プロローグ
皆さん、冷たいスイーツと言ったら何を思い浮かべますか?
王道はやはりアイスですよね。
サーティーワンのチョコ・ミントが好きな人もいれば、滑らかな口当たりの雪見だいふく、お金に余裕のある方はバーゲンダッツのラム・レーズンを好んで食べているかも知れません。
しかし、今回はアイスではなくかき氷の話。
口に入れた瞬間溶けて無くなってしまうような、そんなかき氷を目指したとある女性の話です。
その女、亜麻色小奈は、ある出来事をきっかけに、かき氷屋で働くことを決意した。
3年前、それは小奈が高校最後の旅行に何人かで雪山に来ていた時のことだ。
小奈はスノーボードは全くの素人で、他の2人に遅れを取るまいと食らいつくように雪の上を滑っていた。
その時だった。
斜め向こうから猛スピードで男がこちらに向かって来た。
「よ、避けてーっ」
男が叫ぶと同時に、男の体と小奈の体が激突した。
時速150キロはあろうかというスピードのまま、男の腕が小奈の首辺りに直撃し、小奈は後ろにすっころんだ。
物凄いラリアットを食らい、小奈は血と折れた歯を口から吐き出した。
その血が一面に散らばり、辺りはまるでストロベリー・シロップのかかったかき氷のようであった。
朦朧とした意識の中、無我夢中で口にしたその赤い色の雪は、小奈の口の中でふわりと溶けて無くなった。
「……え、いまの、何?」
確かめるように、小奈はその雪を口の中に入れた。
また、消えて無くなった。
(こんな雪、食べたことないよ!)
いつの間にか、その地面は土が覗くほど、小奈はそれを無我夢中で頬張っていたのだ。
「全く、驚いたよあの時は」
そう言ったのは、ゲレンデで小奈にラリアットをかました張本人、プリオである。
プリオは小奈に一目ぼれし、なんとその場で告白をしたのである。
その時の告白の言葉は、
「僕と一緒に恋の航海をしないか?」
であった。
プリオはレオ○ルド・ディ○プリオの親戚であり、氷山恐怖症の男である。
もちろん、告白は即座に却下したが、何やかんやあって今、小奈の店の手伝いをしていた。