世界の料理を食べる
無趣味だった男が、世界の料理を食べ歩く物語です。
〈全十二話です〉
どうぞご堪能下さいませ。
第一章 世界の料理を食べる
その日のお昼休み、山崎晴斗は上司の藤本さんと一緒に会社の近くの牛丼店で牛丼を食べていた。
藤本さんは牛丼を食べながら自分の趣味の話をする。たいてい釣りやバイク、それから、食べ歩きの話である。晴斗は、藤本さんの話をうんうんと聞いていた。
「山崎、趣味はないのか?」
それから、藤本さんがそう訊いた。
晴斗には趣味と言えるものが全くなかった。
だから、晴斗は「ないです」と答えた。
すると、「趣味がないのはもったいないな」と藤本さんは言い、それから、「何か新しい趣味でも始めたらどうだ?」と言われた。
藤本さんにそう言われて、晴斗は新しい趣味かと考えた。
仕事終わりに、晴斗は駅の近くの本屋に寄った。何か新しい趣味を始めようと考えたが、何も思いつかなかったので、何か見つかればいいなという思いから、入ってみることにした。
その本屋に入って、晴斗はぶらぶらと歩いた。しばらくして、晴斗は趣味のコーナーを見つけたので、そこで立ち止まった。
本棚を眺める。そこには、車、バイク、釣り、園芸、ゴルフなど様々な趣味の本がずらりと並んでいる。それら一つ一つを見たが、晴斗はあまりぱっとするものがないなと思った。
その後、晴斗は『料理』という文字を見つけて、そこで目が留まった。
料理か。いいかもしれない。
その棚には日本料理を始め、中華料理やフランス料理、イタリア料理など様々な世界の料理の本が並んでいた。
それからすぐに、晴斗は一冊の本に目が行く。
『世界の美味しい料理』という本だった。
晴斗はその本が気になり、手に取って読んでみることにした。
その本はアメリカ、中国、フランス、イタリア、スペイン……と世界各国の料理が色々と乗っていた。見るとどれも美味しそうであった。食べてみたいと晴斗は思った。
あ、これだ!
その後、すぐに晴斗はそう思った。
世界には様々な料理がある。その世界各国の料理を食べ歩くのは楽しそうではないか。この本に乗っているお店に色々行ってみたい。それを趣味にしたら、いいのではないかと、晴斗は思った。
翌日のお昼休みに、晴斗は藤本さんに一緒にお昼に行こうと誘われて、会社近くのラーメン屋へ行った。藤本さんはそこでとんこつラーメンを頼み、晴斗は醤油ラーメンを注文した。
「そう言えば、昨日の話なんですけど」
その後すぐに、晴斗が口を開いた。
「なんだい?」
「趣味なんですけど、見つかりました」
晴斗がそう言うと、「本当かい!?」と、藤本さんは驚いていた。
「それで、趣味というのは?」
「世界の料理を食べ歩こうかと」
晴斗がそう言うと、「ほお。それは面白そうだな」と藤本さんは言って、にやりと笑った。