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第113死 尼崎と堺。それぞれの休息

 尼崎アスレチックパークJIGOKU、地獄のステージを突破してきた大人女子栄子は煌めく汗を質の良いタオルで拭き、アイスを食している。


 ここは7つのステージを突破した者だけに解放される地獄の中の天国エリア、お値段は驚異の一律100円価格。黒と赤で染め上げられたJIGOKUタオルやハンカチその他グッズなど。これが目当ての客も多いのだとか。


 地獄のアイスは週替わり、今週はブラックチョコとストロベリーのミックス、そこに4種のジャムソース、梅ジャム、ミルクジャム、オレンジジャム、虎ジャムから一つを選べる。


 間違いのないミルクジャムを選んだ栄子、運動後の冷たいアイスはべらぼぅに美味い。長椅子に腰掛けタオルを首にかけクールダウン。


 そんな1人で涼む彼女の前に、黒いジャージを着た背の低い80は超えているであろう……お婆さんがアイスのコーン片手に突っ立って、じっと見つめていた。


 その気になる視線に見つめ返した栄枯。皺の入ったお婆さんはアイスを舐め舐めと、減らしていく。


 向かい合い構わず甘味を舐めていく栄枯。お互い笑う事もしない謎の静寂を共にしていると、やがて──



「あんたひとりにならんほうがええなぁ」


「私ですか? なぜ?」


「あんた今にも死にそうじゃあ」


「ふふ、そうなのですか?」


「死にたいとは思わんことじゃぁな」


 そう言いつつ、ゆっくりと栄子の隣に座っていた。


「そう思ったこともありましたっけ? なぜ思ってもいいじゃないですか、リアルに飽きたのならいつ死んでも」


 また舐めていく黒と赤のアイスは減っていく。パパッと言葉を返す栄子に対して、老人はいたってマイペースな間で口を開く。


「死は乗り越えるもんじゃぁ」


「乗り越える……失礼ですがもうそろそろなのでは? 死ぬ前に死に場所を求めるべきだと思うんですが、ええ」


「ほんとうに失礼じゃなぁ。死にたくても自分の中にある光に起こされてのぉ。もう三度じゃ、三度しんで1度きりを生きておる」


「それは死のベテランということでしょうか、ふふ」


「そぅじゃのぅ──ん、あんたの瞳の色は────キラキラ光っておる…………また死が遠のいたんじゃぁ、見なければ良かったのぅあぁやだ、やだ」


 栄子の黒い瞳をじっくり数秒覗き込んだお婆さんは腰を上げ、減らしたアイスのコーンを口に詰めてその場をゆっくりと去っていった。




「呪われた私が光っている? ふふ、お婆さんの戯言ですかね」




 右手に溶けていくアイスに気付き、急いで溶けた部分を補修するように長い舌は舐め上げた。その様子を通りすがりの男性に見られたが──かまわず。


 妖しく微笑みながら舐め上げていく彼女。無敵の栄子を見つけてしまった男性はアイス片手に、その瞳にたじろぎどこかへと急いでいった。




▼▼▼

▽▽▽




 吐い信はまだ続いていた。緑のマッドな雰囲気は無くなり、普通の白い明るさを取り戻していた。



 緑色の多機能ベストを脱がして、黒いシャツをめくり上げていく、ぴっちりとしたエスニックなレギンスはずらしハンケツ状態にし。


「えっと、ここですか?」


「あぁそこ、そこ貼って」


「はい……」


 手に持ち伸ばした湿布を貼っていく。青年は丸椅子に腰掛けたお姉さんの指示通りのポイントに。


「あたたたふぅぅ……助かったわアオリボーイ水もちょうだい」


「あ、そうっすね! すみません持ってきます!」


 香お姉さんの細い腰に4枚の湿布を貼り終えた。激しい戦闘で腰を痛めたお姉さんの看病することになってしまった青年は、動けない患者の次の要望で水を取って来ることになった。


 何か良い匂いの立ち込めてきた、広い研究室内を移動していく。


 突如、ガッと、カーキのジャケットの両肩が捕まった。


 目の前にいるのは、近すぎる……モジャッとした金髪。見たことのある全身ヒョウ柄の男に痛いぐらい強く掴まれている。



「たのむその黄色いスポーティー売ってくれ亀ガキ!! 三万、イヤ、7万出す!!」


「ええ……なんで」


「たのむ! 同じやつの新品買ってやるから!」


「どゆこと……」


 唾を飛ばしかかるぐらいの勢いで青年の履いている黄色いスポーティーを熱望し、あつく説得するように肩を揺らしていく。


「真っ二つお姉さん特製の深夜の焼きペペロンチーノできたかもじゃん?」


「おっ良い匂いだな。出来たか、ミズイロ生徒くん」


「味はわからんかもじゃん」


「なぁにこの匂い、私のブレンド通りにやれば間違いはない」


「おぼ……おご……やきそぁ……」


「ちょっと水まだ!! しゃしゃっと!! がっ!? あたたた…………」


「くれなきゃ超速で盗むゾ亀ガキィィ!!」


「ええ!? ちょ!! も、もうあげますから離れてくださいって!!」


 お使い途中でチンピラに捕まってしまった青年、ソファーでうつ伏せに尻を上げてダウン夏海、腰を痛めたリーダーは丸椅子のコマを走らせて移動していく。


 ペペロンチーノの良い匂い。ニンニクと唐辛子の、深夜のイケナイ誘惑。鉄まり様ブレンドのソースを水井露生徒が完成させた。


 リアルシミュレーター内、激闘の後の裏舞台、現世にて生吐い信はつづいている。




ぼこ:なにやってんだい?


ぼこ:これいる?


ぼこ:いるんですよ


ぼこ:これが本番


ぼこ:なんだこいつら……


ぼこ:介護な件


ぼこ:お姉さん介護ルーム


ぼこ:壊れかけのお姉さんしかいない


ぼこ:これがホトプレの未来


ぼこ:壊したお姉さんは直さなきゃね?


ぼこ:直せないのも居る気がするが……


ぼこ:焼きペペロンチーノ


ぼこ:へぇ焼きペペかぁ


ぼこ:なんつぅ時間にやっとんねん


ぼこ:パスタonホットプレートスタイル


ぼこ:丘梨栄枯リスペクト


ぼこ:栄枯のホットプレートが焼きペペに寝取られてる!


ぼこ:言うほどホトプレでパスタするか


ぼこ:簡単だからねぇー


ぼこ:ハーレムやん


ぼこ:すげぇえっちで美人なお姉さんしかいねぇ!!


ぼこ:チンピラを忘れるな


ぼこ:こんなハーレムを羨むな


ぼこ:ぜんいんチンキス!

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