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第177死 DODOの事務局長

 灰色の空を照らし轟かせる雷翼は、速度を増し無数の影の軍勢を斬り裂いていった。


「運転ご苦労ウイングマン! いやー、なんかびびっと意気投合って感じだァ! あたしゃもいつかトビたいねぇ」


「お前の雷だけでは飛べないと思うが?」


「ぬぬぬぬ、飛べるよ飛べる! だってさぁ羽はなくてもオーバー未惇にはこれがある!」


「オーバージェットミトン!」


 しがみつく背の構えた右手から発射、緑色のミトン。ネイビーブルーの大三角へと突き刺さった。


「じゃねー、クビ取ってくるわー、現役JKのぬくもり背越しに感じてていいよー」


 【UR】パーティーシルドで瞬間に移動。射出し届いた右ミトン上方へと位置を指定。


「オーバーレッグミトン!」


 お次は脳天砕く左カカトミトンのイチゲキ。予想通りに張り巡らされていた三角電磁シールドを砕いていく。


 ヒビ割れバチバチとせめぎ合う攻者と守者。


「もうちょいもうちょいィィィィオッケーェェってうわ目目ぱっちんこノこっちミンナァァァ! ってまだぁ!?」


 破られたシールドを更にネイビーの巨人モンスターは本気を出し張り直し、美少女のその重いカカトを受け止める。


 閉じていたその赤いネオン光の目が見開かれる。ピラミッドの頭部は目にエネルギーを溜め視線の先へとその大出力のレーザーを発射するつもりだ。


 質の良い防御シールドを幾重にも展開し、更にそのネオン瞳のビームで襲撃者を返り討ちへと──


『6秒後ぶつけます。十分です退いてくださいオーバー未惇』


「え、なになにこの頭に響くタイプのドギツイ女の聞き慣れた誰かさんの声が」


『極大化バトルカード──【UR】パーティーシルド』


 探索者お得意の瞬間移動。巨体とてそれは可能である。その大きなウツワの中で複数枚のカードを同時消費する事により1枚のカードの効果を極大化しスキルロボットEGGを対象に適用。


 探索者オーバー未惇へと覆い被さるそのアンノウンの白い影。


「あっ事務局長! ってなんなん!? うわぁーかっちょいいねぇ事務局長! おっきく育っちゃったねぇにゃはははは──」


『ほぼ自爆します!』


「にゃははじば…………は!? じ事務局長ジバク、ほぼおおえはんでぇ!?」


『なんでも何もォォパーフェクトキッス』


 自爆。その巨体は自爆するという、慌てる美少女はすぐさま攻撃を止めその場から降り去っていった。


 残り3枚になっていた敵のヒビ割れたシールドその先のどぎつく光量を増し照らす赤に──殴る殴るありったけのスキルをノセて殴る、最終的には気合いを込めて頭突きまで飛び出した。カード残量を惜しみ無く消費しながら、ただただ勢いと動く身体に任せて暴力! オーバーヒートする機体が強引に膜を突き破り、フェイスtoフェイス、許された時間で極限まで近づき触れ合ったのならば、今にも発射される赤い予感と──、


『極大化バトルカードせんまいッ──』


 【KR】イチゲキカンガルーボム、発動。


 赤く貫かれた白い機体は大出力を浴び溶けていく、最後に間に合わせたのは虹色光るイチゲキカンガルーボム。道中巡り合わせ手に入れた最高の手札で、自爆。


 赤く天を割いて、虹色に丸く咲き誇って、ネイビーブルーの巨人が堺市の街並みに死んでいく。



「おおおお壮観んんんん」


「事務局長無茶苦茶じゃんウチら意味あったこれ? てかちんだくね」


「あったんダロ……タイミングがばっちしズレなかったんだからさ」


「ギャル本能的にありましたともぉ!」


「ところで局長が死んだらホウショウキふべっ!?」



 突如、空からぶわり降りてきた白服。何かをひとつ下敷きにしながら。


 痺れる身体を休めしばらく──おもむろにその腰を上げて立ち上がった。


 其処へと続々と面子が集まってきた。場違いな噴水の飛沫をバックに、


「なんでいきなし自爆してんの事務局長、カッコいいロボ私も乗りたかったのにィィィィあたしゃあんな溜めビームほいほいって当たらないよ、ソレニほら出てきた本命タカアシガニ! カッコつけたのにミスだよ赤っ恥だよおおにゃはははは」


 事務局長相手に文句を捲し立て笑うオーバー未惇。指差す先には崩壊する巨人の足元の多脚、ネイビーブルーの龍となり鎌首をもたげている姿が見える。


 どこかデジャブする光景とその美少女の笑みとワラい声に──顰める苦い顔で。


 なにやら突如空から勢いよく狗雨雷の手元へと戻ってきたEGGカード、回転するそれを二本指の間に受け止めて。


「チッ……赤っ恥じゃない!!! ──カードエネルギーもありませんでしたアレが最善手です! 浮いた存在であるハリボテはハリボテの役割を果たしました。ならばオーバー未惇命令ですアレを止めなさい、DODOのトップ探索者として!」


「上司の尻拭いは部下、ってねぇ! ほいほーい(ソクトウ!)」


 部下の返答に舌打ちをしながらもそれ以上やり取りする必要もなく、狗雨雷が少し息を吐こうとしたところ不意に舞い降りて来たサクラ色の翼。


「俺はどうすればいい、ジムキョクチョウ」


 急に問われた、至って真面目な顔をし命令を待っているような素振りのそのピンク髪の男。


「蹴散らしなさい! 探索者なら!」


「了解した、今から俺は探索者か」


「何を言っているのです! 行きなさいボケるには若すぎますよ報奨金ははずみます!」


「そのナカに菓子パンはあるか」


「高級あんぱんはナカに冷やしてあります! いくらでも!」


「了解した」



 緑の旗をたてて走っていく黒パーカーの少女、飛び去っていくピンクの翼人。


 ゆっくりと動き始めた青龍の元へと、与えられた命令で向かい。


「街ひとつに対し想像以上の規模のコレは一体なんだと言うのですか…………しかし、想像以上というのならば探索者とはこれ程に……」


 何かを言い切らずにココロの中で、じわりと巡らせて。


 事務局長室に居た頃とはすこし違う、道に繰り出し幾多の瞳に取り囲まれるこの状況を。


 依然戦える者たち、戦う気のある者たちへと勝ち気に乗り指示を出す。広場によく通るその声に、奇しくもDODOトップ自ら先陣を切ったその自爆覚悟のイカれた勇猛さに、逆らうという言葉が探索者職員たちによぎる事は無かった。


 もう一度熱量と歓声雄叫びを増し、スキルとカードを行使しながら堺市に居座るモンスターへと、DODO総出で挑む。

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