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第141死 パフェキス(赤)

 見えてきた深緑色の軍用テント。なぜこんなところにテントとプールが? と訝しみつつも女は白い制帽を再度整えて事前の連絡で招かれたその中へとはいっていった。




事務局長くん:


パフェキス(青)→パフェキス(露)♡


パフェキス(黄)→パフェキス(赤)♡


パフェキス(緑)


パフェキス(苺)→パフェキス(チョコ)♡

パフェキス(香)♡


パフェキス(白)




「事務局長、キミの深層スキルのセカイはこうだったか可愛いらしいな」


「下らない事は要りません明智マリア。スキルなど個人の深層でも本質でもなくデタラメに与えられたに過ぎないものです。今は役に立つデータだけを収集してください」


 狗雨雷のマイライフNTカードを事前にまりじへと貸し与えて、自身のスキル実験の経過と結果のデータを取らせる指示をDODOの雇われの身である彼女に与えていた。


 豪華絢爛なパーティー会場には黒いシルエットの男女がいる、女は色とりどり鮮やかな口紅で唇を飾り黒いドレスを纏う、男女ペアとなり踊っていたり談笑をしている。やがて交わり汚れていく黒いシルエットたち。


 狗雨雷叢雲のお洒落な深層スキルのセカイをライブ電子盤に簡易表示。スパコンの画面に映し出されたものと同じものを、まりじに手渡されたパッドの画面で狗雨雷は目視確認した。



「フっ、わかっているよ。役に立つデータね……そういえばな狩野生徒くんのスキル彼の持つスキルの特徴が分かったぞ」


「……それはなんでしょうか」


「炎だ」


「……炎?」



【味・ヤキプス】

【円・ヤキプス】

【焼・ドナプス】

【愛・スローション】

【ヒシャマス】

【パフェキス(赤)】



「これらのスキルはチカラの差はあれどいずれも同じ炎の性質を持つ、つまり狩野生徒くん彼の持つ深層スキルは馬鹿げたホットプレートではなく【炎】ということだ、フフ」


「……そのような事が分かったところで、炎などありふれたものでは」


「フッ、事務局長あなたは他人というものに、いや部下である死のダンジョンの探索者たち個人のスキルにはあまり興味が無かったようだな」


「探索者ランクにはスキルのチカラや特異性で評価する部分もありますが、評価は主に日本十死の面々とその他戦闘のスペシャリストに任せています。何をおっしゃりたいのですか?」


「【炎】のスキルを持つものは少ないという事だ。キミ自身も氷、雷、風などDODOのトップに相応しい程の恵まれたスキルをたくさん持っているが炎の性質だけは持ち合わせていなかった」


「……それがなにか? 炎なら丘梨栄枯も使っていたはずですよ。何もかもが特別な彼女から彼に遺伝しただけではないのではないですか」


「そうだな彼女の習得したスキルどんぐり(黒)の本来の威力を超えた爆発力やカードの凄まじい効力もまた特別なのだろう。その可能性もある。しかし彼女の死のダンジョンに与えられた最初のスキルは【チンキス】拘束系のスキルだ。拘束系は強力でありDODOに属する探索者にも程々の数存在するが私は中でも彼女の持つスキルは特別に感じた。そして私は既に目を付けていた、これはミズイロ生徒くんの【スローション】と性質が似ていると。さらに」


「……私はあなたの狩野千晶生徒ではないのですよ、明智マリア」


「フッあっはっは。それはすまなかった」


 話し出すと説明モードに入ると止まらない、椅子に座り振り向いたまりじはまじまじと狗雨雷を見つめながら。


 狗雨雷に遮られてしまい我へと返ったまりじはやがて笑い出し、ぐるりと椅子を一回転、白衣を金髪を靡かせそれでリセットをしたつもりなのか。


 さらに、座るか? と空いていたキャンプ用のローチェアに手を広げうながしたが、狗雨雷は軽く拒否しその場に姿勢を正して突っ立ったままを継続。


 それを見てまたまりじは笑い出したが──その少しイラつく笑い声に被せるように発言した。



「ですがせっかくです、最後まで彼女丘梨栄枯のスキルに関する説明をしてください」


「あっはっは! ……だと思ったよ。先ずは水井露生徒くんの【スローション】これのデータはたくさん取れている。──死電子だ」


「シデンシ?」


「分かるだろ? 生電子に対して優勢な電子の事だよ、生に対しての死、そう仮称したがお洒落だろう?」


「……」


「あっはっは! 沈黙は笑いと捉えるぞ。んん、つまりだ。キミの【パフェキス】各種のように死のダンジョンの探索者は原則1人ひとつの共通点、唇、キス、接吻あるいは愛? などの深層スキルを持つと考えられる。そして丘梨栄枯に関して与えられたスキルが【チンキス】次に黒化したLRカードのネタスキル【どんぐり(黒)】その次がレベルが上がり覚えた謎のスキル【幻闘(二代目)】、彼女自身使用していなかったとされる謎のスキルはさておき緑の炎はおそらく狩野生徒くんから受け継ぎ【チンキス】多量の死電子を瞬時に操り発揮する拘束系のスキル、つまり仮称した【死電子】が彼女の深層スキルであると推測されるわけだ! すごいとは思わないか!」


