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第201死 外は災厄

 丘梨栄枯の昇り続ける迷宮と化したスカイハイポールタワー。その外では狂気を降らし舞い飛ぶ一体の具現化した【死】との堺市の広大なエリアを巻き込む戦いが続いていた。



 桜色の翼は遠く上空の間合いを保ちその火花激しく散る戦場を羽ばたきながら見つめている。


 駄々を捏ねる若者を腕に抱いて……。



「だからァァ私よりこの街まもんのー! どうみても大正義おばみんの出番! レイドボスな悪のバケモノ乱入じゃぁん!」


「俺とお前が今更参戦したところで戦力的に意味はない、観察したヤツらのパーティーの実力は今の俺では遠く敵わない、それに嘘をつくな」


「あぁもうゥゥゥお祭りなのよお祭り! 融通の利かない陰気の後ろメンタルはのいたのいた!」


 お節介な拘束をじたばた暴れ振り払った。


 降下していく美少女は用意していた浮遊するミトンに捕まり、強風に揺られながら戦闘エリアへとすっ飛んで行った。



 水の加護を得て不自由ない空中戦を繰り広げ盗賊と斬り結ぶ太陽王、接近戦の能力に長けており長巻は盗賊のナイフを弾き飛ばし、


「オーバー赤夏・ジャストレッグミトン!」


 不意打ち、天を切り裂く赤雷の踵がジャストタイミングで弾き飛んできた黒い怪鳥を撃った。


「痛あっつーーーーーーっ!!!」


 右の踵に疾るビリビリと粉砕されたような痛みに顔を顰める。


「我の間合いの邪魔をするな」


「我のマアイはとっくの昔から私の間合いなのさね! ぜひぜひ若者に譲るべきべき……っつつ痛た、あちゃこれスナック菓子ぃ????」


「その程度の電量では邪魔だ」


 王はいつの間にやら美少女の左足を掴み邪魔なモノを地上へと投げ捨てた。


「ソノテイドォォ? なにをおお、にゃえ!? どわぁーーっ」


 放たれた矢のような勢いで急降下していくソレを──回転しながらキャッチ、巻き込まれながらも翼を広げ低空の街並みを滑空していく。


「おっまたローリングお嬢様キャッチィィィィ、ツンデレバードなっいすぅー」


「説明していなかったが俺のスキルは風向きと未来が読める」


「ええ!? そうなの!?」


「冗談だ。お前はこういうタイプの雑言が好きなんだろ? フツウでは通じやしないと判断した」


「お、おう……なんか、なんかね申し訳にゃい……たははは!!! 痛っつつつ!? ────────」


 元気な横槍は通じず砕けた右脚の代償を引きずりながら、満面の苦笑いで振り向き迎えた孝太の待つ地上へと舞い降りた。







 悍ましい怪鳥が飛んでいった方を追いかけた黒いバイクは道すがら故障してしまった。


 追いつく事の敵わない二人組は荒廃した街の真ん中で謎のターゲットの熱源を探り。


 特殊ワイドスコープビジョンから覗いた…………凝らした月の瞳が素速いヤツをついに見つけた。


「みえた」


「てかアカリさんそれプロトタイプで、勝手に使われるのは……」


「大丈夫こんなの月の彼方より近いし! 蒼の民より目は良いんだから! 黙ってエネルギーを送って」


 真剣に見定めて凝らした……スコープビジョンの解析仮定トリガーシミュレートする命中力は……


「……ッ命中力100!」


 閃光が上空をナナメに伸びとどき貫いた。


 巨大なドーナツ機器に接続されたプラグコードは大型のDHPスナイパーライフルと連結。


 走り練り上げた膨大な電量を得て発射された蒼月色の美しい閃光は、明後日の方向を向いていた黒い怪鳥の片翼を消し飛ばした。



 ライフルのトリガーを引いた手に滲ませ……じんわりと集中し出た汗を顎先伝わせながら遠くを覗いている彼女の表情を狩野千晶は確認する。



「こっち来てる……」


「ヤッ──ええ!?」


「次早く!」


「いや、さっきのが全力なんでトテモ間に合わないですって! ──くっそ来い! アカリさんそんな使えないの捨ててッ俺の後ろに」


 バイクから分離させた黒いホットプレートの操縦桿を慌てて構えて。白煙吹き上げ役に立たないDHPスナイパーライフルを捨てさせたアカリをべたつくカーキの背に隠れさせた。


 目を細めた真剣なダークガーネットの瞳に見据えたドス黒いトリが大きくなっているのがわかる。


 イカれた黄色い眼は黒を滅茶苦茶に地上の街へと拡散させながら────


 不意に地に突き刺さった赤槍と、質の良い七重の水の結界。その三角錐のエリアは黒い弾丸を吸い取り濁りながら浄化し、加速するバランスで対抗する。


「そんでお兄さんの後ろだイケメン! 今日は命の軽いあほが多いな! どうなってんだこの街はよォはははは【クリアランスニンフ】!」


 更に激しさを増した黒炎の街のナカで、電量を割き召喚された水の精クリアランスニンフが水の結界に聖水を継ぎ足し補強していく。


 黒くスポーティーなノースリーブと乱れる金髪の背と赤い槍。それに浮かぶ神秘的な精霊と辺り覆われた美しい水の膜。


 何が起きているのか全力を覚悟し構えたホットプレートの盾を解き、その目の前の存在にただ驚いた。


「な、なんだぁ!?」


「……水の精霊?」


 ひょっこりとカーキの背から覗き込んだオカッパも……見えている訳の分からない水飛沫の光景。



「おいソレなんだ?」


 突然後ろ目にちらりと振り向いたその男に青年は問われ。


「え!? ほ、ホットプレートっす」


「ななんだそれ、電磁兵器か?」


「いや家庭用の……肉を焼く」


「こんなデカいドーナツ機器で肉を焼くのかよ……マンモスでも狩ってんのか下界人……っとあばよ珍妙スナイパー! 死にたくなきゃカップルは薬局で目薬でもさして大人しくしとけ!」



 しつこく黒く燃え盛る雨が止んだ、チャーミングに2人に手を振る水の精とともに……白く蒸発していく水のカサが無くなり────。



 去った一難、未だばくばくと心臓の弾む余韻を残して。



「知り合い?」


「金髪男の知り合いは……靴泥棒しかいない……」


「はぁなにそれ……訳わかんない、こんな災厄で死にたくないしコッチいこっ!」


「……っすね!」


 故障し役に立たないホットプレートバイクを深層スペースへと仕舞い、黒く染め上げられ荒れ果てた街から2人は並び駆け出し────抜け出していった。

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