毒子のサバイバル術
二十
・自分が毒親に育てられたと気付けただけで、十分にすごい。
自分の親が毒親だと気付けたのは、私の場合、社会人になってからでした。遅きに失しました。
いろいろな人の話や書籍などをチェックしていく中で、自分の両親が異常であることを理解できました。いや、悟りました。そして自分の両親を毒親と確信できたとき、一種の安らぎを覚えました。これまでに心の中に蓄積されてきた親に対する違和感が全て払しょくされました。
さて、コミュニティというものを考えると、小学生や中学生の頃のコミュニティといえば、家庭と学校、そして、少しの地域活動ぐらいでしょうか。半径数キロ以内に収まる小さなコミュニティです。この小さなコミュニティ(世界観)が高校生、大学生、社会人と成長するにつれて、加速度的に大きくなっていきます。
ところが、子供にとってコミュニティの出発点になる「家庭」という小さな集団内で、いきなりつまずいてしまうと、子供は心身ともに致命的なダメージを受けます。
私は貧しい家庭で無知な両親から暴言や暴力を受けながら育ちましたので、非常に大人しい従順な人間になりました。「勉強しろ、勉強しろ」と父にどなられ、時には理不尽な暴力を受けて育ってしまうと、子供は親に対して恐怖心を覚えて、従順になります。完全に親に支配されてしまいます。私は小学生の時、父が手を振り上げると、頭の働きとは関係なく、条件反射的に両手で顔を隠す身構える癖がつきました。父から暴力を受け続けることで、自然に身に付いた「防衛反応」です。
現在、学校や行政、NPOなどの多くのセクターが子供たちのセイフティーネットとして機能していますので、以前に比べれば、毒親から毒子が救出される、言い換えれば、毒子が社会福祉のセイフティーネットに絡まって、助かることが増えました。
しかし、問題は氷山の一角に過ぎません。毒親問題を家庭内部にまで切り込み、毒子を根本的に救済するという試みは、行政をはじめ、まだまだ手探りの様相です。
「あなたの家庭に問題がある!」
「あなたは毒親だ!」
「あなたは毒子だ!」
「ゆえに、私たちが救出する!」
このような会話が軽いノリで交わされる日は来るのでしょうか。毒親問題、待ったなしです。
毒親の発見と対処が早ければ早いほど、毒親も毒子も確かな未来への希望を持てます。