「……なるほど分かりました」


「本当に分かったのか……? あっはっは!」


「その笑い方をやめなさい」


 何故か白い制帽の鍔をしきりにさすりながら、ぎゅっと正して発言。


 何故? 急にすこし怒っているように見える事務局長の態度と発言にまりじは目を見開き驚いた。


「むっ? おい、事務局長それはひどいぞ。なにも笑い方に嫌悪感を抱くなど」


「私に対してそのような笑い方をしていなかったはずです」


「あっはっは! そうだったか? だがそんなに強く指摘されると恥ずかしくてまた閉じこもってしまうぞ私が」


 指摘したが金髪白衣は余計おどけているように見える。


 狗雨雷は抑えた息をしずかに長く吐き。


「……すみません、失言でした」


 制帽の角度を少し右手でつまみ下へと下げた。


「あっは! フフふ、なに気にするなお互いこれからはもっと仲良くなれそうじゃないか」


「私は目的のためにただ、今はチカラを蓄える時期というだけです、それに協力さえしてくれれば構いません」


「もちろん協力するさ、あっはっは! 気前の良いしっかり者の雇い主を私も手放したくはないのでね、フフふ」


 精神が不安定、この方は一度外に引っ張り出す必要がありそうですね……。


「ところで先ほどの丘梨栄枯のスキル、深層スキルを死電子とやらに断定するのは早いのでは」


「もぐ……ん? どうした。このまりじ先生がなんでも答えてやるぞ、もぐっと……はむふむ」


 もぐもぐと向かいのまりじはエクレアを食べている。さっきから気になっていた机上やマットに置かれた大量のエクレアの包装とゴミ。


 吐こうとした溜め息はDODOの事務局長として飲み込み。


「あなたの説明してくれていた理論では【吸・ホトプス】【出・ホトプス】【識・ホトプス】丘梨栄枯と狩野千晶が性交渉をして手に入れたと推測されるこれらのいずれかまたはいずれもが彼女丘梨栄枯の深層スキルに関連するものと言えるはずです。【炎】についても彼女は今までのどの探索者よりも特別です、狩野千晶と比べてもその威力とチカラの差は明らかです白龍をイチゲキで仕留める程のチカラを持っています。レベルアップ速度も他の探索者と比べて異常です、丘パ自体も彼女の特別なチカラの影響で急速なレベルアップを遂げていると考えられます。これは彼女自身の元々に持っていたチカラと言えるのでは? それが特に才能の無かった狩野千晶と性交を重ねることで混ざり合い彼自身や彼女のチカラも膨大に膨れ上がり」


「……フフ、ふ、あっはっは! ど、フ、どうしても丘梨栄枯そうでないと気が済まないのか? あっはっは!」


「──フム。さっきも言ったようにその可能性もありだな、となるとやはり彼女は深層スキルを複数持つ特別でスーパーか?」


「馬鹿げた笑いより本業の方をしっかりしてください明智マリア、研究職でもない私に指摘されるようなモノに高い研究費は出せませんが」


「あと散らばるゴミを片付けなさい。それにそのようなモノばかり食べて座りっぱなしでいては早死にします」


「手厳しいな事務局長……フフ、ふ、ふ、くっく……ぁくっは」


 馬鹿みたいな笑いはもはや無視。やはり精神に異常をきたしているのでは? と狗雨雷叢雲は溜め息を吐きながら逆に心配をする。


 咽せて紅茶を慌てて飲むまりじを捨て置いて、軍用テントから抜け出し外へと出ていった。


「まったく異常な事を解き明かし研究していく内に自身もそうなっていてはかないません。とりあえず彼女の面倒をそこらの出張メイドにでも見させるべきです」


「……丘梨栄枯、そろそろ休んでばかりいるあなたを迎えにいきたいところですが…………私とて疲れ誰かを頼りたくなる事もあるのですよ──んーーっ……」


 帽を脱ぎ、綺麗な黒髪はキャンプ場の風になびいていく。緑の景色に腕を天へと伸ばし深く呼吸をする。辺りを見渡すと数々のキャンプ用品に透明なプール、何やらここで楽しんでいたであろう光景が浮かぶ……しばし独りで考え込んでいると──荷をかかえ、ぽつぽつと集まってくる者たちが灰桜の瞳に近づいて来ている。

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