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帰宅

それから、私たちは無事本州に着くことが出来た。そして、そこからはリコちゃんに電話して助けてもらった。いや、リコちゃんは助けてもらったお礼だって言ってたからお返しになるのかもしれないけど。

そして、タクシーをわざわざ呼んでくれて私たちの住んでいる街まで送ってくれたのだ。多分、数万円かかってると思うんだけど、いいのかな……。いや、娘の命の恩人だからって笑ってたけど。


「気にしなくていいよ。実は、宝くじが当たったんだ。それに、お父さんの事業がうまくいってお金は沢山稼げるみたいだし」


「そ、そうなんだ……」


リコちゃんの家族のリアルラックがすごいみたい。その割に、リコちゃんに不運が……いや、運がいいから生きて帰ってこられたのかな? よくわかんないや。


「もしよかったら、将来、君たちもうちの会社で働かないかい? 多分、普通の仕事をするのは世間的に厳しいだろう?」


確かに、私たちはこれからマスコミや興味本位の世間の目にさらされる事になる。普通の生活を送れるのかどうか分からない。

移動中、リコちゃんのお父さんから大人としてのアドバイスをいくつも貰う。そして、私たちは記憶喪失を装う事にした。行方不明だった間の記憶はなく、気が付いたらここにいた……ってやつ。

私たちは、家の近くの公園で降ろしてもらいリーベとノワールにも話す。


「私達、両親がどういう返事をするか分からないけど、明日、どうなったか報告に来るからここで待ってて」


「大丈夫よ。私が立派な段ボールハウスを作っておくわ」


「我も誰かが来ても、その辺の木に擬態して誤魔化すと断言しよう」


「そ、そう……それならいいけど……」


段ボールハウスって大丈夫かな? まあ、1日だけだし、もう暗くなるから大丈夫だよね。


「千佳と敦美はどう?」


「分かんないけど、とりあえずありのまま話すしかないかな」


「私の家なら大丈夫だと思う。2人の事も、きっと受け入れてくれるはず」


「そっか。それじゃあ、また明日」


私たちは別れ、それぞれの家へと向かう。


久しぶりの我が家。前回は来れなかった場所。明かりはまだ点いているから、両親は起きているのだろう。玄関の鍵はかかっていないみたい。


「た、ただいま~」


とりあえず、玄関で待機する。


「その声は……綾音! お父さん、綾音が帰って来たみたいよ!」


「綾音!」


両親は、慌てて玄関までとんできた。二人とも、私が覚えているよりも痩せていて、目の下にクマがある。ニュースでは、私たちは死んだことになっていたけど、両親は私が死んだと割り切っていなかったみたいだ。


「……ごめんなさい」


私は、自然と涙がでて謝る。


「何を謝ることがあるんだ。こうやって、無事に帰ってきてくれたんだ。何、これからの事は心配するな。誰が何と言おうと、お前の事は俺達が守ってやる」


「そうよ」


「ありがとう」


私は、ぎゅっと両親と抱き合う。擬態しているから、今は普通の人間と変わらない感じで触れ合えていると思う。


「色々、話さないといけないことがあるんだけど……」


私は、両親に自分が記憶喪失を装う事、他にも2人の同級生が生きて帰ってきた事などを伝えた。さすがに、異世界の事を話したときは信じられないような顔をしたけど、それが本当でも嘘でもどっちでもいいってことで落ち着いていた。


「そうか……それでも、しばらくは周りが騒がしくなるだろうし、帰って来れなった同級生の家族が何か言ってくるかもしれない。一応、自分の子供が帰ってこないと割り切ることが出来た家族も居るみたいだが、みんながみんなそうじゃないからな」


「うん、わかってる。私も、他の子たちの事は知らない……覚えてない事にするよ」


私の口から同級生が死んだ事実を告げて、割り切ることが出来るのか、それとも恨み言を言うのか、それともお礼を言うのか……どう反応されるのか全く分からない。だから、ここは一貫して記憶喪失を貫くか……。


「あのね、私、人間じゃなくなったんだ」


「え? どう見ても、綾音よ。私達が間違うわけ無いわ」


「ううん、実は……」


私は擬態を解く。見た目は変わらないが、私は手を出して両親に触れてもらう。


「……皮膚が、まるで石みたいだ」


「綾音、大丈夫なの?」


「うん、むしろ、人間よりよっぽど頑丈。それに、さっきみたいに見た目や体なんかはごまかすことが出来るから」


顔も変える事が出来るから、全くの他人として過ごす事も出来る……というのは口に出来なかった。私は、自分の出自を偽ってまで生きたいと思わない。それに、たとえどんなことがあろうと、負けるわけが無いという自信があったし。それに、一人じゃ無いしね。


「綾音、もう、どこにも行くなよ」


「私達が、ずっと一緒に居るからね」


「うん……どこにも行かないよ」


私は、しばらくの間、両親をぎゅっと抱きしめていた。

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