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ラズーン 2  作者: segakiyui
2.闇の巫女達

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12

「イルファはどうしてたんだ!」

「わかんない、アレノを探しに…」

「あの、くそ野郎!!」

 アシャの語気の激しさに、再会できたことをひたすら喜んでいたナストとマノーダがうろたえたように振り返った。

「どうしよう、どうしたらいいの、ぼく…っ!」

「……今、イルファはどこにいる?」

 猛々しく眉をしかめてアシャが尋ねた。

「イルファ? ユーノは?」

「ユーノは大丈夫だ」

 一瞬眼を細めたアシャがひんやりと言い放った。

「あいつは天才だ。それに俺がすぐに追いつく」

 だが、万が一、イルファやアレノを庇っていたら、しのぎにくくなる。

「う……ん」

 足手まとい、そのことばが再びレスファートの胸を掠めた。

 ぼくも、イルファも、ユーノを助けられないんだ、やっぱり。

 レスファートは唇を噛み、泣きそうになりながら眼を閉じ、眉を寄せた。直前にイルファの心象を確かめていない分、位置が捉えにくい。これまでの時間が積み重ねた心象を頼りに神殿の中を探し求める。こぶしを握りしめて集中し、ようやく慣れ親しんだ気配を捕まえた。

「わかったよ、どっか、すごく広い所。広間みたい」

「あんのや…」

 その場所がどこかすぐに思いついたらしいアシャが、再びの罵倒をぎりぎり呑み込んだ。

「よりにもよって………こっちに来そうにはないか?」

「だめ、みたい」

 レスファートはイルファの側で消えたり現れたりする、もう一つの気配を確かめる。

「だれか、いっしょ……女の人、マノーダににてる」

「アレノか!」

 ぎりっとアシャの歯が鳴った。

「ナスト!」

「はいっ!」

 慌てて駆け寄ってきた2人に、アシャはてきぱきと指示を下す。

「マノーダを連れて逃げろ! ここをまっすぐ、角を右へ曲がって、その次の角を左に行けば、神殿の入り口に出るはずだ」

「あ……でも、アレノ……」

「イルファが助け出してる。すぐに後を追わせるから、心配するな」

 アシャにしてはひどくぶっきらぼうに言い捨て、2人に背を向けてレスファートに向き直る。

「レス、ナストと一緒に…」

「いや!」

 聞かずともわかった。足手まといになるかもしれないということも、十分わかった。それでも、レスファートは大きく首を振った。ナストのことばが頭をよぎる。

「ぼくだけだよ、ユーノの居るところ、知ってるの」

「…」

 アシャが目を細める。紫の瞳が揺らめく炎をたたえていて、まるで平原竜タロと呼ばれる竜族の眼のようだ。冷酷なほど見定める眼差し、それに負けまいと唇を引く。

「ぼくだけだ」

 アシャにもユーノの位置は掴めない。辿り着くまでに時間がかかれば、ユーノの危険は倍加する。意地だけでなく、気持ちだけでなく、今ここでレスファートはアシャに従う気にはなれない。

「わかった」

 アシャが頷く。

「じゃあ僕達は、逃げ、ます!」

 ナストが一瞬苦しそうにことばをとぎらせつつ、それでも一気に言い切って、なお振り返ろうとするマノーダをひきずるように、教えられた出口へ走り出す。

「来い、レス!」

「うんっ!」

 待ってて、ユーノ、今ぼくが行くから!

 身を翻すアシャの足下で、レスファートは全力で走り始める。


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