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第126死 【2日目】

 フロッピーをお返ししたそのお返しに。


 謎の……おしのびらんど場外までつづき伸びたコースを走り抜けた3人は、走り抜けたご褒美──昼食に鰻&ステーキ重、白焼きセット【甲】をいただいた。




「なにがあったのよここ……ぁむ……うま」


「プロが手裏剣の演目をいっぱい見せてくれましたよ、ええ」


「ゼッタイおかしいでしょっだれが片付けんのよッ寺が穴ぼこだらけじゃない……ぁむ」


「フッ、しっちーにはわからないか」


「はぁ? ナニ言ってんの」


「私にはなにかひじょうに恐ろしい獣や妖との……この境内全体がたたかいのアートのように見えるぞ。殺陣でも演技でも舞台セットすらお構いなしの全力か……素晴らしいな甲賀流の忍者とは! エイコすこしは待たせろよ!」


「ふふ、恥ずかしがり屋のせっかちのようでしたので」


「……ぁむ……なんでもイベントをポジティブに役者病じゃない、セットは壊しちゃダメでしょ。んごくごくっ……はぁ……とにかくもう忍者なんてお腹いっぱい!! ぁむ」



 古い寺の段をのぼった縁側で、ぴんくの砂、咲き乱れる手裏剣の花、マキビシの野を眺めながら3人並び腹を満たした。


 その数刻後、迷惑をお掛けしたと……地元住民からのご好意でおしのびらんどから少し離れた忍者村。忍者ショーの野外ステージの上をお借り出来ることになった。チーム舞台現代版石川五右衛門の役者たちは五味監督の演技指導の下に質のいい稽古ができたのであった。


 そうして充実の一日はおわり──。




▼▼▼

▽▽▽




【2日目】




「うんと、ここかな」


「妖怪博物館」


 午後2時の稽古の時間まではまた、自由時間。おしのびらんど甲賀市を抜け出し甲賀流忍者見習いのあやかに案内されて【妖怪資料館】の目の前までやって来ていた。


 紺色の建物の前で。


「ここにふわもこが……? あやかさん、私を笑わせようと?」


「え、いや……ネット販売は取り扱ってなくてこの中にあるみたい」


「なるほどご当地現地げんていプレミアゆるキャラグッズということでしょうか」


「そんな感じ……かな」


「ふ、行きましょう」


「う、うん」


 栄子とあやかは、中に並び入り──


 滋賀にまつわる妖怪の資料を眺めてパパッと妖怪スタンプを押し通り過ぎていく────すべての妖怪スタンプを集めて館内を歩きたどり着いた。




▼妖怪グッズ専門店【ようかい?】▼




「ふわもこは妖怪でしたか、ふふ」


「あ、種類わたしが来た時より増えてる」


 店内には滋賀にまつわる……まつわらない……妖怪グッズがずらり。2人は栄子の目的であった衣服のコーナーにある、パジャマ。玉藻前(たまものまえ)鳴釜(なりがま)、河童、鉄鼠、雷獣──など。



「では私もこのふわもこを」


「え、同じのでよかった?」


「ふふ、はいやはりこれが耳や尾もなくごてっとしていなく大変シンプルな見た目で気に入りました、寝心地も良さそうです、というか……これを抱いて寝ましたね?」


「だ抱いて……そ、そうなんだ……わたしも直感でそれえらんだけど……なんか忍びみたいだったから」


「ふふ、なるほど。それは盲点でした、たしかにこれなら忍べ」


『すみませんお客様!?』


「……はい? なんですか、これをパパッとひとつもう決まったところですのでおすすめされても他は要りませんよ、ええ」


 これから盛り上がるはずの可愛い歳下甲賀流忍者見習いとの会話が打ち切られてしまった。突然の空気の読めない女店員の横槍に、栄子はすこし不機嫌に向き直り言い放った。


 パパッと返す圧に、おもわず店員はたじろぐが──唾をゴクリと飲み込み床に着くほどの素速い一礼、気を取り直し。


「いきなりお声がけし失礼しました、あのッ服屋のいらぬお節介ではなく!! こちらふわもこダイダラボッチといって玉藻前に失恋し大地に頭突きして琵琶湖をつくったという逸話をもつ、はい資料館にも展示されていた巨大な妖怪がモチーフでまさに……お客様はこの巨大妖怪のイメージ通りピッタリ、ぜひぜひこのふわもこ妖怪シリーズのパジャマモデルに!! なっていただけないかと?」




「「パジャマモデル……?」」




 紺色のふわもこフードにまん丸目玉が2つ、長身はLサイズを手に持ったまま。


 栄子はダイダラボッチ、ふわもこ妖怪パジャマシリーズのパジャマモデルとして店内にてまさかのスカウトを……されてしまった。




▼▼▼

▽▽▽




 時刻は午後7時30分。


 あやかとのお買い物女子デートで目的のブツを買えた栄子は本日の稽古も終わり、宿泊する忍者屋敷の一部屋へと戻ってきていた。


 特にこの後の予定は無かったが、ある暇な来客がやってきていたようで────




 緑のグリッド空間から弾き出され河童は畳に尻餅を着いた。


「────ああぁまた死んだああ」


「ふふ」


「デスⅡ越えられる気しないんだけど丘梨……この天下のおばみんちゃんが……」


「井の中ノでしたね、ふふ」


「ぬぬぬがぬぅ、はぁ……おばみんちゃん背とパワーが足りない説」


 栄子の発動したスキル、幻闘シミュレーターの中で【デスⅡ】を越えられなかったオーバー未惇。赤い龍に串刺しにされ死をひとつ経験し、現世の畳部屋へと敗北の尻餅を着いていた。


「よぉし、もういっちょ丘梨!!」


 そう気合いを充填し直し言い河童はふわもこな水掻きを伸ばした──見上げる紺色のダイダラボッチへと。


 ダイダラボッチ栄子は一瞥し、ワラい歩いて行った。


「今日はもう終いです」


「ええ、なんでなんでぇ」


「ゲームはいちにちいちじかん。大昔の偉い人の言葉です」


「だれだよ!? きいたことないきいたことないィィ!!!! しかもゲームじゃないよ丘梨いい! てか1時間みじかっ!」


 立ち上がった河童ミトンは、紺色の背を追いかけてぎゅっと腰に抱きつき頭の皿を擦り付けている。


 ダイダラボッチはその緑の重りを気にせず歩いていく。道中のスパホを手にし、先輩たちと忍者からのメッセをかくにんしながら。


「私は舞台役者なので」


「丘梨それ本気?」


「ええ。死のダンジョンで吐い信者という役になりきり吐い信するのと同じです」


「そうかなぁ……。何やっても丘梨栄枯になりそう」


「舐めないでください! 丘梨栄枯は私の役のひとつに過ぎませんよ、ふふ」


「そうかなぁ……?」


「チンキス」


「うべっ!? なにすんのさね丘梨ィィ」


「河童は相撲をとってなさい、ええ!」


「ちょと丘梨!? ぎゃああおあああ────」




 チンキスされた河童は3度ほど皿から地につきダイダラボッチに格の違いを思い知らされてしまったとか、体格のちがいを。

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