表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/244

第186死 はじまり

 狼が吠えるのは狂気の光る月夜に。しかし、月夜を待たず凶器を手持ち前に進む黄色と黒に着飾った美しいツキがやって来た。


 ばったばった──ばっさばっさと──、弔いの黒翼は夢幻の弾幕を羽ばたかせ疾り、そろそろ〆なければいけない……合成のカードの使用制限時間が来た。


 残りエネルギー僅かとなったソレを後ろへひょいとクールにノールックで投げ捨てた。


 くるくると、やがて刀身はアタマから地に突き刺さり、


 遅れてしつこく追ってきていた敵の集団は、お洒落にぐさりと刺し示されたそのポイント──気付かず黒く染み広がりペインティングされていくその己の足元に──勢いよく地から跳ね飛び散っていった。役目を終えた剣が作った黒いペインティングスペース、其処から爆散する黒羽と共に────。


 ふわりぶわり、再び舞い戻ってきたブラックな相棒を掴んだ右手に見つめねぎらい、吐い信者丘梨栄枯はやっと辿り着いた目標ブツを見上げる────。


 聳え立つ黒い塔は、目と鼻の先に……太く、そしてしっかりと堺市の地に根付き見上げても果てまでは見えない悪天まで伸びている。察知し、とりあえず彼女が参戦したこの状況の全貌はまだハッキリとはしないが観光に来たわけではない、雷鳴ががなり轟くBGMにものほほんと立ち止まっている暇はあまりない。


 視線をもどし、目の前の先。進むべき先、堺スカイハイポールタワー前、エレベーターの前。


 ええ、寄り道も立ちん坊もなしです。


 そう彼女はパパッとがモットー。


 足速に近付いていく────、そしてひとりでにパパッと開かれていく黒い戸に、


 ハナでくすりと笑ってしまった。これから中で暴れようとするモノをわざわざ閉じずに口を開き招き入れるその馬鹿馬鹿しいエンターテイんメントに。


 開かないのなら蹴破ってやろうとも思っていましたが……。そのスタイリッシュクールなプランはおしゃかですね。


 何かの拍子に機嫌が変わり閉じてはもったいない──パパッと走りエレベーターへと黒と黄の女は進入していった。


 そして彼女をノセて勝手に閉じてゆく。


 周囲にあるはずのボタンが無い、当然エレベーターが音声認識の訳もなく、だが動いている。ならば身を預けて。


 静寂と息づかいが支配する黒い空間はしずかに、天へと誘って上昇していく。


 できてしまった無言の状況に何故か笑ってしまう。鼓動も戦闘中より手持ち無沙汰なイマ速まっていく。


 そしてなぜかそんな時間に思い出したのは、この先に待ち受けているモノより……死鳥舎たちのこと。当然今は吐い信中ではない、1人しゃべらなかったのは独りであったからではないのかと? こんな静かな状況にも彼らならばつまらぬタイピングで口を挟むものだと……彼女は思いまた独り笑ってしまった。



 エレベーター内の簡易表記は、0Sから1Sへと。止まった。



 鉄籠の中で呼吸をととのえる。



 そして開かれた先には。


 暖色灯る暗がり石畳の広大。



▼第1死 はじまりのダンジョン▼



 振り返り見上げる──エレベーター上に細長く横走る電光掲示板にはそう表記されていた。やがて閉まっていく黒戸、彩度を失いながら存在が失せていく鉄籠を見つめて、


「おや? ふふ、はじめた気は、ないのですけどねえ」


 後に戻れないであろうフロアへと足を踏み入れてしまった。なにもないのでは自分がここに突っ立っている意味もないものだ、彼女はさっそく広大を歩き進んでいく。そしてどこか既視感のある懐かしい雰囲気に、懐かしいというよりは慣れ親しんだ────、



 暗がりの先からぞろぞろとボックススライムの群れが現れてきた、可笑しな習性なのだろうか綺麗にグラデーションを成し整列しつつ宙に浮かんでいる。


 そんなおかしな歓迎をまたハナで笑い。そのグラデーションにかるく感嘆しつつ腰に手を置いた。


「私の好きなモンスターですね、ふふ、四角くて無駄なくパパッとしていてかわいいです、全種類集めて眺めたいところですが──」


「お遊びは頂上についてからじっくり見下ろしましょう! ええ!」


 両のつま先を石畳にトントンとリズム良く履き直して、


 誰かに語りかけてみたのか気合いを入れて微笑む吐い信者は──。


 栄枯の背後、石畳から出現する巨大な石畳イロの女性の手がふたつ。


 星色の瞳に映り迫るグラデーションボックスの広大な壁画を──、


 小さき人の開く手指をトレースし、広範囲射撃。


 左右10の太指から発射するは太いエメラルドの閃光。数多のボックススライムが成す壁画をその輝ける熱いイロ一色に塗り上げていく、燃やして満たして染め上げて。



「はいはじまっていますはじまりのダンジョン」


「では、潜っていきますもっともっとダークネス! ふふふふ……ふッ。ふぅーーっ、フッ」



 誤魔化すようにふーふーとネツ冷まし、熱こもるひだりの薬指を舐めしゃぶり、いつものお決まり丘梨栄枯スマイルでクールに微笑みなおした。


 ──鮮やかに殲滅そして明かりをたよりに探索開始。雑談は独りほどほどに、


 エメラルド灯る暗がりの先へと、変哲の無い石畳に弾ませる黄色いスポーティーはゆく。


 ド派手に始まった堺スカイハイポールタワー▼第1死 はじまりのダンジョン▼、鈍っていた、忘れかけていた、ネムっていた黒いスペースをおもいだした……? おもいだしワラいは厳禁、懐かしいノリに乗って攻略開始!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