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第161死 炎と侍とコロッセウム

▼コロッセウム(ブロック)▼



 グレーの空の下の逃げ場の無い白熱の舞台。


 サムライガールは【LR】パーティーシルフぼるとブレードを既に使用。


 手加減出来るレベルの相手ではない、風雷を纏った三日月15回分のエネルギー斬を惜しみなく放った。


 直撃していく斬撃を、身を縮めながら鋼鉄の鎌を盾代わりにして防いだ。


 猛攻を貰いながらもタフに耐え抜いたエビル蟷螂(かまきり)の恐ろしい棘棘付きの鎌は防御反転攻勢へと──素速く間近のターゲットまで届き地を抉った。



 おまけの長い棘棘に身を裂かれながらも──ここぞの連斬。


「【UR】トリプル斬りッ、物干し竿ッ!」


 勇猛にも蟷螂の懐へと潜り込む事に成功し、天へと一閃。自慢の両鎌腕の脆い部分から落とし無力化。素速い動きで攻撃力を失った蟷螂を赤蜜で斬り刻み、鎌腕の再生は追いつかせない──もう一閃物干し竿のチカラを借りて天から地へとバッサリと!


 これまでの雑兵との戦いでストックしていた13の内の8つのササクビとカードを巧みに使用しエビル蟷螂はサムライガールにより討ち取られた。


 敗れた大型モンスターが黒い光の粒へと還っていく。


「はぁはぁ……ッ」


 アレが相手じゃなくてよかった……けどっ!


 ──やっぱり終わってくれないッ!


 コロッセウムの地下層から表舞台へとまた一体の不気味な大型モンスターがブロック兵に連れられ運び込まれてきた。


 豪華な玩具の王族の席に踏ん反り返る赤髪の巨躯──サムライガールが見上げたヤツは薄く見下しながら笑っている。


「コロッセウムとは剣闘士と猛獣たちの見せ物劇場。我が相手だと少々楽しめないと思ってな、ストック系かテンション系か? なかなか面白いスキルを使う」


 探索者のスキルの事を知っている? 何者なのよッ……! ってとにかく、回復。


 今の内に回復。エビル蟷螂はサムライガールにとって全く油断の出来ない強敵であり肉体がレベルアップする感覚とシールドも恐らく8割は削られた感覚が彼女にはあった。


 使用したカード【UR】痛いの痛いの回復薬Mark-Ⅱで失われた電子保護シールド値を徐々に回復。荒げる息を整え、ダメージでひりつき熱くなる身を休めていく。







 次戦、対するデスフォレストドラゴン。赤褐色の不気味な枝葉の翼に、脚を地に根付かせ樹木の竜頭と複数の尾を持つモンスター。ドラゴンと呼ぶにはやや植物寄りである。


 DFドラゴンが手足以上にウネウネと自在に操作する幾本もの蔓の鞭が連戦疲れのサムライガールを襲う。


「サムライっぽくはないけどッ芽吹け【ユーカリ】!!」


 サムライガールは対抗するようにユーカリの木々を成長促進操作しガード。糸と糸が複雑に絡まり合うように──ごちゃごちゃと結びつき締め上げた。赤と緑の蔓枝葉が殺風景だった砂のステージを彩っていく。


 残り5つのササクビは消費しないけどここが死のダンジョンと同じなら体内の電量を失ってしまう。賢くやらないとこれはさっきよりも……死ぬッ!



「ほぉ、あの子植物系を使えるのですね! 私がもらっていい?」


「なんかオンナ死にそうだけど大丈夫カァ? 俺が狩ってやろうか太陽王? こんな親子の為に戦うなんてちょっとだけ可愛いよな」


「面白いところだ黙って見ていろ」


「んだよ、血が足りてねんじゃないか。面白いかねぇ」


「はぁーい、あれはユーカリですね! あぁ、そういう、なるほどねぇふふふ」


 赤髪の巨躯の席へと近づいた。震えながらも祈り見守る親子へと花飾りを渡した女、槍を持った金髪男。


 謎の勢力が見下ろすブロック闘技場、死の予感がただようバトルは更に美しく熱く加速していく。



 スキル【ユーカリ】では凌ぎきれない、ならばと探索者は次のカードを切る、【UR】ウイングブレード。


 模造刀はその刀身に真っ白い羽根の刃を纏い、素速さの上がる武器となる。


 サムライガールは白い天風をその身に纏い羽を一枚一枚散らしながら赤い枝葉蔓の猛攻を掻い潜っていく。


「ジリ貧は一番乗りの武勇で斬り開くしかないじゃないッ!」


 白羽の刃を振るい決死の覚悟でDFドラゴンの懐へと────四肢を絡め取られてしまった。


 奮闘むなしくも絶対絶命のピンチ。カードで機動力を上げても絡め取られてしまえば意味のない。


 締め上げられた手首から刀を落としてしまい、刀を失ったサムライのサダメはもはや──


 樹液を垂らしながら興奮したドラゴンがいる。そのグロテスクな巨顔を女体へと近づけて、ダラダラと──蠢き伸びていくぬめる枝蔓に。


 穢れたモンスターはじっくりとお愉しみのじかんを──



「ッ……女だからって舐めてくれてありがとう! 【ササメシ】」


 悲鳴でも愉しむつもりだったのか、ガッチリと痛いほどに拘束された身でも女の首は動く、天へと大口を開け、毒々しい緑の三角握り飯を一口に食らった。


「【テンペストっ……ごぐっ……テルペン】ッ!!!」


 吐き出し、吹き出し、青い炎が至近の竜頭を焼き付け──辺りを漂っていた青いキラキラに延焼し火力を上げていく。燃えに燃えた青く燃えた、赤い植物竜は青い炎に焼かれて──


