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第156死 それぞれの休日❸

 手に入れた9分の1趙雲様の限定フィギュア。箱だけでも価値のある四角いゴージャスケースに入った憧れの趙雲様を無事確保。お値段7万円はちょっと……いや買えたのが幸運だ! 幸運だけど────


 どころじゃないみたい……。


「なんでモンスターが堺にいるの!」


 玩具のブロックを道に敷き詰めたアニメフィギュアエリアの街道に居るモンスターの群れを、ばっさばっさと造形美しい刀で斬り裂いていく。


「うわああああ!? 斬らないでええええ!?」


「ちょガンシューティングの刀版!? 無双中ですッ避けて避けて世間様方!!」


 モンスターに入り混じり人々が必死で逃げている。間違えて斬ってはいけない……レベル1のお邪魔要素を。



 ──人が光の粒になって死んでいる?


 そんな事を思ってはいるが、腰を抜かしたりは出来なかったのは彼女が死のダンジョンに慣れていたせいだろうか。



 ナニかを見つけた────



 玩具の(くわ)を竹槍を刀を掻い潜り、笹の葉を散らし敵を叩き斬る。大事なだいじな武将フィギュアの箱を左手に抱えながら。


 あそこに人が──いた!


「うわわ、世間様大丈夫ですか!?」


「私はいいからその子を!」


「……ッ!!」


 倒れた女性がいる。ヒールを履いて挫いたわけではない、足元のスニーカーは脱げていない。


 凹凸の玩具ブロックの地に倒れながら、その右は力強く指し示している。


 なんで立たないの……動けないのか恐怖で。


 左に抱えていたフィギュアを投げ捨てた。


「こんな状況でフィギュアなんて馬鹿なの私ッ!」


 投げ捨てたフィギュア箱は子に寄る顔面にぶち当たり、損傷した緑の顔面ブロックを回復出来ず光の粒へと還った。



「親と子はセットじゃないと後でグレるんだからァァァァァァ」


 疾風怒濤の剣撃が泣き喚く幼女の窮地を斬り裂いていく、寄る敵をばったばったと先程よりも斬れ味鋭く叩き斬り掻っ攫う。



「ひっ、あ、ありが」


「まだ終わってないよ! しっかり抱いてて! お父さんの元まで必ず生きること、立って! 大丈夫、敵は私の刀でも斬れるみたい!」


 じりじりと迫る鍬を構えた農民や竹槍を持った者、武者崩れに浪人に相撲取り、バラエティー豊かすぎる玩具ブロックの面々に恨みは無い、恨みを持たれる筋合いも無い。


 ここはもう既に戦場というのならば、この親子の命運は私の刀に握られている────



「雑兵なら道を開けなさいよ! 道を開けないのならサムライガールの武功の足しになってもらうっ!」



 スイッチONカラフルに光る模造刀名刀赤蜜の刀身、笹の葉を風に散らしてサムライガールはこの絶体絶命の状況に構え────斬り裂いていく。







▼王都動物園ビースト▼


 動物園、ここ最近は忙しかったから、なんとなくいろんな動物たちを見に癒されに来たはずが。


 彼女の眼前にはどこか見覚えのある猛獣そうでない猛獣が園内で暴れていた。檻から解き放たれたのだろうか、そんな事は無い。突然湧いて来たのだ。


「獣のダンジョンだとでも言うの……なんで、いやとにかくっ」


 背に装着した白い機械、伸びて一心一体に巧みに振り回すパイプノズル。


 ノズルから出た黄色いレーザー刃が寄る砂漠ハゲ鼠を屠っていく。


「ここを切り抜けてからにしよう」


 既に遅い事は分かっている、園内のモンスターたちに何人かやられていると推測できる。それでもここで運良く戦えるチカラを持つのは私だけのようだ。


 必死にこちらへと向かってくる大層なカメラをクビにかけた男性が──


「職員さん助けてくれぇ!!!」


「寄らないで、とりあえず動物たちと檻の中に入ってて、きっとその方が生きる確率が高い。さっきから檻にはモンスターが入ってきていない、行って」


「お、お、私が檻ぃ!?」


 寄りかかろうとした男性を掃除屋は手で制して止めた。


「とにかくおじさんは邪魔、足を引っ張られると救えるものも救えない。ここは危険だから大声を出さずどうにかじっとして生きて」


「ひぃい鳥いいいい檻虎ぁあえああ!? 畜生虎の方がマシかああああ」



 おじさんが去った次は、大きな鳥がコチラへと来た。


 翼を大きく広げて威嚇しながら猛スピードの二脚で向かって来ている。


 ブレードノズルからフロアノズルへと鼻の形状を変えて──えれましんがんⅣで迎撃、射撃。


 垂れ流す白いエネルギー弾丸を受けながらも、大型の鳥はあまり怯んでいない。


 迫る脅威に、落ちない汗が伝う。


 大型の鳥の化け物コカトリスは、その嘴を開き──霧状の石化ブレスを広範囲にばら撒いた。


「──くっ、ほわいとひーる」


 発動したえれほわのスキルほわいとひーるⅦ。1%2%とじりじりと進行していく石化の状態異常に対し、回復効果で即悪化する前に完治無効化に成功。


「──毒の類いは想定済みっ」


 なおも迫るターゲットの動きを遅めて石化からの右の鉤爪、コカトリスの必勝コンボ。鳥頭のヤツは賢いが馬鹿であり気付いていないのだ。


「やるよえれほわ。大物は、ビームコード!」


 発動、【UR】身体能力UP1.37倍23秒。切ったカードはいつも以上に素速い機動力を見せる。


 背に倒れながら、鋭い肉を抉る破壊力を誇る鉤爪の脚を地に回避。倒れた背のえれほわは車輪を回して主を助ける──火花を散らしながらモンスターの腹下を華麗に掻い潜っていく。


 いけっ、既に掃除屋が摘みもっている投げ放ったプラグコードが腹下から突き刺さる。どこまでも伸びた黒いコードの尾を引いて。



 鳥頭が振り返る前に──




「出・ホトプスッ!」




 円柱ノズルから放出──多量のエネルギーを消費し瞬時に貫いた白い閃光は、コカトリス2羽の胴体とクビのそれぞれを貫いた。



「2枚抜き!! えれほわ!!」



 戻って来たえれほわのプラグコードとハイタッチ。掃除屋の背に迫っていた大きな感覚をラッキーにも2枚抜き。


 だがこれ以上の大喜びしている暇はない。この猛獣の闊歩する園内で、助けを待つ人がきっといるはず。


「掃除屋ならこれ以上汚れるまえに掃除しないといけない、えれほわ行くっ……少し風に当たってからにしよう……」


 威力凄まじいビームを放てば、少し機体は熱くなってしまう。そのぬくもりを背に感じながら香にカスタムしてもらった冷却機能で相棒のえれほわを労っていく。


 トレードマークの白い綿のキャスケット帽を脱ぎ、黒髪をかき上げ戦闘と突拍子のない状況にアツクなった思考をクールにクールダウンを図る。

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