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第153死 コラボ吐い信

▼【第5死】星な降らないな月▼


 ローラーブーツの機動力で月面を滑っていく──夏海はバットを振り回す。重い金属のイチゲキが月のモンスターを破壊しクレーターの溝リンクで踊るようにコマを疾らせていく。


 道程に撒き散らしておいた【チョコスプ】で策もなしに追いかけてきた月のウルフをカラフルにトラップ爆破。そのままクレーターの反りに沿い弾き出されるようにジャンプ。


「夏海、全弾ばっばーーーーん!!!!」


 発動した【(フィン)・チョコスプ】。両指をチョコでチョコっとコーティング、宇宙を飛ぶ敵のクッキー円盤の編隊をロックオンし発射された指チョコミサイルは弧を描き──【ガン・チョコスプ】を同時に発動し手のひらからチョコスプレーの横殴りのアメが降り注いでいく。最後はカードを切り金平糖手榴弾で〆た。


 発射された計20の指ミサイルと多量のチョコスプレー、必殺必需の金平糖手榴弾。


 夏海の全弾発射は豪快でスイートな爆炎で辺りを焼き払い、バタークッキーの編隊と月のウルフ、月のボックススライムの雑兵達を光の泡粒へと還していった。


 重力は地球と変わらないこの偽物の月面にローラーは着地。撃ち漏らした月のウルフは待っていたとばかりに丸腰の夏海に襲い掛かる──夏海は天からキャッチした相棒でそのまま狼のドタマをかち割った。


 ちゅぱちゅぱと指にベタつくチョコを舐めしゃぶっていくのは、陽気な女の死鳥舎サービス。



「すごい、こんなに強い人がいたなんて……よし、えれほわこっちもいくよ」



「えれましんがんⅢ」


 背に背負う白いキュートな機体から伸びでたパイプとフロアノズル。長方形の鼻から発射されていく超弾速の白粒は次々とどこからか湧いて出る数多の浮遊するクッキーの円盤を砕いていく。


 やがてばら撒かれた弾丸は地平を彩っていき、砕けていく。


 現れた地の部隊。バラエティー豊かな柄クッキーを盾にし弾丸をやり過ごす、掃除屋の彼女を圧し潰そう近づいて来た石人形たちを。


「ほわほわソードⅡ」


 えれほわは鼻をフロアノズルからブレード型の細いノズルへと変化。


 鞭のようにしならせて叩き斬る。出力鋭い伸び出た黄の刃がお菓子な盾ごと石人形を真っ二つ。



「さすが19位! パワーアップした夏海さんとッ……いい勝負じゃない! どっちが多くヤレるか勝おおおお負! チョコっと受けてくれるよね!」


「のぞむところ! えれほわいくよ!」


 元気に先行した2人は競い合うように月面の敵を殲滅していく。


 ▼

 ▽


 後方に控える葬儀屋は夏海に借りた厳つい釘バットを振り回し多めに支給された【SR】金平糖手榴弾を使い自衛する。


 皆に迷惑をかけるわけには……自衛ぐらいはと。なるべく後ろで先輩探索者達のアドバイスに従い雑魚狩りを担当していた。


「【あタッチ】」


 ここまで接待プレイによりレベルを上げてきた彼女であれば。


 獲物を見つけた──牙を剥き出しに駆けてくる月ウルフに対して、両手を着いたのは土下座ではない。


 スキルのコントロールが上手くできないならばと、接触した手で月面に眠るチカラを引き出していく。地をデタラメに隆起させて飛び掛かってきたウルフの下顎をラッキーにも砕き、見事なんとか返り討ち。


 疲れた身体の汗でべたつく白髪をささっと整えた。


 そんな一呼吸の黒スーツに、電光石火のスピード上空から近づいてきた飛行物体が放った、チョコチップな弾丸。


「【自・ホトプス】【吸・ホトプス】」


 ぶわり、彼女の目の前にいきなり現れたカーキジャケットの男。ホットプレートの慣れた歪な構えで彼女を狙ったチョコの弾丸をすべて受け止めていく。


 どろどろにチョコ色が溶けたのは熱された焼けるプレートの上。受け取ったチョコとエネルギーはお返ししなければならない。

 


