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第154死 それぞれの休日

 丘梨栄枯たちの幻闘シミュレーター内での修行と彼女達の過ぎゆく日常と。DODOのリアルシミュレーター市街地Bにて実験、アイテム兵器開発、新たなスキルの発現、探索者同士の激しい戦闘訓練、漠然とした目標である死のダンジョン攻略へ向けての着々とした準備もはじまり。


 ────月日は流れていった。その間にもDODOは様々な企業と裏でwin-winの繋がりを増やしていた。発足してから1年未満、異例のスピード感を持ってして急成長を遂げていったDODO。


 成長したのはDODOだけではなく、死のダンジョンから持ち帰った資源とオーバーテクノロジーの一端は堺市へとエスト電機の力添えもあり還元。手に入れた空想都市の設計図を参考に急ピッチで街は建築開発されていった。


 生まれ変わった堺市を、堺ベースと称し、その現在するスカイハイ堺ポールタワーを中央立てた近未来都市のモデルは、世界からの注目度が高まってきている。




▼DODO本部、事務局長室▼



「報告、死のダンジョン攻略同盟パーティーVGAが順調に死階をクリア。掃除屋、グングニル、アッシナガー、ダストマン、ダスト姉さんその他死鳥舎のメンバーは現在第51死へと到達。最高到達地点第56死まであと5死です」


「──探索者歴2ヶ月半、掃除屋という男、性格には難がありますが今の実力はオーバー未惇に匹敵いやそれ以上に何度もダイブし攻略に熱心のようですね……彼の問題行動は、チッ……正す必要がありますが……上位探索者同士で衝突するような場面は無し。いいでしょうっ、もう下がってください」


「ハッ」


 白服の職員は報告を済ませて事務局長室を後にした。


「何もまだ無茶をする必要はありませんが……実力のある探索者同士を一時的にでも組ませられればこれぐらいはやってノケるか」


「何もない土地に種を蒔き水を与える……意欲のある探索者はトップ探索者というものを目指す。私は」


「結局のところ力を持てば何者も逆らいはしないのです、蝙蝠のようなやり方には辟易しますが……今がまさに夢と現実を明かし、そうなって来ているのです」


「私は……間違った未来は選んで来てはいないつもりです」


 黒い椅子に少しもたれ、何故かまだ制帽を脱ぐ気にはなれなかった。しかしどこか区切れた気持ちに。


 机上に真っ直ぐに置かれた封からさっと取り出した──チケット。


「フン。そのような小さな舞台で主役など笑わせます…………うつつを抜かし拒めるのも華のある内です、あなた抜きで終わらせてしまいますよ」







▼ハイサカイ、焼肉屋【堺といえば肉だろう?】前▼



 キュプロの次のダイブへと向けてキュプロ課外授業を午前11時から開始する予定である。日曜の暇なじかんに肉を食らい語らい、作戦立てる。キュプロの全てはこの女が導いていく。



▽Vメッセ▽


パラソルガール:ぱっぱらたち。時間にルーズなのは予想通りだったわね。


サムライガール:すまない校長、趙雲様の限定フィギュアが


ボンバーオンナ:ちょっと遊園地にアイス


ノッポ大阪:いい帽子があった


オーストラリアット:今向かっテル!!


ピローねむたい:だきだき


パラソルガール:ふふふふふふ、パラってるわね



 女は返信をし、青いスパホを閉じた。


 待ち合わせの予約した高級焼肉店へは電話を入れ、キュプロのトップは1人、目に入った近場のカフェへと移動していった。パッと白い日傘を開いて。







 いつものカーキのジャケットにシンプルな白シャツ青いジーンズを履けば誰もがシティボーイ。この男もまた休日の昼にすっかりお気に入りの衣装で街へと繰り出していた。


 栄枯さんとのいつかの再会を夢見て、男として何かひとつ彼女に一杯コーヒーぐらいは淹れれるようになっておきたいと。DODOの職員として勤めた初給料で小さくお洒落なコーヒー豆専門店にコーヒー豆を買いに来ていた。


