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次は、どの国を食べようか?  作者: 落川翔太
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イタリア料理編

第五章 イタリア料理編


 その翌週の土曜日、晴斗はイタリア料理を食べようと、三軒茶屋にあるイタリア料理店へ向かった。駅から二分ほど歩いた所に、そのお店はあった。

 夕方六時頃、店内はディナータイムということでやや混み合っていたが、少しして晴斗はそのお店の中に入れた。

 席に着いて、早速、晴斗はメニューを見た。何を食べるかを考える。どれもこれも美味しそうであった。それから、晴斗は先日観たテレビで、イタリアンの代表格はパスタとウニであると言っていたのを思い出した。

 それから、生うにのパスタを見つけて、それを食べることにした。その後に、イタリアのチーズであるブッラータチーズを見つけてそれも食べることにし、魚介類も美味しいと言うことで、エビやホタテなどの魚介と野菜が乗った「前菜盛り合わせ六種盛り」と白ワインを注文した。

 しばらくして、白ワインと注文した料理が次々に運ばれてきた。

 どれも美味しそうであった。

 晴斗は早速、白ワインを一口飲んだ。うん、おいしい。さらりとワインが喉を通った。

 そして、生うにのパスタを食べてみる。フォークでくるりと巻き、一口食べる。

 うん。うまい。思わず声に出したくて仕方なかった。

 そのパスタは口に入れると、ウニのクリーミーな味わいが広がりとってもうまい。それから、ウニの甘みも感じられた。

パスタとウニが絶妙にマッチしていて、とてもおいしかった。

晴斗が食べていた時、「いらっしゃいませ」と店員が言った。その声で、晴斗は一度、入り口の方を見た。

見ると、そのお店に二人の女性が入って来た。二十代くらいで黒髪ショートの女性と茶髪でショートの女性だった。晴斗はその二人に見覚えがあった。

どこであったんだっけと晴斗は考える。その後、すぐに晴斗は思い出した。

先週、有楽町のフランス料理店に行った時に、外国人の男性二人に絡まれてしまっていた女性たちだった。

奇遇だなと晴斗は思った。

それから、彼女たちはすぐに奥の席に案内され、そこへ座った。

晴斗は一口白ワインを飲んだ。それから今度、プッラータチーズを一つ頬張った。

これもうまい。

チーズは濃厚かつクリーミーでおいしかった。オリーブオイルとブラックペッパーが掛かっていて、その風味やブラックペッパーのアクセントがとても良かった。

再び白ワインを飲み、今度は前菜盛り合わせを食べてみようと思った。

エビといかの何かを食べてみる。焼いたエビを食べ、輪切りになったイカをよく噛みしめる。エビやイカの食感が楽しくて、しかも美味しい。思わずもう一口頬張った。それから、他の前菜も食べる。野菜のシャキシャキした食感と魚介のプリッとした食感が堪らない。それらを食べながら、白ワインを追いかける。