「真上の編隊はッ【傘・ラキプス】!」



 コードを伸ばし掲げたプラグの先端は宙へと逆さ傘のように広がる青い雷撃を放った。ビリビリと痺れて堕ちながら、厄介な飛び道具を放つチョコチップクッキーの編隊は爆散。



「すんません1人でのめり込んじゃって遅れました! 大丈夫すか葬儀屋さん」


「……はい、おかげさまで!」

 

 あまりにもレベル違いの激しい戦闘に灰色の瞳は驚き確認していく、振り向いたカーキジャケットの青年と──周囲に敵はいない。


 ひとつ大きく息を吐きながら。


 やがてMMOに先行した2人からの連絡チャットが入った。




──MMO──


夏海:【SR】身体能力UP1.2倍30秒


掃除屋:【R】電子固定レーザー砲台


葬儀屋:【SR】金平糖手榴弾


狩野千晶:【UR】パーティーシルド


夏海:チョコっと飛んで走ってらびっとなハウ巣見つけたよ!


狩野千晶:あざっす! 分かりました! ゲートキーパーごと狙撃するんで夏海さん掃除屋さん射線から離れててください!


掃除屋:わかった。あとの掃除はまかせて


狩野千晶:【FS】焼き肉モンスター



 ミニマップに夏海が示したマーカーがある。遠方からは死のダンジョンのシステムの生電子のジャマーで不思議な事にその存在を目視できないだが確かに存在はしている。



「【吸・ホトプス】ぅっ、ッ!! 【出・ホトプス】!!!!」



 モンスターから電子エネルギーを吸収、そして放たれた白い閃光が──ホットプレートを叩きつけるように一直線に伸びていった白線は月面を斬り裂いていった。


 届かせた白が巣を真っ二つに燃やし、臼と杵で小麦粉をかき混ぜぺったんと突いていた可愛らしいダークラビットとホワイトラビットのゲートキーパーたちが白い爆炎に呑まれて滅されていく。


 遠距離からの狙撃で見事、らびっとなモンスターハウ巣を、破壊。


「夏海さんのスキルもまけて……これにはちょっと負けたかなァァ? 月面斬りはァ、チョコっと!」


「アレが丘梨栄枯パーティーのホットプレートのチカラ……えれほわにもプラグはある……あとはスキルさえあれば千晶みたいに、うんっ」


 月面斬りのイチゲキで巣は壊滅し、お菓子な部隊が湧き出ることはもうない。


 パーティーは雑魚の殲滅を夏海と掃除屋に任せそのまま大勝利を収めていった。




▼▼▼

▽▽▽




 バトルを終えてのひと段落。月面で飲むコーヒーは丘梨栄枯が以前欲しがっていたもの──次にダンジョンに向かう事があれば狩野千晶が唯一これだけはと、用意していたモノであった。


 香に見繕ってもらったキャンプ用コーヒーセット。事前にケトルに沸かしていた湯、小型ミル機でミルした豆、コンパクトなドリッパーに湯を注いでいく。


 用意した、重ねて収納していたシリコン製のコンパクトコップを色とりどり4つ。


 狩野青年のハンドドリップで出来上がった、香り立つ、コーヒーをみんなで飲んでいく。


 死のダンジョンの戦闘後、敵を一掃し星の降り注ぐようになった月面で飲むコーヒーは格別に美味い。


 今日は掃除屋と夏海ノ香水のコラボ吐い信。スペシャルゲストを招いてというお題目であったが────。



「でも私もここまで来て良かったんでしょうか? すごく皆さんレベル違いのご活躍ですので、初心者の私が……」


「なんか今回はみんなスキルの試運転みたいなものみたいですし、全然良いとおもいます! まりじ先生も葬儀屋さんもずっとシガ……おっと……居るよりそうした方がいいと言っていましたし。あ、ちゃんと俺帰りまで守りますんで! こいつ盾役なんで任せてください!」


