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第194死 【チャンネルジャングルネスト】

 堺スカイハイポールタワーその外部では探索者達が今もなお戦いつづけている。予期せぬ来客も正体不明のパーティーのニオイに引き寄せられて交戦、敵と敵同士がぶつかっているというそれこそ嘘か真か予測不能の報告も事務局長の元へと入っていた。


 さらに、すらりと背の高い吐い信者を見かけたという報告も……。


 何をすべきか何を目指すか、トップのかんがえる焦燥に自然と目に入った黒い塔を──6の瞳は捉えていた。



 この堺市を巻き込んだ事態は徐々に変わりつつある、招かれた客招かれざる客この電世で死にゆく生命。うずまく企みの全貌も目の前の敵に勝利しないことには何も見えては来ない。




 黒い塔の内部、招かれた客、丘梨栄枯は────、




「ふしぎですやはりビーム……いえ先程からカードが使えない…………なるほどっ! そういう事でしたか! ふふ、恐竜さん」


「そこっ!」


 投げた回転するナイフは幾度も宙でひとりでに弾かれながら、撹乱するように予め狙うと決めていた本名を狙い撃ち。


 突き刺さった果物ナイフは──


 【UR】パーティーシルド、瞬時に迷いもなく──庇いに来た別のデスラプトルが肉壁となり丘梨が狙ったはずの対象を守った。


「わざわざ庇う、妬けるような統率! これはパーティーですか! ふっふ、恐竜さん」


 本命は外したがチンキスブレードアレンジで確実にまた一体を討つ事に成功。


 不可解にも使用できないバトルカードとそれに関連する丘梨のビーム。だが瞬時に其処に移り渡った自分のイロを丘梨栄枯はそのクールな頭脳と確かな観察眼で理解した。


 彼女が微笑むのは仕掛けが分かったからだけではない。あまりにも小恐竜たちとの拮抗していた戦いが馬鹿馬鹿しいものであるからである。


 だがカードがなくても探索者には個性豊かなスキルがある。頼りになる+値の高いブラックウェポンを握り、


 ダイナソーパーティーとの熱戦も全てこの刃で──死電子を相棒に纏わせスピードを上げた丘梨栄枯は素速く賢い獲物に噛み付いていった。







「あれだけの統率を見せていた割にやけにあっさりでしたね、安い命を顧みないそんな感じが」


 草原を裂き加速する死電子を纏ったブラックな包丁は動きを読んだ横腹を鮮やかに抜けていった──モンスターは光へと還っていく。


 一丁あがりに刃を地に振り払いそして、残す最後の1匹。


 消炭色の鱗艶。色や体格は他と変わらなかったが、その隙を突く動きや不自然にも味方に命を賭して庇われるのは明らかにそのパーティーのリーダーであるからだ。それにしても仲間の命が安すぎると丘梨栄枯は思っていたが……。


「さて、あなたがこの恐竜さんパーティーのリーダーということですね、ふふ、どうします次の階への案内はあなたを倒すかあなたがアンナ」


 その雑言、勝利宣言にも似た女の言葉を聞いて対峙する恐竜はワラう──鉤爪が器用に翻し発動したカード。バチバチと雷電は連なる。


 点と点でやがて囲む草原のエリアに雷電のリングロープを作るかのように。


 死した場にはデスラプトルコブンのカードが突き刺さっていた。連なる雷電はカードとカードを伝っていく。


 そしてやがて────。


 そこは土色、近代的ジャングルネスト。


 囲む鬱蒼の緑の果て天をも囲む、そして配置されているその場にはチグハグだがどこかお洒落な機器類家具類。くたびれた色をした年代物のブラウン管テレビに、土色にひかれた色鮮やかなメキシカンラグのカーペット、黒いチェアーにゲームセンターのゲーム筐体数点、冷蔵庫の数々まで、見るものによっては宝の山である。



 デスラプトルリーダーがあたためながら見計らい発動したカードは【チャンネルジャングルネスト】。


 死んでいきそのもう一つの役目を果たしたデスラプトルコブンのカードで電量とスペースを補助したスペース系スキルのカード系。カードにする事によりそのチカラは安定する。


 手強い獲物である栄枯との戦闘中にデスラプトルリーダーは頭のスペースでルールをじっくりと狡猾にも練り上げながら掃除屋のコートカードのようなカード化に成功。


 そう丘梨栄枯は優勢にノリに乗り敵を滅していったはずが、いつの間にかまんまとその囲むエリア内へと誘われてしまっていたのだ。


 不覚にもハメられてしまった、そして誘われてしまった未知の領域に栄枯は……。


「ここはぁーー……あぁ! なるほど、あなたの劇場でしょうか? 恐竜さん、ふふふふふっ」


 赤いソファーに飛び跳ねニタニタとワラう小恐竜に対して周囲を見渡しながら釣られて笑ってみたのは丘梨栄枯。


 いわば此処はデスラプトルリーダーの深層世界の一部。正真正銘の敵のアジトに迷い込んでしまったならば、どんなルールが訪れてもそれに従わなければならない。しかしルールは誰にでも平等であるべきだ。これから魅せられるであろう多少の理不尽に対してどのような抗いを見せるのか試されるのは結局チカラとチカラ、ルールに乗っ取ったアレンジでこの状況を乗り切るしかない。


 死のダンジョンの吐い信者、丘梨栄枯。ここに来てから初めて味わわされたスペース系スキルに対抗する術はその微笑みのナカに含まれているのだろうか。


 仲間に指摘され手助けられ細かなやり直しの効くリハーサルではないこの小恐竜のリーダーワラう謎だらけの舞台は。


 独りブラックな包丁を再度握りしめながら────。

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