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第166死 あいにくの悪天候

▼ニューウメダ地下シアター 演者楽屋室内▼



「チーム舞台現代版石川五右衛門、主役3人」


「いよいよ3時間後には本番だ」


 まだ時間のある楽屋で待機していたところ急に切り出し始まった。先輩である月無はいつもの調子で後輩たちへと話しかけた。


「そうね」


「ええ」


 月無の持つ独特の雰囲気にあてられてか、2人はスパホをいじるのをやめて髪や姿勢をなんとなく正した。


「べらぼぅに緊張しているか、しっちー、エイコ?」


 まだ各々、舞台衣装ではなく私服姿の3人。なんとも中途半端な時間に緊張感のバロメーターを問われる七月と栄子。


 いつものデコ出しスタイルの黒髪は、両頬を両手で押さえて、むにゅりと。意味のない行動を取りしばらく、ぱっと離して。両手を広げて少し首を傾げた。


「強がっても仕方ないし多少の緊張感はね、舞台に上がったときにどっと押し寄せるよりピリピリ垂れ流してるほうが私にはいい方法よ」


「……なるほど」


「なるほどって……緊張してんのあんた?」


「ええ、ひじょうに今、為になりました」


 栄子は右手を上に軽くぐっと握った姿で七月の目を見た。


「はぁ……栄子、あんたが一欠片でも人間でよかったわっ……」


「──手でも繋ぎましょうか?」


 そのまま栄子が伸ばした右手に、ぱちんと左手でかるく叩いた。


 栄子は口を窄め開ききょとんと、わざとらしい表情で。叩かれた手をゆっくりと確認した。


「はいはい無視無視、突っ込まないから」


「本番ではツッコマないとなしっちー、それじゃあひじょうに困るぞ」


 この場の先輩は顎に手を置き、神妙なフリをしその手でテンポ良く七月お嬢様を指差した。


「もうそれにも突っ込まない、舐めないでね舞台役者を」


 突き刺された指を突き刺し返す、舞台役者の怒りと笑みで。


「そうだな舞台役者なら」


 しっちーに突き刺された指を栄子へと月無先輩はエレガントな笑みで連鎖させる。


 その成そうとする舞台役者のトライアングルの儀式に、栄子の口角が自然と上がっていく。


「ええ、舞台ヤ」


 その美貌でクールにおどけて、しっちーを指刺そうと────左指をこめかみにぷすり。



「「ん」」



「すみません、おそらく行かなければなりません。大岩が投げ込まれました」


「「は?」」




▼▼▼

▽▽▽




 変わり果てた黒い塔が天を突き抜けている。灰色に歪む空はより濃く黒ずみ。




 そんな悪天候の下、白い傘の下。



「だから早く避難しなさいと言ったのに、浮かれた最悪の天候、ねッ……!」


 

 カラフル傘々のミサイルが銀色の敵機を貫く、寸前。


 黄緑の電磁膜が突如ターゲットにしていたロボットの前に出現し、爆発する傘々の弾幕を凌いだ。爆発で生じた煙と粉塵が明けていく──。


 その間にパラソルガールはカフェテラスから拝借した巨大パラソルを密かに天へと飛ばし、その閉じて一気に降下した石突きが今度はピンクの機体に狙いを付けた。


 鋭い巨大傘のイチゲキが後衛へと──展開した黄緑の電磁シールドがまたも阻む。


 ピンクのロボットは手持ちの銀のスプーンを杖のように扱い魔法でも唱えるかのように電磁スプーンシールドを展開させた。


 巨大なパラソルは更に唱えられた二重の黄緑の膜を貫けず──勢いを無くしたそして──傘を犠牲にして大爆発を起こした。


 ──ピンクのスプーンロボットはその二重の膜に包まれたまま擦り傷一つなく健在。


「さっきたくさん遊んだからねぇ、ママの事はよく知ってるよ」


 反撃開始、銀のスプーンロボットは収納していたガトリング砲を両腕から出現させ、銀の弾丸を其処彼処お構いなしにばら撒いていく。


 民衆を襲った凶弾に対してパラソルガールは数多の傘列を展開し、電量を割き防御性能を強化し対抗。


「僕の第3ママになるんだからっパラソルガールママっ!!! だからだからママに甘えてママの邪魔をする奴らなんて嫌いだ失せろおおおおおおおお」


 横殴りの銀の雨に消耗する身体、ボロつく白傘を開き──この瞬間瞬間に鮮度の落ちていく取捨選択というモノを迫られている。



「ここで見捨てたらかっこわるいに尽きるじゃない、パラッと【テンキス】!」


 スキル【テンキス】で生成した雨雹の弾丸で防御だけではなくアタックを仕掛けて今出来うる限りの対抗作を。


 凶弾を垂れ流す銀色のターゲットへと──またも阻むのはあの黄緑色のシールド。


 パラソルガールは焦燥でヒートアップする頭で為す術を探すが……この先の勝利へのビジョンは犠牲か、敗北か、逃走か────苦しく険しく銀の雨のナカ深まっていく彼女の表情は、最悪の選択を──────




 エメラルドの閃光が疾る。




 慌てて反応したピンクの機体は、スプーン杖から唱えた黄緑の膜でソレを防いだ。


 電磁スプーンシールドの黄緑の膜は、


 突如吹いて来た強風に帆を張るように目一杯。伸びに伸び突き抜けない、イヤこのままじゃ一瞬にして突き抜ける──


 一瞬粘った1膜をぶち破り、


 2、3と出力全開で展開したそれを一瞬で貫き4の本体へと達した。


「嘘嘘!!! こ」


 バイザーアタマを貫き、更に光速で達した出力を絞った細い2、3発が腹にダメージ痕を残し──ピンクの機体をエメラルドの炎に染め上げ燃やし尽くした。


 何が起こったというのか、銀のスプーンロボットは美しいエメラルドに見惚れ隙を見せてしまった。


 白傘から吹き荒れる雨雹がぶつかり足元をガトリングの銃口を凍らせていく。ここぞとチカラを使い高鳴る鼓動の勝機があるならば探索者パラソルガールは逃しはしない。


 劣勢からしてやったりの顔に、


 そして強烈な流れがこちらへと向かってくる──


 吹き抜けた黒い風は。



「これはなんでしょうか? ……給仕ロボット? ええ、ふふ。スプーン散らばりすぎてます」


 ブラックな包丁捌きで通りすがりにバラバラに切り裂かれた銀のスプーンロボット。斬られた事に今頃気付いたのか、やがて周辺のスクラップ全てが黒い光の粒へと還っていった。



 黒いノースリーブに黄色いジーンズ。淡いイエローのヒールはやめて、動きやすい黄色いスポーティー。そよ風で乱れた黒髪ショートをととのえたのならば。長身アスファルトに聳え立つ、



「……ふふふふふふふ、相当ぱらってるわね」



 あいにくの悪天候、厄介な横殴り銀のスプーンの雨のナカ遅れて登場したのは────鮮烈エメラルド! 誰もが目を惹くクールな美貌。


 死のダンジョンの吐い信者、丘梨栄枯。

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