真勇の檻
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病室の窓から、飛んでゆく鳥の群れを見ていた。
意識して同じ光景を見たのは、中学の運動会のときだったと思う。
あの頃はずっと、群れの中で一番小さい鳥を探していた。
「小さくて可愛い」
友達も大人もみんな、わたしのことをそう言った。
きっと、褒めているつもりだったんだろう。
わたしも、小さいころは喜んでいたから。
それが、動物に向けるのと同じ目であることに気付くまで。
「真勇には難しくない?」
「小さいのに大丈夫?」
他の人と同じことをしようとするだけで、みんな、わたしにそう言った。
わたしが成功すると、「すごいね」「よくできたね」と、わたしを褒めた。
みんなが当たり前にできていることを、わたしも当たり前にやっただけなのに。
そうして、ようやく気付いた。みんな当たり前に、わたしを下に見ているんだ、って。
いつしか、「小さい」どころか「可愛い」と言われることすら、わたしは苦手になっていた。
わたしはネズミだ。
餌を食べて、滑車を回すだけで褒められる代わりに、檻の中から出ることも許されない。
「小さくて可愛い」という言葉で作られた檻の中で、わたしは支配されていた。
人になりたい。
ネズミとして褒められたって、何も嬉しくない。
みんなと同じ場所で、同じように生きたい。
見るもの全てに怯えながら、漠然とそう思うだけの日々が続いていた。
「君のような人材を求めていた!」
高校に入学して間もないころ、あの人はそう言った。
長いポニーテールの髪をなびかせた、大きな体の人。
わたしは不思議と、その人を怖いと思わなかった。
その人は目を輝かせて、わたしに語った。
ディベートという競技のこと。
体の大きさなんかに関係なく戦える世界のこと。
それに対して、わたしは未知への恐怖よりも、期待と好奇心を感じて。
その人が差し出した手を、わたしはしっかりと両手で握りしめていた。
初めて踏み入ったその場所は、変わった人と、怖いことばっかりで。
なのに、すごく楽しくて。
ここなら、きっと檻を破れるんだ。
ここなら、わたしは人になれるんだ。
そう思った。
……でも、ネズミからいきなり人になるのは、ちょっと飛躍しすぎかな?
なら、まずは犬か……猿くらいを目標にしようかな、なんて。
くすっ。
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