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第119死 尼崎城、激闘明けて

 尼崎城のその後は──深夜の空の下、ギャラリーがスパホに撮影した映像、音声、撮ったはずの写真はバグったように霞みぼやけて無くなっていた。


「きゃっ」

「あっつ!」

「アチィィィィィ」

「うわっほ!? うわっほ!? ほっほっほほほほおおおおおお」


 突如、城下にある監視カメラはパンッと破裂音のような音を立てたと思ったら一瞬で──スパホが燃えるように熱い。自分の目よりスパホのカメラに熱心だった野次馬たちがアチアチとお手玉をしてしまうほどに。


 がらりと、紫城の石垣が崩れていく。そこには何かが居ると思われ。


 一瞬だけ見えた白いナニかは観客に対して深々とお辞儀をして────ぱんっ、と細指を弾き鳴らして消えていった。


 紫城は一変──キラキラなエメラルドの城へと変わり、尼崎市民たちへのお詫びでありプレゼント、はたまたいい歳をした遊び心だったのかもしれない。


 意味不明な騒動がアレ不思議、人は綺麗なモノを見ると単純になってしまう。ここは兵庫だが大阪。ゆかいな城主が催した何かのサプライズイベントだったのかもしれない。紫よりも美しい、そんなかがやきを纏ったレアな尼崎城を写真に映像に、心に収めていく。




 八尺様、ビッグフット、イエティ、白イタチ、海坊主、グリーンキラー、炎神さまなど記者による取材やSNSでつぶやかれた目撃証言はさまざまであったが、とにかくすらっとしてデカかったというのが共通の認識であった。


 そして後日、偶然バグりながらも残っていたSNSに投稿された一本の映像はそこそこに関西やオカルト好きのコミュニティを中心に話題となった。




▼栄子教本部ですよ、ええ、ひじょうに▼


ぼこ:鬼


ぼこ:阿修羅


ぼこ:キリン


ぼこ:アグニ


ぼこ:クールマン


ぼこ:尼ノ怪物


ぼこ:いいえ、丘梨です。


ぼこ:栄枯やん


ぼこ:栄枯帰ってたうおおおお


ぼこ:どこがやねん


ぼこ:ここのやつら頭おかなしなっとるからな


ぼこ:アレは栄枯カラー


ぼこ:おばみんカラーだよ


ぼこ:栄枯はカラーというよりカレーだからな


ぼこ:チンキスする価値もないんです。


ぼこ:ま、俺たちの丘梨ならアレぐらいできそう


ぼこ:↑お前はできないけどな


ぼこ:↑こういうのを無くしていきたい、ええ、ひじょうに


ぼこ:現実じゃ能力は一般人だろ


ぼこ:たしかに


ぼこ:じゃないと今頃死のダンジョン産の犯罪者続出だしな


ぼこ:一部はそうとも限らんらしいけど?


ぼこ:カードもおじゃんなこの世界じゃ無力、かなしいね


ぼこ:俺リアルでもスキル使えんで


ぼこ:↑なに?


ぼこ:↑なぁに?


ぼこ:↑チンキス!


ぼこ:栄枯ちゃんは尼崎なんかにいない


ぼこ:↑チンキス!


ぼこ:突然アマを殴るな


ぼこ:住みたい町トップ3なんですが……


ぼこ:兵庫ならアマ以外ありえない


ぼこ:大阪近いし便利だしねぇ


ぼこ:俺も住みにいくわ、待ってろおお丘梨栄枯


ぼこ:↑チンキス! じゃなくて普通に通報!


ぼこ:栄枯ちゃんにげてええ


ぼこ:むしろお前らが逃げるべき


ぼこ:丘梨栄枯(31)が犯罪者になってないのを俺死鳥舎は祈る


ぼこ:てかはよ帰って来た報告しろや丘梨ィィ!!




 戦闘の後は銭湯。大人の女性が汗をかいて疲れたのならばそれが1番いい。


 色々とじょろった一回り年齢のはなれた娘も連れて──


 人は少ないようだ。シロく湯気立つ静寂となつかしさの中に、丘梨栄枯とオーバー未惇、つい先程まで殺し合いをしていたはずのふたりが広い湯船を共にしている。



 いきり勃っていた触覚はしずみ、湯に沈み、頭の上には白いタオルを畳み置く。


「ぶくぶくぷくぷく────修行なかま?」


「ええ、ひとりじゃ怖いので」


「なにそれ……」


「あなたは強いですよね、オーバーミトンふふ」


「おま…………おかしいよおかなし……ぶくぶくぷく────」



 修行なかま。死のダンジョンの吐い信のときのように妖しく微笑む丘梨栄枯に、負けっぱなしのおばみんは訝しむ苦笑いを浮かべて沈んでいく。


 最初に振り回したはずが最後には振り回されている、丘梨栄枯かのじょの目的がわからないおばみん。


 だが今はリベンジマッチよりも、彼女のことをもっと知りたいと一緒の湯で彼女たちだけに分かる会話を消化しながら身体と心をあたためあっていく──────。

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