「それは……ありがたいです狩野さん」



 深くお辞儀。


 やがて顔を上げて、葬儀屋の彼女は青年を見て笑っていた。




AIまりじ:これが君たちのスキル分析評価だ。


葬儀屋くん:


【あタッチ】変異系。ステージ地を隆起させて敵を攻撃ガードするのがメイン。見たところ人体にも作用可能のようだが……扱いが非常に難しい、帰ったら実験だな。


【うつ】射系。灰色の弾丸をうてる。電量の消費が非常に激しく使えない。回路が壊れているのか? フフふ、ダメだな。ハッキリ言ってゴミスキルだ。レベルの低い今はまだ使わない方がいい。


【魂とろーる】変異系。射系スキルを少し操作する事ができる。使えない【うつ】とのコンボで使うのか? 敵の放つ矢に対しての対処で使うのか? 今はまだシンプルな葬儀屋くんのしょぼい技量じゃ使いこなせないと思うが……似たようなスキルによると相当な練度が必要なようだな。


AIまりじスキル分析評価システムはまだ実験段階だから、あまり真に受けるなよ。




 宙に浮かべた青いビジョンに葬儀屋がこれまでの戦いで使ってきたスキルを分析評価したデータが表記されている。狩野生徒くんを参考にMMO同様にまりじが少しぼこぼこチューブを魔改造した機能の一つである。



 酸味のある苦いコーヒーを飲み、葬儀屋はわずかに苦い表情で一言。


「どれもパッとしないですよね……」


「いやいや! い、良いスキルですよ3つも! 葬儀屋さん、俺のより夢のありそうなスキルで羨ましいっすよ! 俺なんてホットプレートですよ!」


「いえいえ……狩野さんはホットプレートでも滅茶苦茶お強いので……何度も初心者の私を介護させてしまい申し訳ありません」


「え、えっと」


 おどけた自虐に対して少し自虐気味な真面目な返答をされ、狩野千晶は黒髪をかきながら次のレスポンスに困ってしまった。




ぼこ:チートがなんか言ってる


ぼこ:これはひどい


ぼこ:初心者の心をへし折るチートじみたホットプレート


ぼこ:もうやる気なくなってるやん!


ぼこ:そらあんなん隣に居たら終始クソゲーやろ


ぼこ:金ポデよりは使えるからセフセフ


ぼこ:謎の金ポデ被弾


ぼこ:そこまで悲観せんでええやろ…


ぼこ:これまで戦い見るにくっそ使いにくくはある


ぼこ:こいつの場合まず釘バットからおかしい


ぼこ:どんまいジェネリック丘梨


ぼこ:がんばれジェネ丘


ぼこ:この業界ノッポしかおらんのか


ぼこ:劣化栄枯気に病むなよ


ぼこ:偽丘梨にしては頑張ってるよ、うん


ぼこ:慰めるフリして散々な言われよう


ぼこ:真っ白に燃え尽きた丘梨


ぼこ:タイムリープしすぎた丘梨


ぼこ:丘梨栄枯(お線香の臭い)


ぼこ:おもんない方の丘梨


ぼこ:↑せやろか?


ぼこ:↑チンキス!




「……いえいえ。ありがとうございます、死鳥舎様方のおっしゃる通りです。レジェンドな存在、つよく美しくスタイルも抜群な丘梨栄枯様と一介の葬儀屋の私が比べられるとは彼女に大変失礼ですので出来ればやめていただきたく……私など遠く及びませんので」




ぼこ:性格のいい栄枯


ぼこ:↑ええ、ふふ


ぼこ:↑お前じゃない


ぼこ:↑チンキス!


ぼこ:そない自虐せんでも?


