表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/91

渚の嘘

******


 帰り道。少し歩いて、肩を落とす。


 私は一つ、嘘をついた。

「後輩へのいじめを止めようとするうち、暴力を振るった」

 私が部員を殴ったのは、そんな高尚な理由ではない。


 口論の最中、ある部員がこう言ったのだ。

「部長って体は大きいくせに心は狭いよね」

 私はその言葉に我を忘れ、部員に殴りかかったのだ。

 部員を守るためでも、何でもない。ただの個人的な怒りだった。


 どうして正直に告げられなかったのか、自分で思い出しても情けなくて仕方がない。

 嘘をついた引け目を隠すようにベラベラと下らない雑談を繰り返すことはできるくせに、己の弱さを認めることはできないのか。


 彼は私を、自分に似ていると言った。

 それは違う。

 純粋に他者を守ろうとして戦った彼は、私なんかよりもずっと強いのだから。



 昔から、大きな体が忌々しくて仕方がなかった。

 男子からはまるで見世物のように好奇の目を向けられ、女子からは怖いと恐れられた。

 可愛らしいものを好きだと言えば、イメージに合わないと笑われた。

 何かに怖気づけば、大きな体のくせにみっともないと叱られた。


 小さくなりたい。華奢で、可愛らしくて、弱くても許される存在になりたい。

 そんなことを願ったところで、何も変わらなかった。

 だから私は、強く快活な人物として振る舞うことに決めた。

 それが自分にも他人にも、ただ嘘をつき続けることだと知りながら。


 私の全ては嘘ばかりだ。

 自分を偽り、他者を欺き、間違っていると分かり切った道を歩み続けてきた。

 私は一体、いつ変わる?

 自問自答を繰り返しながら、私は帰路につく。

 ただ一人、私の弱さを知った上で共に過ごしてくれている、彼女に叱られるために。


******

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