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第101死 セカイハイ→???

 じゅーじゅーと、網に焼けるのは一面に敷かれた肉。青年がどこぞで見たことのあるフルプレートスタイル。


 地上から上空929m付近で食す焼き肉は景色代も込みで値段がべらぼぅに高いが旨いと評判である。まだまだ未完成なこのサカイ天通(てんつう)ポールタワーだが、DODOや民間会社の所有するドローンの住処となり、一部の人の住処となるのも時間の問題なのであった。


 青年と彼女は、この3S星型の層地の端っこの焼肉店で、ガラス張りの同じ景色をみている。


「なんか……死のダンジョンより生きた心地がしません」


「はむはむくちゃくちゃハフハフぅ……ッにゃははそうなの? ホトプレぇ高所恐怖症かい?」


「いやそんなわけでも別段ないんすけど……本当にミライここで人が生活していくならって考えると……見下ろしてまた帰りたくなってしまうんじゃないかなって」


「もうっなんで帰りたくなるのさぁ、美少女超人気吐い信者と個室焼き肉だよ最高じゃん」


「あははこれは最高に美味いです。でもなんか俺はバランス考えちゃいます、じゃないとこのポールも折れちゃうんじゃないかなって?」


 青年が焼けすぎる前に取って行ったタン。おばみんにより次々と投下される肉のバラエティーはまた網を覆っていった。


「そこに隙あればソーセージィィ!! ダメだよぉホトプレ、リミッターなんて本来ね、そんなものはパパッと捨てようぜぇ! そだホトプレの家族は?」


「いますけど……5人兄弟なんで親もそこまで手が回ってないというか……あはは、連絡はしてないすね……」


「にゃはは子沢山だねぇ、うらやまだねぇ、でも大変だろうねッ。美少女お姉さんから枕営業でむしり取ったお金で親孝行兄弟孝行するといいよ!」


「マクラではないすけど……あー、たしかにハイ!」


「そんでね全てを捨てるんだよ」


「えっと、捨てる……?」


 おばみんは笑顔で青年を見つめて、ぱっと花を開かせるように両腕を円く広げてみせた。そして割り箸で青年をつつくように、笑顔のまま語り出した。


「そうだよ感謝してwinwinで捨てるの、そしたらもっともっとリミッターもうずうずしてくるのわかる?」


「……えと」


「5人兄弟、長男? 次男? 末っ子? なんであれね、もっともーっと高く本来ならもっと高くホトプレも私みたいに飛べるんだよ? だからね、そんな愛しい人たちにさようならって心では思っておけば、いつでも純粋に振り返る事なく戦えるでしょ?」


「えと俺はまだ……そこまで深くないっすね……とりあえず……そうだなぁ、お母さんにはもっと良いソファーとテレビをお父さんには電気自動車と本棚を、兄ちゃんたちには……なんだろう? やっぱお金? スパコン?」


「にゃははいい家族だねぇそうだよたくさん愛してたくさん与えて纏わりを捨てて、そうなの! さいごに──」



「──ん」


「ど、どしたんですか?」


 ガラスの向こうを見つめ下ろしたまま固まった彼女は、そっと箸をタレ皿の上に置いた。


「ホトプレ……焼肉デート払っといてぇ!!!!」


「ええ!? ちょと」


『ドッツまで自力で降りれるでしょーーにゃはははーー』


 突然に机を揺らし店から出て行ったおばみん、忘れかけた黒いパーカーをぶん取り羽織り直しながら。青年の目から彼女の姿があっという間に無くなってしまった。


 あまりの突然の出来事に青年の伸ばす右手では止められもせずしばらく唖然。しろい煙が先程よりも立ち込めているのにも気付かず。


「な、なんだっていう……?」


「──ん?」


 左から右に微かな──そよ風が吹いた気がしたが、窓ガラスの先には何もない。


「建て付けが悪いのか……? ──」


 じゅーじゅーと、、、くさい。


「ああっ! 焼け過ぎてるぅーー!!」


 白い煙は上へともくもく立ち込めている。青年は無事であろうソーセージとカルビと豚バラの住人を皿へと優先的に避難させた。

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