと表示された死鳥舎の総意は謎のスナイパーから逃げるであったが、不可能ではなく可能だった場合。可能性が大いにあるのならば彼女にはリーダーとして余力を使いはぐれた仲間を探し続ける使命がある。幸いにもこの場にこの状況から逃げたいと言った仲間など1人もいないのだから。
黒い砂場の上で吐い信者は躍動する。ブラック包丁を握った日々幻闘でシミュレーションし鍛えた彼女の動きに黒いサンドランナーはついて来れない、彼女の星色の瞳にはすべて止まって見えるかのように流れるように斬り進みその数を数えていく。
「とおーー+7、ただの色違いイチゲキです大した敵じゃありません、各々ひとり100殺!! ええ、ひじょうに!!」
《わかったよ栄枯! はち、きゅー、ツェーンン!!》
「古参ナイトは10までしか数えられないぜぇひゅーー! 喰らえッ」
ここは死のダンジョン、ならば敵を打ち倒しゼッタイに失えない残機0を保ち生き残るしかない。
ぼこ:栄枯、たたかうってよ
ぼこ:誰だ逃げろなんて言ったやつ
ぼこ:チート栄枯がいるのになんで逃げなきゃいけないのか
ぼこ:このチートウーマンに逃げろって言ったやつおらんよな?
ぼこ:おまえらまた足引っ張ったんか?
ぼこ:おまえらもはやナイト以下のもよう
ぼこ:スナイパーいるのにおっぱじめた栄枯がおかしいんや!
ぼこ:俺はんなこと言ってないから
ぼこ:いもしないスナイパーにびびった模様
ぼこ:そして全然撃ってこないもよう!
ぼこ:スナイパー狙われてる
ぼこ:つまりホトプレのせいだな
ぼこ:責任転嫁ばっかやのー
ぼこ:秘技、死人にすら責任転嫁!
ぼこ:スナイパーはいるから……
ぼこ:↑へぇ、どこに?
ぼこ:おまえら常にスナイパーに狙われてて大変だな!
ぼこ:スナイパーなら俺の横で寝かしつけたよ
ぼこ:スナイパー狙われてるから!
ぼこ:うるせぇ! ホップ氏の遺言だから居るにちがいねぇー!
ぼこ:おっ、スナイパー狙われてる派と狙われてない派が争ってるな
ぼこ:死人の言葉は鵜呑みにしないといけない風潮
ぼこ:そもそも死人じゃない件
ぼこ:不可能派と可能派
ぼこ:ホトプレまだ死んでるってよ