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真勇の檻

******


 病室の窓から、飛んでゆく鳥の群れを見ていた。

 意識して同じ光景を見たのは、中学の運動会のときだったと思う。

 あの頃はずっと、群れの中で一番小さい鳥を探していた。


「小さくて可愛い」

 友達も大人もみんな、わたしのことをそう言った。

 きっと、褒めているつもりだったんだろう。

 わたしも、小さいころは喜んでいたから。

 それが、動物に向けるのと同じ目であることに気付くまで。


「真勇には難しくない?」

「小さいのに大丈夫?」

 他の人と同じことをしようとするだけで、みんな、わたしにそう言った。

 わたしが成功すると、「すごいね」「よくできたね」と、わたしを褒めた。

 みんなが当たり前にできていることを、わたしも当たり前にやっただけなのに。

 そうして、ようやく気付いた。みんな当たり前に、わたしを下に見ているんだ、って。

 いつしか、「小さい」どころか「可愛い」と言われることすら、わたしは苦手になっていた。


 わたしはネズミだ。

 餌を食べて、滑車を回すだけで褒められる代わりに、檻の中から出ることも許されない。

 「小さくて可愛い」という言葉で作られた檻の中で、わたしは支配されていた。


 人になりたい。

 ネズミとして褒められたって、何も嬉しくない。

 みんなと同じ場所で、同じように生きたい。

 見るもの全てに怯えながら、漠然とそう思うだけの日々が続いていた。



「君のような人材を求めていた!」

 高校に入学して間もないころ、あの人はそう言った。

 長いポニーテールの髪をなびかせた、大きな体の人。

 わたしは不思議と、その人を怖いと思わなかった。


 その人は目を輝かせて、わたしに語った。

 ディベートという競技のこと。

 体の大きさなんかに関係なく戦える世界のこと。

 それに対して、わたしは未知への恐怖よりも、期待と好奇心を感じて。

 その人が差し出した手を、わたしはしっかりと両手で握りしめていた。


 初めて踏み入ったその場所は、変わった人と、怖いことばっかりで。

 なのに、すごく楽しくて。

 ここなら、きっと檻を破れるんだ。

 ここなら、わたしは人になれるんだ。

 そう思った。


 ……でも、ネズミからいきなり人になるのは、ちょっと飛躍しすぎかな?

 なら、まずは犬か……猿くらいを目標にしようかな、なんて。

 くすっ。


******

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