五校戦開幕! VS大道西女学園
そして日は過ぎ、五校戦の日。
王麟学院にて開会式を終えた俺たちは、改めて東龍学園へと集合していた。
「……今日は王麟じゃなくて、ここなんですね」
「うむ、ほとんどの競技は王麟で行われているが、時間も場所も王麟だけでは足りないからな。私たちのようにマイナーな競技は、他校へ左遷されているわけだ」
自虐的に言って、肩をすくめる渚先輩。
「こんな時まで競技の知名度の格差が……」
学校側からも注目度の差があるのは仕方ないが、こうも露骨に差を付けられると他の部が妬ましくなる。野球部とか。
「ま、おかげさまで自分らのナワバリで迎え撃てんだ。考えようによっちゃ役得だぜ」
「一応は、そう……なのか?」
「ンなことより、ちゃんと勝てんだよな、あれで」
「絶対とは言わないが。勝算はある、はずだ」
「はん、期待してるぜ、天才部長さんよ」
天王寺は俺の肩をバシバシと叩いた。
さらに夕那先輩と小夜が、一緒になって俺をつついてくる。
「あたしたちの汗と涙の結晶だからねー」
「姉さんと一緒に応援してます! 頑張ってください!」
……応援するのか俺で遊ぶのか、どっちかにしてほしいんだが。
だが今回の鍵となるのは――もちろん、試合に出るわけではないが――彼女たちだ。
俺は、そう思っている。
「……ところで。北帝の選手、誰も来てないっすね」
「あー、それ。アタシも気になってた」
ふと俺が言うと、天王寺が反応する。
「あ、北帝なら欠場です」
なぜか真勇がニコニコとしながら言った。
「欠場? 不正がバレて出場停止とか?」
「いえ。あ、それも、関係あるんですけど。北帝の部長、不登校になったみたいですから」
「は?」
俺たちは揃って疑問符を浮かべる。
「ほら、前にあそこの部長、ウソの告白してきましたよね。それで……やっぱり許せなかったから、北帝高校に広めたんです。そのこと、全部。……こういう時、小さいのって便利ですよね。すぐ同情してもらえて」
そう言って、真勇は目薬を取り出して目に点すと、泣き真似をしてみせた。
「うう、しくしく。わたし、好きだって言ってもらえて、すごく、嬉しかったのに。遊ばれてたんです。ぐすん。それにあの人、他の女の子たちにもみんな同じことを……ひどいです。――って、そんな風に言って回って。そしたら学校に来なくなったみたいです。何をされたのかまでは知りませんけど。くすっ、いい気味です」
心底スッキリした顔で、ウキウキとした声で話す彼女に、俺はどう反応していいのか分からなかった。
思い返すと大会の翌日、真勇は「用事がある」と言って部活に来なかったが。まさか、北帝に行ってたのか?
「ケッ、自業自得だな」
天王寺は、それだけ吐き捨てた。
何はともあれ、北帝が欠場となると残るは四校、そのうち西女は存在しないも同然なので……既に事実上、三校戦だ。
そう言ってしまうと、かなりスケールダウンした気がするが……どのみち俺たちの目的は変わらない。
王麟は、やはり俺たちより格上だ。そして鳳南だって、あまり油断のできる相手ではない。
この戦いを勝ち抜くために……部長である俺が、しっかりしなければならない。
「――猿渡君。部長という立場を重荷に感じる必要はないぞ。今までの君の力を発揮すれば、きっと勝てるはずだ」
「はい。……って、そういうのは部長になった俺の役目じゃないんですか」
「ふふふ、そうかもな」
渚先輩に励まされるだけで終わるのも癪だ。
ガラじゃないと思いながらも、俺は部員たちに向き合って、慣れない鼓舞の、そして誓いの言葉をかける。
「――みんな。まだ俺は、選手としても、部長としても、未熟だと思う。けど、必ずベストは尽くすし、それだけの準備はしてきたと思ってる。だからみんなも、お互いを……俺のことも、信じて戦って欲しい。絶対、勝とう!」
「おーッ!!」
感じていた気恥ずかしさを吹き飛ばす勢いで、部員たちの声が響いた。
そうだ。俺たちなら、きっと勝てる。王麟への雪辱を果たして、きっと優勝できるんだ。
勇気と充足感。足取りも軽やかに、それでいて勇ましく、俺は最初の試合を行う教室へと向かう。
「……で、俺たちの最初の相手、誰だっけ」
「西女」
「ああ」
そして俺たちは初戦を見事に制した。
さあ、残るは鳳南と王麟だ!




