毒親の先には何があるだろう
五
人間は変なプライドを捨てるだけで、自由の羽を伸ばして、活き活きとした生活を営むことができます。
ところが、父は変なプライドを持っています。例えば、最近、母から父の姉、つまり私の叔母が詐欺師の被害に遭い、電話で詐欺師が指定する銀行口座に数百万円を振り込んでしまい、結局、その数百万円が戻ってこなかったと聞きました。父は、家族のようなごくごく親しい間柄でさえ、身内の恥を絶対に口外しない人間です。こういう本当に有事の時こそ、みんなで知恵を絞り、今後の対策などを検討したいですが、そうはいきません。ちなみに、叔母と叔父は最近になって別居してしまったようで、この振込詐欺事件の影響もあったと思われます。単に熟年離婚ブームに乗ったわけではありません。
父は、加速度的に老化しつつあるように見えます。精神・肉体の両面においてです。父を反面教師として育ってきた私がここから導き出される教訓を述べてみましょう。
それは、人間は変化に挑戦し続ける限り、歳をとらない。精神的にも肉体的にも若々しい。人間は変化を止めるとき、老い始める。そして、人間は変化を恐れて同じ場所に立ち止まるとき、急速に老いていく。
父は、この変化の最終ステージにずっと佇んでいます。本人が気づくことなく、ただただ佇んでいるのです。
こうして私は変化と挑戦をよしとする人間に育ちました。私のキャリアをサラッと振り返ってみると、サラリーマンをしていたかと思うと、NPO法人で地域コミュニティ活動に参加したり、さらにはビジネススクールで勉強したり。はたまた、フィリピンで海外ボランティアに従事したり、国際NGOのプロジェクトでネパールやアフリカのマラウイ、ウガンダに駐在したり、などなど。新型コロナウィルスの感染拡大が収まったら、今度は私たちのNPO法人がラオスに立ち上げた現地事務所を視察します。
まあ、今はまだ毒親の現状分析の段階ですので、毒子のこれまでの生活やこれからの生き方や働き方については、章を改めて書きますね。