第147死 強くなりたい
▼スキルバトル演習場▼
本日も変わり映えのない晴天の訓練日和。
巨指は卵を摘み割りちいさな机上にあるほかほかのご飯へとその中身を落とす。
金髪白衣は醤油をどぼっと垂らし、パパッと混ぜて、箸でかき込んだ────右手を天にサムズアップし巨人は見えない帽子の鍔を右手で直した。
本日の精密動作訓練が終了した──ハッチを開きスキルロボットEGGから降りて来た狗雨雷叢雲。
狗雨雷に呼び出されていた狩野千晶は、バスタオルとカフェオレを手に持ち彼女の元へと向かった。
話の内容はというと。
現在死のダンジョンへと絶賛ダイブ中の連中を除いた一部の実力者と有望な探索者たちをこのリアルシミュレーター市街地Bに彼女はリストアップし集めた。
中でも今回は女性探索者が多い。これは電境技術開発部の明智マリアからの事務局長への頼みであった。バベルBのホテル内には志願した女性探索者を優先して集め住まわせる。環境適応生活実験とスキル実験を兼ねた意味合いがある。夏海ノ香水だけではなくもっとサンプルを集めて実験を行いたいという事である。
「────という事です。DODOの職員としてやるべき事をやってください、私も不幸なことに事務局長でありながらコレの操縦に付き合わされているのですよ」
「え……えとハイ……」
タオルを首にかけ事務局長が見上げた聳え立つ灰色の巨人。まだ見栄えするカラーリングも施されていないソレだが、着実に中身はテストパイロットの要望に応えたモノにブラッシュアップされつつある。
「フン、探索者のスキルが今よりパワーアップするというのであれば手段は問いません。難しく考える必要はありません。双方にメリットのある事です、あなたも吐い信者丘梨栄枯のように強くなりたいのでしょう」
「そすね……俺もっともっと強くなって栄枯さんのあいた背中ぐらいは守れるようになりたいです!」
「……では、頼みました。少し過酷な仕事かもしれませんがあなたに任せました」
「ハイ!!」
受け取った市販のカフェオレをストローから一口、少し甘すぎたが牛乳で割れば丁度いい。彼女を迎えに来たエスト電機の荷運び車に乗り込みどこかへと去っていった。
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▽▽▽
スキルの実験といっても何も彼は研究者から知らされていない。だがまたも────
▼バベルB(狩野千晶の部屋)▼
「ちょちょちょっとま──ぶまっ」
「あの科学者は言っていた、半信半疑だけど強くなれるなら」
訳も分からずこうなっていた。白いふわもこの綿帽子がトレードマーク、知らない女性がいきなり狩野千晶の部屋に侵入してきていた。
「あんまりさわがないで」
腹に座っていた彼女は、ずるりと後退し──青いデニムの尻でのっかった。
「同じスキルならアイツより私の方が上手く」
「私はパクリじゃない、パクリは許さない……おねがい暴れないで」
午前0時8分。突如部屋に侵入した掃除屋に襲われてしまった狩野千晶青年は、もがき脱出をはかるが────。