Something invisible start to move(見えない何かが動き出す)④
光線が背後で矢となってファーストを襲うが、これまで運のいいことに、一発も被弾することはなかった。しかし、「今までない」は「これからもない」と同義ではない。ファーストは冷や汗をかきながら、走り続ける。
「ペンタンドを引っ張る力が、どんどん強くなってくる!
なるほど、思い出したぞ。フォトンを結晶化させる技術がこの星にはあるということを——このペンダントはまさにそれだ! この赤いペンダントはフォトンを結晶化させて作られたものだ!!
つまり! これは強力な引力は吸光反応だッ!!」
それに気づいた途端、とうとうファーストの足を光子弾が貫く、激痛に思わず顔を歪めるが、ここで倒れるわけにも立ち止まるわけにもいかない。ファーストは体の体勢を変える。ファーストは——ペンダントを頼りにまるで船が板に乗った人を引っ張るウェイクボードのように——「砂上を滑る」
吸光反応、この星の主なエネルギー源である「フォトン」を、文字通り吸光する反応のこと。彼はそれで今まで疑問に合点がいった。
不具合を起こしていた彼のバイクも、アサルトライフルも「フォトン」を動力源としていたが、この強力な吸光反応がそれらの動作を阻害していたのだ——しかし、いったい何が、その反応を動かしているのだろうか?
「ここで捕まったら、僕がエイリアンってことも露見してしまうかもしれない!
捕まるわけにはいか——」
そう言いかけて、ファーストは突然、地面に顔を叩きつけられた。そして、ペンダントから手を離してしまう。ペンダントはまるで獲物を見つけた蛇のように、するすると砂の上を移動する。
ファーストはそれに魅入られたように、視線が手前から奥へと、誘導される。そして、ペンダントが一点に留まると、ファーストの目もそこに釘付けにならずにはいられなかった。
そこにあったのは「人形」だった。女型のアンドロイドが——どうして、こんな岩陰に打ち捨てられているのか、その理由はファーストには見当もつかないが——そこに佇んでいた。ペンダントについていた、赤い結晶フォトンはアンドロイドに近づくと、子犬のように震え、ガラスのようにくだけ散る。
砂漠の世界に似つかわしくない、白雪を想起させる肌。薄く開かれたまぶたから除く、灼熱のような緋色の瞳。そして何よりも目を引くのが、洗練された流線型の紅い外骨格と、それとは対照的に、基幹構造がむき出しになった左腕。すべて含めて、ファーストがこの星で見たどの外骨格よりも、シンプルで美しかった。
アンドロイドは立ち上がる。ゆっくりと、厳かに、しかし、優雅に。彼女はファーストの瞳の奥の奥の方を見据え、突然のアンドロイドの出現に驚く彼の方も、彼女の瞳を見る。彼女は口を開く。その一つ一つが、まるで我儘な女王のように、気品があって、それと同時に彼は、畏怖の懸念を抱かずにはいられなかった。
「フォトン充填完了。システム起動完了。コード4番から11番まで再起動可能。
——こんにちは、異星の者。私の名前は破壊者。
貴方が、私を目覚めさせたのかしら?」