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第99死 EN

 帰宅後の2日目は情報収集から始まっていた。


「じゃあENのみんな、ほんと来てくれて助かったありがとう! なんか俺……こうやってみんなと話せてめっちゃうれしかった! 思っていた以上に!」


『狩野くんがこんなに話す人だと思わなかったよ、また大学でねー』


『めちゃストレートな感想にびびる』


『ぴゅあ男子かな?』


『ふふひ、まぁ悪くなかたね』


『急にビ菓子しようぜなんておもてたキャラとちがてびびた!!』


『まぁうちらまじでイマ暇人だしね』


『まさかの草食男子からのおさそい、これは予想外やけどいいものだ?』


『ENは隔離されてたもんねー』


『大学からも隔離、生徒も隔離、ENです』


『あははは』


『また集まろうよー』


『このぐらいの距離感ならありっしょ!』


『あはは言えてる』


『ENだしね』


『じゃねー★』


「あははハイ、ENのみんな、さよならっ!」



 年季の入った学習机上にはスパコンの画面、2本空いたビールと食べちらした駄菓子の数々があった。さいごは笑顔で手を振りお別れしLIVE通話アプリTOMOL(トモル)を終了させた。


 青年は一息ついている途中に、ガチャリと空いた戸に気付かず、椅子座りの背後から両肩に手をそっと置かれていた。


「ホトプレなにやってたのソレ」


「うわっ!? えっと丁度ビールと駄菓子があったんで大学のみんなとオンライン飲み会……みたいな? なんかビ菓子っていう流行りらしいですよ、懐かしさは分からないすけどみんなで持ち寄って学生でも手軽でちょっと特別感もありましたしオンラインでもけっこうたのしいっすね」


「ふぅーんいい時代だねぇ、若いねぇっ、ビガシだねぇ、ってビガシって何? このおばみんちゃんを無視して何若者の青春気取りやってんのさね! この大したことない偏差値マン! てかまだ昼間しょ不良大学生!」


「え……一応同じ学科の人たちに俺のいなかった間の話を聞いてただけで……。あ、そのENの人たちの情報なんですけど」




ママを求め続ける変態:ママを求めつづける。7人ぐらいほしい。


爆発太郎:やっべぇ重戦車ミサイルがやべぇ。狂ったイラストレーター、爆破した街がこやつの作品。


ドレス好き:ドレス好き(恋)


巨人:まじででかい棍棒とかもってそう。派手に暴れるけど建物は壊さないよ。でもべつにやさしくないよ、巨人だよ。特技は小人圧殺と街の拭き掃除。


アイスクリームをとけるのを眺めるのが好きな異常者:人をアイスクリームにして溶かすのが得意だ。チョコミントはNG抹茶はギリ。


ミントタブレット中毒者:ミントタブレットでイクことが出来る。オーラと吐息はおそろしく冷たくつよい。ガムも好き。飴も好き。割となんでもいい。とにかく口がさびしいのよっそんなの死んでるのとおなじよね。


怪盗藍紫:イタズラ好きな怪盗である。安定を嫌っている。だがティータイムは、好き。彼女は善でも悪でもないのだろう。たまに義賊になる。変装が得意であるが体型でバレる事もある。とにかく世の中を乱す役割と呪いを与えられている。男を取っ替え引っ替えする。みたらし団子にはうるさい。




「ちょっと待って!? これはなに?」


「えっと? だから同じ学科の人たちです。その人たちが作っていたミニチュアワールドの40世代超えの性格AIの特徴とデザインなんですけど何か手がかりになるかなぁって」


 タブレット電子ノートにTOMOLでのやり取りを記録し、青年は必要な情報を抜粋しまとめていた。それを読み見たおばみんは混乱を取り込んでしまったアタマの中を一掃するように、冷静に。


「いやならないでしょ!」


「……っすよね……」


「もっと他に聞くことがあったしょ! てか行動早っ」


「ほか? 確かに……みんなの作ったAIが気になっちゃって……。あとやっぱり俺も少なからず関わってたので」


「ますます君の学科がわからないよホトプレぇ」


「えっと、簡単に言うとミニチュアワールドのボスを決めるためといいますか。先生だけが知っていて、生徒たちはどの性格AIが誰が作ったのかをしらなくて、そこに1000以上のモブの住人AIを交えてヤッたりヤラれたりを繰り返して、んで成績目当てにヒートアップしていった結果がこれといいますか……だから今回オンラインでハードルも低いし集まろうってことで俺から勇気出して呼びかけてみました、みんな初めてまともに話したんですけど面白い良い人でよかったです!」


「それはなんともまぁキラキラな大学生活でえがったけどさぁ。生徒をバトルロワイアルさせて更に生徒の作り上げたAIにもバトルロワイアルさせたってわけだ! うんうんすっごいおかしいよホトプレその環境、それカタチは全然ちがても現代版蠱毒ってヤツだよ! やっぱホトプレの恩師おかしいんじゃね? 捕まって当然だよぉ、そのマッドな創作物みると頭おかしくなってる子ばっかじゃん」


「……たしかに……どんどんマッドになっていった感は……俺もそれに真正面からぶつかってヤラれっぱなしだったんで……路線を。あ、俺警察に行かなくていいんですかね? 連絡が」


「私のドッツが処理してくれたんじゃないかなぁ、ただの一生徒でしょ? ダンジョン帰りのにゃはは、色々お忙しいご都合なのさねぇ」


「それもそれで……ドッツすごいですね……」


「ま、ダンジョン絡みの厄介ゴトはドッツさんの方が上手投げの棲み分けよ! てかそうそうそれよりキミ休講でしょ。あちゃーホトプレくん大丈夫、卒業出来る?」


「それはわかんないすけど……ENのみんなは、代わりのオンライン技能講義を受けさせてもらえるみたいで……でもそんなことより今は知りたい事の方が多いので。落ち着いてからですかねぇ」


「ふぅーーん」


 背後で喋りつづけたおばみんは机上にあった青いシガレットケースから白いラムネ棒を一つ取り出して口に咥えた。


 しばらくマウスのカチッとした音と沈黙がつづき。青年の家にある緑トレーナーをだぼっときた彼女がいる。なんとも言えない間と気配に青年は切り出し、そもそもの謎を問うた。


「あのぉ……」


「ん」


「というかここ俺ん家ですよね……?」


 自分の家のように落ち着きノーマルな表情をしていた彼女はぽりぽりぽり、とタバコを3本手を使わずに喉に収め流していき。


「──何寝ぼけたこと言ってんの、ここ私の家だから」


「は……?」


「ほらこれ所有権移転手続きも済ませたよ。このボロボロアパートはずぇんぶぅおばみんお嬢様のものなのよ、おーほっほっほ」


 高笑うお嬢様はスパホのオンライン手続き画面を青年に見せつけた。この青年の住むボロアパートをリノベーションするという名目で金を積み不動産売買契約を締結し管理人と成り代わっていたのだ。


「そんなわけ……えまじで……そんなの困りますって!?!!」


「あっそ嫌なら今すぐ出てってね。──なんてね! ってね! それそれそれそれぇいおまつりよぉーー」


 向かい合っていた青い学習チェアーがぐるぐると、高笑うお嬢様はそれそれと青年を手の平で勢いよく回転させ踊らせた。

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