「これがえっと、なんだっけ?」


「違いがわからない……とりあえず酸味のある方が……いいのか?」


「すみませんッここの全種類くださいっ!!」


 物は試し、ためさないと何も分からない。死のダンジョンのバトルカードならぬコーヒー豆の識別の為に、挙動不審な客が許され得る全種類の豆の購入を図る。







 夏海ノ香水のメンバー3人と葬儀屋。すっかりお馴染みになった彼女らは、まりじ先生の雑用お手伝い係としても重宝されている。


 この日はマンネリになっていたリアルシミュレーター市街地Bの景色を抜け出し、現世へと。


 少しいつもの探索者補助アイテムの開発と違った趣向でと。自分達と狩野千晶、その他のお世話になった探索者のアナザーコスチュームを作るという名目で、そのデザインを考案するにあたってリーダーの香の元いたアウトドアショップの製品開発部へと許可を得て足を運んだ。



 デザインの基本はやはり現代社会といえば、スパコンをカタカタと操作していく。素材、色味、性能、オシャレさ、独創性、描いては消してツギハギして。


 懐かしい、ここにいると良い刺激を受けるわ。……まずはラッキーボーイ。いつもカーキのジャケットを着ているけど好きな色なのかしら? といっても彼の場合ホットプレートが本体よね。とりあえずこの前カスタムしたのを更に使いやすくした方が彼は喜びそうね。次は掃除屋さん、彼女は綿のようなキャスケット帽がトレードマークね、彼女は掃除機のえれほわを背負う事が多いから取り外しの用意な簡易ランドセルのような────。


 広々とした室内には、衣服を着たマネキンとテントが点々と。


 室内であってもテントの中で作業できるこのアウトドア企業ならではの特別な環境は香にとって特段集中できインスピレーションの湧く思い出の場所。



 数ある衣服やアイテム、中でも目を惹くのは。



「ウェディングドレス? こんなのあったの香?」


「昔ここにいた時にみんなで一体だけ作ったのよ、さすがに好きなことでもアウトドアの事ばかり考えてると女子はね……夢見る遊び心ね。合コン前に拝めば御利益があるからってそれからずっとここの伝統で祀られているわ」


「あははは、合コンでそれはどうなのよッ医者かな、弁護士が出やすくなるのかい!」


「葬儀屋にとっては遺体より直視できないものです……なにぶんパートナーの死を想像してしまうでしょうね」


「いやいやァ似合うかもよ! 冠婚葬祭ギャップで」


「冠婚葬祭ギャップ……」


「私も葬儀屋の塔子はこれを着て笑ってゴールが、なかなか似合うと思うけど。何にしてもこれを着る前にしゃしゃっと成功して稼がないとね。死のダンジョンは男女で平等に稼げるコンテンツよ、余裕が出来たら子だってたくさん産むわ! 3年後ぐらいに」


「ふふっ、はい。それはすごく同意です。5年後ぐらいに」


「そういう未来があってもいいかもじゃん?」



 4人女子、アウトドア仕様の少し風変わりなウェディングドレスを着たマネキンを各々の濃度で見つめて────。







▼【甘味処。さかい】▼



 和風の店内はそこそこの賑わい、古い木の感じは大正ロマンを感じさせようとする企業努力が見える。


 テーブル席にひとり男客が注文し運び置かれた和スイーツがある。団子串の山盛りに、熱気を感じる中鍋が──



「この鍋は……なんだ? 僕はみたらし団子を頼んだはずだぞ」


「これはみたらし団子鍋といって、この団子をこのように──鍋に入れつけて食べればアツアツのみたらし団子を味わえる欲張りセットとなっております。更に南瓜じゃがいもサツマイモ、ミニホットケーキもセットで付いていますのでそちらも同様にお楽しみください。あとこちらのお茶は無料で飲み放題ですので、ではごゆっくり」


 親切丁寧な若い男店員から手渡された熱々のみたらし団子を──ひとくち。



「……」



 湯呑みのお茶を──ひとくち。



「……」



 青いパーカーを着た金色の眼、金髪の男は鍋に白い串団子をディップしていき、熱々を纏わせて食らっていく。

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