第159死 白い傘のパラソルガール
スキル【カササス】。開いた傘のシールドでビームの豪雨を凌ぎ、操作する数多の閉じ傘のミサイルがボックススライムを破壊し、鋭い石突きが本体のオークを貫く。
鋭い突きと、鉄壁の傘列の守りで────
スライムジャグラーシューターの群れは滅された。
歓声が沸く────彼女、パラソルガールに対してだ。宙を彩るカラフル傘と、優雅に佇む白傘の女。傘をあやつる異色のヒーローにより人命は守られた。
「傘が目立つのは、今日かぎりね。ふふふふふふ」
「──これで終わりだといいのだけど、ぱっぱら達は無事かしら」
鳴り止まない歓声と、「カサオンナ」のコール。気の利くおばちゃんから受け取ったコロッケを食べ、パラソルガールが食いそびれたランチの足しにした。突如街中に舞い込んだ探索者としての一仕事を終え晴々しい天を見上げて──どんより変わりゆく空模様。
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曇天の下に、厄介な敵があらわれた。
「パラソルガール知ってるよ、僕の7番目のママにしてあげてもいいかなぁ!」
宇宙服を着たようなロボットのような……シルバー色のフォルムに黒のバイザー。
アスファルトに直立する一体の敵へとカラフル数多の閉じ傘のミサイルは突き刺さろうと────
ぶつかり、へし折れる傘々。
「その辺のぱっぱらとは一味違うようね」
今度はこちらのターンばかりと反撃。ガゴっと盛り上がり銃口が回転していく──腕に隠し仕込まれたガトリング砲から物凄いスピードで──銀のスプーンが撒き散らされていく。
傘々に高速で突き刺さっていくスプーンの柄が非常に危ない。
開かれた傘のシールドは傘生地にエネルギーを纏い防御性能を強化。プスプスと穴空き、ジャラジャラ、と鳴らし地に堕とし無力化。
銀の凶弾から人々を守る傘の列。
パラソルガールは前に向けた白い傘に残る銀スクラップをパラっと払い捨て、閉じた。
「なんでそんな奴等を守るの、ママは僕だけを守ってええええッアイアイィィィィィィィィ」
再び高速のスプーンが発射された。乱射するスプーンの豪雨に、電量を割き強化を施し耐えに耐えていく傘々。
構え開いた白い傘を覆い尽くすほどの銀の弾丸に──
「ダセンスなスプーンロボットにっ、ハイサカイは、ぱっぱらおかしいわねェェええェェ──」
更に激しさを増す────スプーンの嵐がパラソルガールを飲み込んでいった。
建物へと激しく衝突し、開いた穴ぼこの蓋をするように、銀のひしゃげたスプーンの山と粉塵に覆われていた。
パラっと、地にひらかれたボロ傘を残して────。
「耐えるから耐えるからァァァ無能がママをイジメたからだ、お前ら居なくなれ!!!!」
最後まで人々の傘となり猛雨を耐え凌ぎ、朽ちてゆくボロ傘。それを見つめた人々は目の前の運命を悟ったのかもしれない。
声高々に発狂したロボットは、ママを失ってしまった怒りと悲しみのスプーンを最後まで守られ続けた愚かな者達へと────
巨大なパラソルが機体の横腹へと突き刺さった。
敵を連れて──勢いそのままにビルへと衝突。
頭部のバイザーは間近に見つけた──ボロボロの黒いワンピース、お気に入りの海月のバンダナを無くし下ろされた黒と青の乱れる長髪を。
使用した【UR】パーティーシルドで瞬間に移動、突き刺さる巨大傘の柄を持ち。
「ハァハァ……ダッセンスな傘は使いたくなかったけどッ──」
濡れ傘は雷電を纏い石突きで切り刻む──雹弾を吐き散らしぶつけ機体をひしゃげ凍らせる──再びスクラップへと閉じ突き刺したままアスファルトへとパラソルガールは疾走する、燦々と熱帯びて──
パラッと開き放った。
「【テンキス】ラッシュ!」
カフェテラス席にあった巨大なパラソルは、天へと開かれた。とてつもない風は滅多打ちにしたロボットをアスファルト上空彼方へと吹き飛ばし──虹色にイチゲキ模様の爆発花火。
「ったいわねぇ……」
【UR】パーティーシルド→スキル【テンキス】♡→【LR】イチゲキボムの必殺猛攻のコンボを見事に天へと咲かせてみせたパラソルガール。
曇りを裂き、暗がりに咲く虹色と、散り散りキラキラと堕ちながら失せていくスプーンロボットの鉄屑。
灰色の空に輝いているソレを皆が見上げる──また守られし人々の勝利の大歓声が上がっていく。
「ふふふふふふ。さっさと避難しなさいよぱっぱらたち──はむ」
アスファルトへと突き刺した白い巨大パラソルの下。
その白に殺到するように手渡されたハムカツをひと齧り、強敵を打ち倒しぼろぼろで得た勝利の味は格別に美味い。