Something invisible start to move(見えない何かが動き出す)⑥
エアドリスはファーストに銃口を向けるが、恐ろしいスピードで迫った破壊者がそのハンドガンを蹴りあげようとする。それに気づいた彼も、身を翻して拳銃が手から離れるのを回避する。
「不意打ちとは、姑息ですね」
「それもやり方なのさ」
アンドロイドの二撃目の蹴りがエアドリスに迫る。彼は横飛びをして回避しようとするが、予想外のスピードに躱しきれず、そのまま後方へと吹っ飛んだ。
そして、後方に吹っ飛んだエアドリスは、そのまま姿を「消した」
デストロイヤーとファーストの二人は、魔法のように姿を消した暗殺者に驚かざるをえない。その隙に銃声が三度鳴り、その全てがアンドロイドの関節部分に命中する。デストロイヤーは何が起こったかわからない、といった顔でよろめく。
それを見た思わずファーストは叫んだ。
「アンドロイド!」
「私には破壊者という名前があるの。
それから、死にたくなければ、私から離れないように」
「そうするよ」
ファーストはすこし青ざめた顔で彼女の考えに同意した。
姿の見えない敵。透明化。おそらく、彼の外骨格によるものだ。フォトンによって光の屈折率を変動させて、周りの景色と溶け込むように、あのマントのような外骨格の色を変化させている。とファーストは考え、それを彼女に伝えた。
「それから、さっきの男の銃について。
ちらりと見たけれど、あれは六重奏と呼ばれるリボルバーライフルのカスタマイズだ。弾は9mm、装弾数は六発。で、今三発、銃声が聞こえた。その後は、長いリロードが必要なんだ。その隙を攻撃できないか?」
「無理ね」
「無理?」
そういうと彼女はお手上げといったように、両手をあげる。
「武器がないわ」
「これじゃダメか?」
そう言ってファーストは自分の肩にかけていたアサルトライフルを彼女に渡す。
吸光反応は、目の前にいるアンドロイドがフォトン不足によって起こされたものだったため、すでにフォトンを使用した兵器は使えるようになっていた。しかし、それでも彼女は頭を横に振る。
「それじゃあ難しいわね。
だってお相手はなかなかの——巧者、よ」
破壊者はそう言いながら、その場を跳ねる。その直後に銃声が二発鳴る。殺し屋が彼女に接近し、姿を表したのだ。
下からリボルバーで狙いを定める男と、それを軽やかに躱す女という光景は——もしファーストが人間だったならば——名画を一枚思い出させただろう。
「これも躱すのかよッ!」
「——これで最後の一発よ。殺し屋」
そう言いながら、ファーストから受け取ったアサルトライフルで攻撃をするが、すぐさまに殺し屋の方も透明化をしてその場から退避する。男の取るヒットアンドアウェイ戦法に、ファーストは思わず臍を噛んだ。が、その一方で破壊者は表情を一つ変えずにファーストへ耳打ちした。
「ここまでどうやって来たの?」
「バイクがある」
「……なるほど、合図をしたらその方向へ撤退しましょう
それさえあれば、逃げ切れるはず」
そう言いながら、彼女は威嚇射撃を行う。フォトンを光子弾に変換するタイプの武器には、実弾を使用する銃に比べて威力は落ちるが、リロードの必要がないという利点があった。
「一つわかったことがあるわ。
理由はわからないけれど、彼は透明化した状態で発砲することはない。
それからもう一つ——彼は必ず、背後からやってくる」
そう言って彼女は体をくるりと後ろに向ける。その視線には驚いた顔をした殺し屋があった。彼は舌打ちをして、一歩踏みとどまる。そのおかげで、破壊者が前に出した拳をすんでのところで回避することができた。