その後も、晴斗は生うにのパスタやブッラータチーズとその前妻の盛り合わせを食べていた。

一度、晴斗は席を立った。お手洗いへ行こうと思った。

「あの……。」

用を足して、トイレを出た時、ふと後ろから声を掛けられた。

「はい?」

 晴斗が振り返ると、そこに黒髪ショートの女性がいた。

「失礼ですけど、あの、先週もしかして、有楽町のフランス料理店でお見かけしてませんか?」

 彼女がそう言った。

「はい。確かに先週、僕はそこに行きましたけど」

 晴斗がそう言うと、「ですよね!?」と、彼女は目を輝かせて言った。

「はい」

「私、あの日、友達と二人でそこでご飯を食べていたら、近くにいた外国人たちに絡まれてしまったんですよね」

「覚えてます」

「その時、私たちを助けてくれましたよね」

「なんか、見てて困ってそうだったので」

「はい。あの時、私も友達も本当に困っていました。だから、助けて頂けて本当に嬉しかったです」

「無事で良かったです」

「はい。あの、お礼をと思って、お声かけさせてもらいました」

 それから、彼女がそう言った。

「そうですか。それはありがとうございます。でも、まあ、あの時は僕の手柄というより、最後にやって来たあの外国人のヒーローのおかげですから」

 晴斗は笑って、そう言った。

「それはそうですけど、あなたにも助けられました。あの時はありがとうございました」

 彼女がそう言って、ぺこりと頭を下げた。

「いえいえ。大したことありませんから。では」

 晴斗はそう言って、立ち去ろうとした。

「あの!」それから、彼女がそう言った。「フランス料理、お好きなんですか?」

 彼女にそう訊かれ、晴斗は振り返る。

「……好き、嫌いというわけではないです。実は、僕、最近、趣味で世界の料理を食べているんです」

 晴斗がそう言うと、「え!? そうなんですね!」と、彼女が驚くように言った。

「実は、私も世界の料理を食べ歩いていて……。」

「え!? そうなんですか?」

 彼女のそのことに晴斗は驚いた。まさか趣味が同じだとは思わなかった。

「はい。そうなんです」

 彼女は微笑んで、嬉しそうに言った。

「へー、意外ですね! 同じ趣味だったなんて……。」

「ホント奇遇ですね!」

「ここで会うのも偶然ですし……。」

 晴斗がそう言った。

「ねえ、あやのん、何してるの?」

 その後、こちらに茶髪ショートの女性がやって来て、そう言った。

「あ、ゴメン!」彼女はそう言ってから、「てか、しおちゃん、この人覚えてる?」と、黒髪ショートの女性が晴斗を指して言った。「この前、フランス料理店で助けてくれた人だよ!」