「ごっほえっほ……ッンん……!! ハァハァっ……ぎりがち……ぃごっほ────」


 スキルの反動で咽せていく。サムライガールは黒煙を口から辛そうに吐き出し。


 スキルで体内電量が底をつく程に生成したユーカリの木々から漏れ出た高濃度テルペンはターゲットのモンスターを密かに覆うように操作され、サムライガールが食らったササメシならぬユーカリメシのスキルアレンジで吐き出した青い炎を種火とし、彼女の最大火力技にて必殺のスキルをコンボを見事に本番の舞台で成功させたのだ。



「あらぁ炎使い? やだぁ、知ってたけど」


「青い火はきやがった! 珍しいじゃねぇか!」


「炎を使う……ヤツの置き土産か? だが」


「──なんだ見た目だけで紛い物かよ弱ぇな、所詮は下界人だな」


「まぁ結末も、知ってたけどねぇー」



 青く燃やされ黒く焦げボロつきながらながらも──生きている。


「あぐっ……」


 偽物の勝利の余韻をつかれて易々と、再び拘束されてしまったサムライガール。


 枝蔓で器用に拾い上げた落ちた赤いベレー帽を彼女に被せ直して、再びのお愉しみたいむを開始した。


 樹液塗れの舌でうなじをねぶり、しゅるしゅると黄色いと白のストライプシャツの内部と這わせていく。


「んんんんんッ!!! くっ、くそぉーっ、解けッふんぬぅ、ひゃっ!?!?」


 べちゃべちゃと間に滑り込ませた枝蔓が器用にまさぐり……塗り塗りと分泌させた樹液で濡らし浸透させていく。数多の枝蔓が秘部をじっくりと目指して這っていく。どんどんとそのラインが透けていき、DFドラゴンの興奮が更に高まり真っ白い花を身体と地に咲き乱しながら分泌されていく赤い樹液の──



 カラフルに爆発。


 ざんっ、ざんと枝蔓を斬り刻み──



「さすがにおんなのこが卑猥ちっくにヤラれてるのをこれ以上おじさん客が見物するのはねぇ」


 観客席から飛び出し乱入し、慰み者にされそうになっていた女性を救出。


 女に夢中だったDFドラゴンを奇襲し怯ませている間にサムライガールを抱きかかえながら後ろへと跳躍し距離を取った。


「あなたは……」


「おじさんじゃなくて、侍って呼んでくれるとうれしいね」


「まさかランキング2位! お侍様!?」


「お様づけとは久々だねぇ、古風だねぇ」


 男は、かかえていた彼女をそっと荒れた地に下ろした。


 そして話もほどほどに背にした彼女の前へゆっくりと鉄下駄の歩を進めた。


 腰左右に一本ずつの二本差しにした右の刀を鞘から滑らせて抜き、男は構えた。


「き、気をつけてください! そのモンスター全然死にませんっ!」


「見てたから知ってるよ、頭部にブッ刺しても死なないとはねぇ……お陰で大事な一本失っちゃったの不運だわまじ。ま下がってなサムライの嬢ちゃん」


「……はい! ご武運をッ……!」


「おうご武運……ってほんとに現代人か嬢ちゃん? さぁて、どう料理しっ────」


 鼠と黒の袴姿の侍は、地中から貫かれていた。


 ぷすぷすぷすと──容赦の無さすぎる怒りの鋭い枝蔓が。


「あぁ!!!! お侍様!」


 串刺し串刺し更に前方多方から伸びた猛攻にもみくちゃ、赤色の木枝の繭を形成していく。



「【ザンキル】っ」



 赤繭の中はカラフルな金平糖色に爆発しぼろぼろと焦げ付く、耐久性の弱った枝は全て乱雑に名刀白蜜に斬り捨てられた。


「──オーケーオーケー、足元の不意打ちもありねっ! 一本取られたぜぇ畜生! 先に言いなよウネウネときもいモンスターちゃん痛いだろう? ……てかオマエ男と女の扱いだいぶ違わね? 串刺しぃ?」


 首を傾げる、無いあご髭をさすさすとさすりながら──侍は無傷平然のフェイスをし絶命の赤繭から復活。乱れ散った黒髪はすこし気になるが気にせずそのままに──鉄下駄をさがし拾い上げ右に履き直した。



「え、死んだろ? はははっは不死身か?」


「これは……予想外ですね! 知ってたけど」


「フッ面白い」



 おもしろい侍の乱入したコロッセウムに、叩くのは野暮、ルール違反なんのその新たな展開に盛り上がっていく見物人達の熱気が渦巻く。


「これが……2位の剣捌き……すごすぎるッ!」


「その調子で実況たのむぜかわい子ちゃん! 変な奴らも今日はいないしな、よぉし!」


 美しい刀白蜜は怒り狂うDFドラゴンへと向けてキラリと切っ先のヤル気を魅せる。

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