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ヒゲを無くしたかっただけなのに

作者: モズモズエ

少し結末を修正しました。

「マリーナ・ステラ伯爵令嬢。今日限りで婚約を破棄させてもらう」


 私は、第一王子として幼い頃から決まっていた婚約者が嫌だった。彼女は完璧に妃教育をこなし、国を一番に考えている。既に王妃になったかのような振る舞い・・・そのような立ち振る舞いが気に入らない。


 今日は学園の卒業式をひかえた前夜祭だ。王城で卒業生とその父兄を集めてのパーティーだ。もちろん父である王も来ている。


 さらに国の主要な方々が揃っており、婚約破棄を認めてもらう最初で最後のチャンスなのである。


 学園を卒業したら大人として扱われる。その為、結婚へ向かって大きく進んでしまう。なんとしても今日、婚約を破棄できなければ、この生意気で可愛げのないマリーナが王妃となってしまう。


 ここでうまく婚約を破棄し、真実の愛を育んでいるアビゲイル・ボウボー男爵令嬢と結ばれたい。


 彼女では妃教育が間に合わないなどという奴らもいるが、私や周りの者がフォローをすれば大丈夫なはずだ。純朴で素直な彼女であれば、きっと将来は良い王妃になれるはずだ。


「そして代わりに、このアビゲイルと婚———」


 ・・・、大事な内容を言いたいのに、急に頭痛が、意識が保てない。


 大事なときに、ま、まずい あ———。


「…ぅん、あー。ゴホン」


「———、??」



 どこ・・・だ? ここは?



 ヒゲ脱毛で、麻布にいたはずなのに……。


 初レーザーで痛い!我慢できない!と思っていたら、いつの間にかこんなところに?

 見た限り、外人ばかりいる場所のようだけど、夢でもみているのか?なぜか、みんな俺に注目しているっぽいし、どうなっているんだ?


 なにか俺が話している途中だったみたいだな。とりあえず、、、


「・・・すいません、少し、めまいが。どこまで話をしましたか?」


「・・・? ウィル殿下——、私との婚約を破棄しアビゲイル様と婚約を、と話されている途中でした。このような場でそのような話をしても本当によろしいのかと思っていたところですが・・・」


 おい!婚約破棄ってやつかよ!!


 それを俺が言ったのかよ。すごい展開の時にきちゃったよ、しかも殿下って俺は王子かよ・・・!?


 読んだことのある小説だと、破棄されている方が悪くないパターンとかもあるし、今回はどっちなんだ?聞くしか無いけど、どう聞こうか???


「なるほど・・・、配慮ありがとう。たしかにここで話す内容ではないな。」

「ウィル様! 今、この場で話をしないと、マリーナ様との婚約解除はむずかしいと言われていましたわよ?」


 隣りにいる赤いドレスの女性が、今話せと急かしてくる。


 この子がアビゲイルとやらで、乗り換えようと思っている相手っぽいな。うーん、口調とかもフランクだし、立場がよくわからんけど、この娘は悪い子なのかな??


 なんだか、この物語が気になりだしたし、白黒はっきりするまで夢を楽しむか!



「フム。それでは、君から話してくれないか?なぜ私が、婚約を破棄したいのか。君なら知っているだろう、僕の気持ちを」


「わかりましたわ、ウィル様。わたくしが説明いたしますわ。マリーナ様は、ウィル様と仲良くしているわたくしを疎ましく思っていたのですわ。だから、取巻きの方たちに、わたくしへの嫌がらせをさせてきたのですわ」


「どのような嫌がらせだったのかな?」


「ウィル様に近づくなとか、これ以上仲良くするのは家のためにならないとか、身分を考えろとか。学園は身分が関係ない場所だというのに、そんなことばかり言ってきたのですわ。その後、近づこうとすると邪魔したりしてきましたわ」


 駄目だ、語尾の『わ』が気になって頭に入ってこない。

 

 これだけ聞くと別にいじめではないような気がする。王子と婚約者の間に入ろうとしていたら、普通は止めるだろう。


「それに距離が近すぎるとか言っていましたわ。好きな方との距離感など近くてあたりまえですわ」


 いや駄目だろう!

 婚約者がいる相手を好きになったとか言っては。なんだか、アビゲイルのほうが分が悪そうだ。


「もちろん、ウィル様が許してくれなければ近づくことはしませんでしたわ。気安く話しができるわたくしといると、心地いいと言ってくれたのですわ」


 やばい。犯人、俺じゃん。


 マリーナの方を見る。


「普通はそれでも近づかないものです。お優しいウィル殿下はそうおっしゃるでしょうが、それをそのまま受け取る人がどこにいるのですか。それがおかしいことだと、他の方々も指摘していたのに、いじめだとか……。あなた自身が困ることなんですよ!しかもこのような相応しくない場で話してしまうなんて」


「まあ、待て。他にはなかったかな」


「マリーナ様の開催するお茶会に一度も呼ばれませんでしたわ。それに、誘拐もされそうになりましたわ。お父様の政策をじゃましてきたり、数えたらキリがありませんわ」


「あなたは派閥が違うでしょ、同派閥の方々とのお茶会に別派閥のあなたを呼ぶわけないでしょ、普通に考えたら。誘拐の件と政策?の邪魔については、私は知らないことよ。自分に起きた悪いことを根拠もなく人のせいにしないでほしい。そういうことを数々していたら、誰もあなたと仲良くしたいとは思わないわよ」


 誘拐とか、政策はたしかに関係ない可能性はあるよな。貴族の娘だし誘拐される危険性はあるだろうし、政策は単純に親父の力量しだいだよな。しらんけど。



「それにアビゲイルさん、ウィル殿下以外の方とも仲良くされていて、それも注意されていたでしょう。貴族の子女として最低限のことができていないんですよ」


「ほら!また悪口を言いましたわ。みなさま聞きまして?」



 うーん、どうしよう。マリーナが悪い要素が今のところ無い。


 正直、アビゲイルさんとの関係は止めておいた方がいいと思うんだが。このはなし、どうやって終わらせればいいの?


