表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

K&K:胡桃ちゃんと暦ちゃん

四分の奇跡

冬休みに父の実家に帰省するため、カーフェリーに乗った女の子。

夜の海で不思議な光景に出会いました。

冬の童話祭2022「お題:流れ星」参加作品。

武 頼庵(藤谷 K介)様の24冬企画 冬の星座 (と)の物語企画にも参加しています。

 ボォォォォォ……

夜の海に長い汽笛(きてき)(ひび)きわたりました。


 一人の女の子が船室から甲板(かんぱん)にでてきました。

あたりは(しお)のにおいと(あぶら)のにおいがしています。

その子はコートの前をギュッととじて、白いいきをハァ……とはきました。

きょろきょろと甲板(かんぱん)を見回した後、手すりのところまで歩きました。

女の子は、手すりからまっくろな海面(かいめん)をのぞいてみました。


 船の下で、ウミホタルの青くぽわぽわとした光が見えました。

黒い海面(かいめん)に白いなみ、青い光がゆれてふしぎな絵になっています。


 船の後ろの方を見てみると、遠くの町の色とりどりの明かりがきらめいています。

それは女の子がすんでいる町の明かりですが、夜にこんなに遠くから見たのははじめてでした。

黒い山々を背景(はいけい)にして、まるで宝石箱(ほうせきばこ)のように見えました。


 女の子の家族(かぞく)は毎年おばあちゃんのところでお正月をすごします。

今夜はおばあちゃんのお家に向かっているところです。

お父さんの車ごと、この大きな船にのっています。


 さむいせいか、甲板(かんぱん)には他の人はだれも出ていません。

星空の下、女の子はひとりだけでした。

いっしょにきた妹は気分がわるくなって、おとうさんとおかあさんが船室でつきそっています。

女の子はじゃまにならないように出てきたのです。


 女の子をのせた大きな船は、まっ黒な海のなかを力強くすすんでいきます。

さむいし、そろそろ船室にもどろうかな。少女が考えたときでした。


 ツィーっと、夜空で何か光る点が、うごいてきえました。


「あれれ?」


 女の子はびっくりしました。ながれ星を見たのははじめてです。

プラネタリウムではこないだ見たばかりでしたが、ほんものははじめてなんです。

ながれ星って、ほんとうにあったんですね。


「びっくりした。あれ? あ、また……」


 ツィー……


 ツィー……


 ツィー……


 つづけてながれ星が見えました。

プラネタリウムのおじさんは『ながれ星がきえる前に、おねがいごとを3回となえましょう』って言ってました。

でも、おねがいっていってもすぐに思いつきません。

そもそも、ながれ星はすぐにきえてしまいます。


 まぁいいや。この夜空を楽しもう。女の子はそう思いました。

たぶん、話してもしんじてもらえないよ。

でも、イトコのお兄ちゃんには話してみようかな。


 それから何分かたって、もうながれなくなりました。

みじかい間の奇跡(きせき)だったみたいです。

しあわせな気分のままで、女の子は甲板(かんぱん)を後にして船内に入りました。


 船室にもどると、船よいでぐあいがわるかった妹は、すっかりよくなっているようです。

元気にお正月のかえ歌を歌っていました。


 にがわらいをしながら、女の子は妹にさっき見た奇跡(きせき)を教えてあげました。

ながれ星のことをきいた妹は、ぜんぜんおどろかずに言いました。


「お姉ちゃん、それは四分儀座(しぶんぎざ)流星群(りゅうせいぐん)だよ。ながれ星がたくさん見えるから、お年玉たくさんほしいっておねがいするんだよ」


「ねぇ。もしかして、まだながれ星見えるの? いっしょに見に行く?」


「さむいしねむいから、やめとくんだよ」


 あとでイトコのお兄ちゃんにながれ星の話をきいてみました。

妹の言った通り、流星群(りゅうせいぐん)というものらしいです。日本ではお正月の夜に見えることがあるみたいですね。

あなたも冬の星空を見上げてみませんか?

挿絵(By みてみん)

作画:ひだまりのねこ様


妹ちゃんの豆知識

挿絵(By みてみん)

「四分儀座は現在のうしかい座とりゅう座の間にあって、今は使われていない星座だよ。四分儀というのは星の角度を測る器具だよ。航海中に星の位置から緯度を知るためにも使われたんだよ。後に、もっと正確に測れる六分儀ができたよ」


 挿絵(By みてみん)


 四分儀

 挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冬の童話祭り2023
marchen2022_eyecatch_pc.jpg


『冬の星座(と)の物語』企画概要 ←概要 ↓作品検索
冬の星座(と)の物語
バナー作成/ みこと
今回と同じ舞台のお話はこちら。
[K&K:胡桃ちゃんと暦ちゃん]

作者アホリアSSの別作品はこちら
新着投稿順
人気順
― 新着の感想 ―
確かにお願い事3回は無理。 あ!見つけた!で終わっちゃいますよね。 流星群の極大日には空を見上げるようにしてるのですが、それでもなかなか3回立て続けは無いです。 そして冬は寒い!w 綺麗な夜空の下…
2024/12/19 07:19 退会済み
管理
流れ星、お願い事の内容にもよりますけど、3回唱えるのは結構大変な事だと思います。その前に、流れ星見つけられないのです。視力悪いものですから(泣) 姉妹の会話、超がつきそうな物知り妹ちゃんに、おねえちゃ…
[良い点]  星に願いを…… てっ、できなかったんだ。  お年玉いっぱいもらえたらいいね。 [一言]  冬の海は荒れやすいからこわいですね。  九州に住んでますが、学生時分に単車に乗り東京より高速で2…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