ぼこ:肩の力抜けよ


ぼこ:めっちゃアゲるやん、ヤツを


ぼこ:同じノッポでも天と地の差よ


ぼこ:丘梨から邪気を抜いたらコイツになる


ぼこ:レジェンドな存在? つよく美しくスタイルも抜群?


ぼこ:↑何かおかしいところがあるかい?(31)


ぼこ:↑チンキス


ぼこ:他人を上げて自分を落とす。すると自分も何故か上がっている。日本人の手段です。


ぼこ:リスペクト丘梨!


ぼこ:さすが丘梨クローン、ヤツの悪の心がパージされている。




 各々流れる星をみつめ休憩していたメンバーが葬儀屋と青年の元に集まってきた。


「まぁまぁ、掃除……ちがた葬儀屋ちゃん。夏海だって苦労してきたんだから、これからこれからチョコっと苦労が足りんのよまだまだ」


「全くはいそのようですね、ふふふ。私死のダンジョンをスキル次第でどうにかなるものと勘違いしていたようです。今日は色々と間近で探索者様方のすごさを学ばせてもらいました、すごく良い経験です」


「うーん! このまま夏海ノ香水に入って欲しいぐらい人が出来てるよ」


 青年の足元に、大耳をぱたぱたと元気に走り迫ったえれほわが鼻を巻き付けてきた。


「うおっ!? ちょちょアソコはァ!!」


 ゆっくりと掃除屋はコーヒーとシフォンケーキ片手に近付いてきた。佇む葬儀屋の彼女を見つめて──


「どんなスキルにも意味がある。弱いスキルだって思いがけない使い方があるのかもしれない。でも……自分自身強くなりたいと思わないと、きっと手に入らない……たのしんでいる? 憧れと圧倒的な差を感じる? それも含めて諦めずたのしんでほしい。死のダンジョンはまだまだ先のながい、あなたの冒険だから」


 手渡したふわふわとした個包装された甘味のひと切れ。見つめた灰色の瞳はしずかにソレを受け取った。


「チョコっと……滅茶苦茶いい事言うじゃん!」


「いや、えっと、まじ沁みます! 掃除屋さん! ほんとそうですよ! まさに! えれほわ遊んでやるからちょっと待って待って!! ──────」


「はい。いえっ。……わたしの冒険。なんだかものすごくうれしい気持ちでいっぱいのようです」



 騒がしくなった月面に沸き起こった4人と1匹の笑い声に、死のダンジョンの初ダイブ、探索者としての経験をしていく葬儀屋円山塔子は月面で食すシフォンケーキの甘さと食感を相性の良い苦味で流し込んでいった。




ぼこ:なんやこれ


ぼこ:これはもう一つのきれいなものがた


ぼこ:↑チンキス


ぼこ:ホットプレートだって掃除機だって、チョコスプだって


ぼこ:泣いた


ぼこ:性格の良い掃除屋


ぼこ:このパーティー性格がよすぎる


ぼこ:独裁者が居ないだけでこうも…


ぼこ:もうこれで行こうぜ?


ぼこ:丘梨よりえれほわでよくね?


ぼこ:だな


ぼこ:だな


ぼこ:ぱおん


ぼこ:↑ちんきす!


ぼこ:邪悪なノッポと変なドイツ人とイラナイツとカレー屋の親父なんていなかった。いいね?


ぼこ:途中離脱仙人を忘れるな


ぼこ:仙人はいいやつだから


ぼこ:よく見りゃ前より顔面レベル高い


ぼこ:ここに俺の栄枯お姉さんがいたら最凶なんだけどなぁ


ぼこ:↑はいチンキス


ぼこ:すげぇ、おだやかな朝みてぇ


ぼこ:↑チンキス!


ぼこ:ほらっ、小鳥が鳴いてるよ。


ぼこ:小鳥「ちんきすっちんき」


ぼこ:↑バードチンキス!


ぼこ:小鳥遊!


ぼこ:丘梨!


ぼこ:ホトプレwithお姉さんず物語


ぼこ:俺も混ぜて!

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