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第131死 合同テント

 緑の円柱はホテル【バベルB】と名付けられた。


 何故かまりじ先生が至って普通にブレンドしていたサンプルセカイである市街地Bのランドマークとして存在しているイレギュラーである。


 投げ捨てた1枚のクエストカードが市街地Bの景観詳細データを元に育ち作られた緑の円柱。このセカイの中心であると容易に推測が可能であった。



 そんな市街地B、バベルB近辺での生活環境適応実験はまだ続いていた。


 いたって晴天、変わり映えのしない青空の下、バベルBの足元からひろがる少し離れた野原で。


 ベージュ色、円錐型の狭いテントを組み立てて構えた。


 他にも軍用テントと小さい円錐型のテントが設置されてある。その他日除けのタープと風避けの陣幕。


 ホテルでの生活環境適応実験にも飽きてきたところ、マンネリを打破するためにビル群の無いフリースペースとなっているここをキャンプ地とした。


 何故か気合いを入れた香と夏海の指揮の下に洒落たベースキャンプは完成していた。


 何かを見つけて手を引き移動した水井露と青年の様子をモニターで観察していると──


「あれ? プールなんてあったっけ? チョコっと見逃してた?」


「仮にもアウトドア関連の仕事してたんだから私が見逃してるはずはないわ夏海」


「だよね香、ぴょこっとプールが生えた?」


 日除けタープの下で生クリームたっぷりのエクレアを食べ休憩中。ローチェアーから立ち上がった2人が気になる中型プールの方を眺めている。すると軍用テントから出てきた白衣が2人に少し離れたまま話しかけた。


「すまないそれは私がついさっき作ったものだ」


「作った?」


「この市街地Bは生電子の濃度がまだまだ薄いという事なんだろう。君たちがここで生活していくうちにランドマークであるバベルBに蓄積された生電子の資源が増え出来る事がほんのちょっぴりだが増えたというわけさ、この洒落たプールがそのお試しだ。何かとあると衛生上便利だろう?」


「生電子の資源ねぇ……なるほど、国でも市でもしゃしゃっとつくれそうじゃない」


「フフ、国はいらないね。今はこの大掛かりな静けさを気に入っている。だが私も推測するに最終的にはそういう事なのだろう……鋭いなさすがリーダー」


 微笑んだまりじは淹れたばかりのハーブティーを香のもとへと運び、受け渡した。エクレアのマンネリにどうぞということだろう。


「やぁ先生……そのせいでんしってナニ?」


「……夏海生徒くん、君はそんな事も知らずにもう何歳だ?」


「そんなことも知らない27です……」


「フ若いな、授業だ生徒くん!」




▼▼▼

▽▽▽




▼夏海ノ香水のキャンプ飯▼


①ここはオーソドックスにラッキーボーイのホットプレート上でしゃしゃっと肉を焼いていくわ。余ったスペースは牛だけじゃなく、ハムステーキフランクフルト、手羽先なんて盛り上がるでしょ。


②そしてそしてこのオリジナルキャンプスパイスをお肉様にチョコチョコっとかける! まじでナンにでも合うからねぇ。


③オリーブオイルをしいたホットサンドメーカーで8枚切りの食パンに焼いた肉、チェダーチーズ、トマト、辛いペッパーピクルスを挟めば夏海ノ香水特性ホットサンドしゃしゃっと完成ね。




 完成したホットサンドやじっくり焼いている手羽先、食欲のそそる香りに包まれながらキャンプ飯で晩飯をいただいた。


 夏海ノ香水の3人は腰のまだ少し悪いタープ下のリーダーの元に集い新しいスキル連携と新たに手に入れたスキルの確認をしている。手に入れたスキルが必ずしもパーティーのプラスに働くとは限らないそれを分かっていたリーダーの香はスキルの効果的な使い方と間違った使い方を照らし合わせて熟考を重ねていく。



 一方で──



 軍用テント内に再び篭り作業に耽っていた先生の元へとホットサンドを運んでいった。それを受け取り食し2、3度頷いた。何かと忙しい彼女は米より片手で食べれるものが好きらしい。



「もぐもぐ……ん。消失したENのミニチュアワールドがね、気になってね」


「なんかわかったんすか!」


「いやそれがな手元の情報じゃ何も分からないがアレは惜しかったとやっぱり思っていてね。はぁこれは邪推だが個人的に私とENの生徒たちの大事な宝物は……奪われたんじゃないかとおもうんだ」


「奪われた!? ……あ、怪盗藍紫にですか? あいつバランスを乱すのが好きですし暴走を……俺のせい……」


「フ、それもあるだろうか? 大学のスパコンがビリリプツンとなる程だ、目を付けたEN外の誰かに多数のAIによる大学への偽装メールの爆弾、AIサイバー攻撃で負荷を与えられたか生徒教員が偽装メールを開いたかあえなく侵入。侵入した大学の外部スパコンからENのスパコンのセキュリティに対して持ち込んだなんらかの優勢電子を用いて、ビリリプツン、なのかもしれないな。そのようなモノがあるなら私ならそうするな、フフ」


「んー……はぁ……でも正直……これすみません先生、ENもみんなも。仮にスパコンを壊してまで奪うならもっとAIじみた強力なモノを奪いませんか? なんでわざわざミニチュアワールドの変わった性格の奴らを? 扱いづらいですよ?」


「それはだね…………まったく分からないな!」


「え!? まぁそうですよね……」


「フ、刑事じゃないんだ知るかよ。ただまぁそうだな。ENとはエンターテイメントだ、そこに価値があったんだろう」


「エンターテイんメント……」


「こういう心まで機械じみた世の中だ、マッドに正しく進むだけが正解とは限らない。わたしのオモチャが欲しくなったのか? 世代性格デザインシステムに興味があったのかもな」


「とにかくそんな輩は許せないのは間違いない、おかげで大学には戻れなくなった。みんなが慕うまりじ様を待っているというのにな」


「たしかに、そっすね。ENのみんなも……」


「ところで狩野生徒くん、キミ、大学の授業は?」


「……えっと……なんか状況的に……それどころじゃありませんし、え、栄枯さんとENの怪盗藍紫も見つけないと!」


「レールからおおきく外れているようだが、このダメな生徒は私のせいなのだろうか? ……よし、授業だ狩野生徒くん!」


「えっと、ハイ!!」


『ちょっと手羽先見ててって言ったでしょ手羽先ボーイ!!』


「え!? ハイ!!!!」


 耳を貫いた怒声にしたがい大きな返事をした青年はそそくさと軍用テントから抜け出して行った。


 チェアーを回して右手で指差した、その虚空に──長い金髪をかわりにそっとかき上げて、ひとくち。


「美味いな……私も彼女たちのアウトドアの魅力に当てられたのか? このホットサンドの断面のように、混ざり合うのは生電子情報だけではないのかもな。ふふフ」


 茶と赤まだとろけるチーズ色を確認し、カタカタとまたスパコンをタイピングし作業へと戻っていった。

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