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第179死 向かう先のスポーティー

 ブラックな包丁を片手に────彼女を止めれる者はいない。駆け抜けていく、障害を斬り裂きただ目指すのは聳え立つ黒いランドマーク。


「まちやがれ黒雌チーターァァァ」


 近づいてはいるようですが、魔法のように遠いですね。ええ、全くもって、


「俺のナンバーワン超速チータースポーティースタイルを真似て俺の前を走るなァァァ超速ゥゥゥ」


 ……この街は少しファンシーな……しかいないのでしょうか。ええ、やはりこれと言った特徴のない兵庫とは勝手が違うようです。ファッションもどことなく色付いています。


 風を切る、風になる──。黒と黄色のファッションは並走し、黒く靡く髪は走りやすい黄色い靴を熱心に踊らせて、流れる堺の街並みとモンスターを追い越しスピードを上げていく。


「──超速の俺が遅れるゥゥゥ!?」


「──ええ、忍者より遅いですよ!」


「──ナンジャァァァそのぷんぷん臭うアシウラのスポーティーをよこせェェ奪取ゥゥゥ」


「──せっかくの都会こんなのとお揃いとはひじょうにヤナことです、ええっ!」


 灰色の不穏渦巻く下、迷宮と化したこの堺市の仮のゴールを目指して、汗水を散らし輝かせて──




▼▼▼

▽▽▽




▼コロッセウム(ブロック)▼



 貫いた槍──貫かれた。その柄を右にぎゅっと。そして、左の刀は一瞬の躊躇もなく突き刺すズバっと。


「【ハラキル】」


 白く自滅し、爆発した。もう既に何度か見た、その白い熱量の輝きに巻き込まれる前に金髪は退避。


「ぬおおお!? まったくコイツどうなってんだぁ」


『──おーい槍男、何度もブッ刺すんじゃねぇよ』



「コレ、慣れても案外痛いんだからねぇ。リーチ差考えろリーチ差をもっと短く持て」


「はははは、あと何回死ねるんだお前好きな数殺してやるぞ?」


「んーー、それは困ったねぇ。せっかく貯めた機が中途半端に削られるのは気持ち悪いんでねぇ。────んじゃ、あと82回。きっかりよろしくたのむわ【ドロキル】」


 突き刺すのは刀、突き刺すのはその足元。諦めた顔などしていないその平然たる袴姿の男は。


 コロッセウムの枯れた地から、続々と土色の頭が手が這い出てくる。


 17人+1、の侍となった。


 さまざまに斬られた泥人形の侍軍団は蘇った。


「はははは、ジョウダン……! とんだ卑怯侍だなお前! オイッつまんねぇから刀一本で勝負しやがれ!」


「卑怯とは傷付く心外だねぇ。おたくら次から次へと上からさぁ来るのは流石にしつこすぎんのよっ。身一つ刀一本の勝負なんてのは同じ人間相手に通じる侍道、おたくら死んじまった安倍晴明にでも頼まないと斬れない亡霊だっての」


「クソ侍がぁっ! はははは!」


「クソでもない侍って呼べ! 【レイキル】」


 構え向けられた泥刀と真剣の切っ先の先、ギラリと発光し──18の熱線を放つ。侍軍団が敵を取り囲み、第2ラウンド。その刀に仕込まれた不意撃ちのレーザーに、侍の腹に突き刺さっていたモノは笑う金髪の手元へとひとりでに返り、纏う清らかな水のチカラはグルグルと風を切き荒ぶる赤槍へと伝染した。





「白熱しているようです、熱気! ──んん? ですがぁ……あれれぇあちらさんは来ませんね、ふふふふ。くんかくんか……やはり遠のいているようです向日葵ィィ! 知ってたけど」


「……」


 垂れる黒紫の髪を耳にかけ直して、蔓眼鏡の女はくんくんと鼻をナラして嗅ぐ、そのだだ漏らす向日葵の匂いは未だに残り、だが薄く遠のいていっている。


 座している赤髪の男は、ただ眼下のコロッセウムの戦士達の闘いを観戦し黙す。


「太陽王こういう事多いですよね、来る来る詐欺の炎神さんも三日三晩待ち焦がれていましたし! ふふふふ」


「フッ。強者がチカラを求めるのならばかようにいずれ交わり合う、その道をその弱き瞳で見つけたのならば何人も我の存在を避けては通れない」


「言葉を咲かせるより迎えに行ってもよろしいのですよ? さっきからうずうずしてらっしゃるので」


 豪華なその王の席、肘掛けにかけた手はタン、タン、とリズムを発し持て余していた。


「我が動いて壊してきたものも多いからな。かつて暴虐のチカラを誇った太陽ですら我の前では無力であった。吸血鬼ではなく新たな太陽王と名乗るのならば、この座して射す陽光の直視に耐えうる者を相手にするのみ」


「んー、やはり太陽王は太陽というよりはすくすくとなおも育つ古木(こぼく)ですね。深く芳しく、どっしりと、とても素敵ですふふふふ」


「古木、どちらにしろ聳える孤独を味わう。炎を盗んだヤツもそうだろう。永い時に焦る必要もない──この円形劇場にはなかなか面白いモノもいるようだ」



 鳴らす速めた太い指のリズムに、このコロッセウムの円形劇場は白熱集中の炎となり、赤髪の巨躯のもつ、黒く深いその瞳に焼き付いた。



『ザンキル』


『しつけぇなぁ! あと50回尻の穴から脳天まで串刺しにして殺しゃいんだな』


『化けの皮を被りまくったおたくは一回かい。なら遊び疲れたところを斬り刻めば簡単そうだねぇ』


『はははは下界人が、お望み通りもう一回滅ぼしてやるぜェェ!』



 座して待つ者、向かう者、愉しませる者、意に反する者。天からソレを見下ろすモノ。


 サダメの持つ流れは歪み合う熱量となり、誰にも完全には掴み取り操る事は出来ない。

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