「マリーナさん、その言い方は無いんじゃないかな。たしかに僕たちも仲良くしていたけど、身分差や派閥で差別して仲良くしないのはおかしいんじゃないかい。なぁ、ギルバード?」


 知らない男が混ざってきた!


 しかも、ギルバードとかいう人も巻きこまれているし、どうなるのこれ。


 貴族のルールは俺もわからんし、なんとなく婚約者がいるのに距離感が近いとか駄目っぽいのはわかるけど、この世界ではどこからがアウトなんだ?


「ザイル様、ギルバード様。あなた達もです。ウィル殿下の側近が止めもせず、なぜご一緒にアビゲイルさんとご親密にになっているのですか!」


「親密とは!マリーナ嬢失礼じゃないか。僕もギルバードも仲良くしているだけだし、ウィル様だってそうだ。単純に君の魅力が足りないから、アビーにとられたんじゃないのかい?」


 アビー!愛称呼びだ―!

 だめだコイツラも駄目側のひとだ。この夢の落とし所は結局どこなの?


 この駄目王子の予定通り、婚約破棄をしてアビゲイルと婚約するパターンだとして、そもそも駄目王子はどの立場なんだ?王太子として次の王様になるっていうのなら、アビゲイルは王妃になるわけだろ。


 たぶん、マリーナはそういう教育とかしっかり受けていそうだし、アビゲイルはそういうのは向いてないよな。


 王子の予定を壊すとして、マリーナと再び関係を続けるパターンだと、この状況をなんとか乗り越える必要がある。全てをひっくり返すつもりがないと無理だな。



 どっちを選ぶ?


 チラッと父王の方を見ると、興味深そうにこちらを見るだけで止める気がなさそうだ。

 おかしくないか??普通止めないのか、こんな状況になったら?


 もういいや、夢だとしてもスッキリ目を覚ましたいしなぁ——よし。


 肚を決める。ひっくり返そう。


 もう、めちゃくちゃに。


 そもそも俺は、自分を変えたくてヒゲ脱毛をやりにきたんだ。この夢は、たぶん流される俺と変わりたい俺を表したものなんだ!


 よし、そうと決まれば。



「まあ待て!ザイルもギルバードも。さて、今の私達の状況をここにお集まりの方にはわかってもらえたと思う。誰が悪い、誰が正しい。いろいろ意見もあるだろう。ただ、私は私が選んだ道を行く。それをわかってほしくてわざわざこの場を選んだんだ」


「ウィル様!そうですわ、ここから変えるのですわ!」


「よし。ザイルとギルバードは今日限りで側近から外す。私の判断が間違ったときに止めるのがお前たちの役目のはずだ。それをせず、止めてくれているマリーナを支持しないなんて駄目だろう。今後を考えると、このようなことでは駄目だ。逆に私をたしなめてくれた方々。ありがとう。これからを考えると私に対し、しっかりと意見の言える人材は大事だ。マリーナもありがとう。こんな茶番に付き合わせてしまってすまないな」


「ウィル様!!!どういうことですの!!」


「今言ったとおりだ。君の行き過ぎた行動を誰が止めるのか見定めていた。君も注意してくれている人がいるにも関わらず、私が許したからといっておかしなことをしてはいけないよ。君は止める立場なんだ。マリーナを傷つけてはいけないと言わないといけなかった。もしくは婚約破棄ではない形で仲良くする方法を提案してほしかった」


 みんな驚いた顔をしている。そりゃそうだろう。トンデモ理論を炸裂させたからな。


「ウィル様!そんなのあんまりだ!」


 お!初めてギルバート君がしゃべった!泣きそうな顔をしている。ごめんな!


「ウィル様、本当に良いのですわね!」

「勿論だ。決定に変更はない。マリーナとの婚約も続けるし、君との恋愛ごっこもおしまいだ。君をいいように使ったことに対しては謝る」

 俺は謝罪し、頭を下げる。



「———おめでとうございます!ウィル王子殿下」


 アビゲイルが姿勢を正し、急に態度を変える。

 

 ??


「試練の儀式、達成でございます!」


・・・・・・



 その後の記憶は曖昧だが、誰とも目を合わせず、そそくさと外に向かう。なんか、王様っぽい人が何か言いたそうだけど、今混乱している。


◆◇◆◇◆◇◆


 あれから三日たった。夢だと思っていたが、まだ現実には戻れていない。


 結局、あの後王様に呼び出しをくらい、説明を受けた。


 ネタバラシをすると、王になるための試練が、この国には伝わっており、今回のアビゲイルを使った婚約破棄騒動は、その試練の一環だったらしい。

 誘惑に打ち勝ち、正しい判断ができるか、見定めるためのものだった。というひどい話だ。


 まんまと策にハマった駄目王子は、アビゲイルに靡き、婚約破棄までいくところだったのだが、今の俺になったところで起死回生が起きたという状況だ。


 あのまま婚約破棄していたらゲームオーバーだったらしい。廃嫡され追放だったとか。


 一応正解を選んだようだ。おかげで自分に自信は持てたよ。納得はしていないが。


 というか、いつまでウィル王子のままなのだろうか。

 そして人を信じられなくなった!



 ヒゲを無くしたかっただけなのに!!

友達から、ヒゲ脱毛、恋愛、異世界転生のお題で小説を希望されたので、初めてですが書いてみました。


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