 彼女がそう言った後、その茶髪の女性がどうやら覚えてくれていたのか、「あー覚えてる!」と、嬉しそうに言った。

「この前は、どうもありがとうございました」

 それから、茶髪の女性が晴斗にお礼を言った。

「いえいえ」と、晴斗は言って、手を振る。

「あ」

 その後、黒髪の女性が口を開いた。

「あの、この後、お時間ありますか? この前のお礼と言ってはなんですが、ご飯でも行きません?」

「ご飯はもう食べたから大丈夫です」

 晴斗がそう言った後、「あ、そっか。じゃあ、近くにバーがあるんで三人でそこに行きません?」と、彼女が言い直した。

 晴斗はいいだろうと思い、「いいですよ」と、答えた。

「じゃあ、そうしましょう」

 黒髪の彼女がそう言った後、「あやのん、ゴメン!」と、茶髪の女性が言った。

「私、家でルイくん待たせてるから、私、抜けてもいい?」

 それから、茶髪の女性が手を合わせて言った。

 ルイって、もしかして彼氏とかだろうかと晴斗は思っていると、「あー、彼氏ね。それなら仕方ないか」と、黒髪の女性が言った。

「彼氏じゃないって!」と茶髪の女性が言って、「飼っている猫なんです。キジトラのオス猫で、名前がルイっていうんです」と、晴斗にも分かるように説明した。

「へー、猫か。いいですね」

「はい。だから、すみません」

「全然、平気です」

「二人で楽しんできてください」

 それから、彼女がそう言った。

 晴斗とその二人の女性たちは料理を食べ終えた後、会計を済ませてその店を出た。

 茶髪の女性とは店の前で別れて、晴斗は黒髪の女性と二人でバーへ行く。少し歩いた所に、こぢんまりとしたお洒落なバーがあり、二人でそこへ入った。

 晴斗はビールを注文する。彼女はハイボールを頼んだ。

「そう言えば、まだお名前をお伺いしていませんでしたね?」

 バーで注文を終えた後、彼女がそう言った。

「山崎です」

「山崎さんですね。下のお名前は?」

「ハルトです。晴れるに北斗の斗で、晴斗です」

「晴斗さん、カッコいい名前ですね」

 彼女はそう言って笑顔を見せた。

「そうですかね。ところで、お名前って?」

 今度は晴斗が訊いた。

「私は小坂です。小坂アヤノです。アヤノは彩るに刀って字をへこましたやつです」と、彼女が言った。

 彩乃。可愛らしい名前だなと晴斗は思った。

「そういや、小坂さんはフランス料理ってお好きなんですか?」

 小坂さんが晴斗に訊いた質問を自分も彼女にしてみた。

「フランス料理……好きですよ」

 彼女がそう言った。

「そうなんだ。どうして、好きなんですか?」

 晴斗がそう訊くと、彼女が口を開いた。

「フランス料理って、見た目がいいし、味も美味しいじゃないですか?」

 それから、晴斗は前回行ったフランス料理屋のメニューを思い出す。スフレオムレツにチキンとフォアグラのノルマンディー風というチキンソテーだ。

 確かにスフレオムレツは見た目からしてふわりとろりとしていて、美味しそうに見えたし、実際に美味しかった。

「確かに。でも、それって、フランス料理に限った話じゃないとも思いますけど」

「まあ、そうなんですね。けど、フランス料理って、日本料理とか中国料理、それから、他の料理とは違ったところがあるんです。食材や料理の仕方によって全然違いますよね? だから、そう言った趣があるんですよ」

 彼女がそう言った。

「はあ」

 彼女の言わんとすることは、分からないでもないなと晴斗は思った。それは、世界の料理を食べ始めて、気づいたところもあるからだった。

「私、フランス料理が一番なんですけど、世界の色々な料理も好きで。山崎さんも、世界の料理を食べるのが趣味なんですよね?」

「はい。そうです」

「じゃあ、もしよかったら、これから一緒に色々な料理を食べに行きません?」

 それから、彼女がそう言った。

「え?」

 晴斗は驚いた。まさか彼女にそう言われるとは思ってもいなかったからだ。

「あ、でも、急にそんなこと言われても困りますよね?」

 その後、すぐに彼女がそう言い直した。

「あ、いや」

 晴斗はむしろそう言ってもらえて嬉しかった。晴斗も同じような気持ちだったからだ。

「もちろん構わないですよ」

 晴斗がそう言うと、「本当ですか?」と、彼女もびっくりしているようだった。

「はい」と、晴斗が頷くと、「良かったです」と、彼女は安心したように言って、それから微笑んだ。

「早速なんですけど、山崎さんって来週の土日とかって空いてます?」

 それから、すぐに小坂さんが晴斗にそう訊いた。

「来週は土日、両方とも平気です」

 晴斗は携帯のカレンダーを見て、そう言った。

「分かりました。じゃあ、日曜日でもいいですか?」

「はい、大丈夫です」

「その日は、何の料理食べに行きましょうか?」

 それから、彼女がそう訊いた。

 晴斗は、アメリカ料理と中国料理、フランス料理とそれから、イタリア料理を食べたことを彼女に言った。

「それ以外でお願いします」

 晴斗がそう言った後、「分かりました」と、彼女が言った。

「それじゃあ、スペイン料理なんてどうですか?」

 それから、彼女がそう言った。

「スペイン料理?」

「はい。パエリアって食べたことあります?」

「いや、ないです。食べてみたいですね」

「じゃあ、パエリアの本場、スペイン料理を食べに行きましょう!」

 彼女が嬉しそうに言った。

「はい!」

 晴斗も意気込むように返事をした。

「あ、時間とかどうします?」

 その後、晴斗は小坂さんにそう訊いた。

「お昼頃はどうですか?」

「いいですよ」

 晴斗がそう言った。

「また詳しい日時とか送りたいんで、連絡先交換しませんか?」

その後、小坂さんがそう言った。

「あ、そうですね」

 晴斗はそう言って、小坂さんと連絡先を交換した。

 その後、二人はもう一杯だけお酒を飲み、駅で解散した。

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