渚の嘘
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帰り道。少し歩いて、肩を落とす。
私は一つ、嘘をついた。
「後輩へのいじめを止めようとするうち、暴力を振るった」
私が部員を殴ったのは、そんな高尚な理由ではない。
口論の最中、ある部員がこう言ったのだ。
「部長って体は大きいくせに心は狭いよね」
私はその言葉に我を忘れ、部員に殴りかかったのだ。
部員を守るためでも、何でもない。ただの個人的な怒りだった。
どうして正直に告げられなかったのか、自分で思い出しても情けなくて仕方がない。
嘘をついた引け目を隠すようにベラベラと下らない雑談を繰り返すことはできるくせに、己の弱さを認めることはできないのか。
彼は私を、自分に似ていると言った。
それは違う。
純粋に他者を守ろうとして戦った彼は、私なんかよりもずっと強いのだから。
昔から、大きな体が忌々しくて仕方がなかった。
男子からはまるで見世物のように好奇の目を向けられ、女子からは怖いと恐れられた。
可愛らしいものを好きだと言えば、イメージに合わないと笑われた。
何かに怖気づけば、大きな体のくせにみっともないと叱られた。
小さくなりたい。華奢で、可愛らしくて、弱くても許される存在になりたい。
そんなことを願ったところで、何も変わらなかった。
だから私は、強く快活な人物として振る舞うことに決めた。
それが自分にも他人にも、ただ嘘をつき続けることだと知りながら。
私の全ては嘘ばかりだ。
自分を偽り、他者を欺き、間違っていると分かり切った道を歩み続けてきた。
私は一体、いつ変わる?
自問自答を繰り返しながら、私は帰路につく。
ただ一人、私の弱さを知った上で共に過ごしてくれている、彼女に叱られるために。
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