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【書籍化&コミカライズ】女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました!  作者: 蛙田アメコ
4章 ~モラハラクソ男マクスウェルとの対決だって圧勝します①~
24/46

1.大魔女さんはどうやら復讐を決意したようでして。

【前回までのあらすじ】

ターニャをパーティから追い出したクソ男ライアンへの復讐のために、さっくりと冒険者ギルドのランキング戦(Bランクパーティまで出場)に優勝したターニャ率いる冒険者パーティ【リリウム】。

町の女性たちからの絶大な人気を獲得したり、かつては敵同士だった狐娘キャサリンと(主に元暗殺者で回復術師(ヒーラー)のナディーネが)少しずつ打ち解けたりして、冒険者として順調な毎日を送っていたターニャたち。だが、大魔女ラプラスは三〇〇年前の仇敵である「不老不死を手に入れた宮廷魔術師マクスウェル」の存在に引っかかりを覚えており……。


***


新章ではラプラスの過去が明らかになります。

マクスウェルがライアンを超えるクソクソのクソなので、顎を砕きに行きましょう。


ぶっとばせ、理不尽。

 オーデ城。

 その中心部。


 黒鎧の男クラークは急ぎ歩を進めていた。


 飢えた身を満たすため、視察と称してたわむれに参加したランキング戦。

 そこで出会ったのは……。


 間違いない。

 あれは。

 そうとなれば、急ぎ計画を実行せねばなるまい。

 おそらく、絶対に。


 ()()()は、自分の前に現われる。

 黒鎧の男は、そう確信していた。



 クラークは、目当ての部屋の前に立つ。

 そして、無遠慮なノック。



「皇女殿下」



 声をかければ、内側から警戒もなく鍵が開かれる。


 白衣の侍女に迎えられて入った部屋。

 窓辺には、銀髪の麗しい少女が佇んでいた。


 クラークは黒鎧の兜を外す。

 隠されていた、青年の顔があらわになった。



「アリエノール様」



 名を呼べば。

 銀髪の少女はゆっくりと振り返る。

 何度も繰り返してきた光景であった。


 少女の菫色の瞳が青年の姿をとらえる。

 そして。

 少女のばら色の唇が彼の名を紡いだ。



「……ごきげんよう。()()()()()()()




***




 小狐亭。

 昼下がりの閑古鳥タイム。

 ターニャとナディーネは、テーブルに座ってうなだれていた。



「なに? まだ見つからないの」



 ため息混じりに冷たくひやしたミルクを出してくれるのは、すっかりエプロン姿が板についたキャサリンだった。



「うん。どうしちゃったんだろう、ラプラスさん」

「そのうち戻ってくるんじゃない?」

「でも……。私に黙ってどこかに行っちゃうなんて」



 ラプラスがターニャたちの前から忽然と姿を消して、今日で三日目。

 ターニャの胸の内の不安が膨らんできていた。


 ラプラスが、どこか思い詰めているような表情をしている。

 それはターニャも感じていた。

 でも。

 何も言わずに、こんな形で居なくなるなんて。



「まあ、でもさ。もともと、偶然ばったり出会った仲……なんでしょ? それに、ライアンに一泡吹かせてやるために手を組んでたわけだし?」



 気まずそうにキャサリンは視線を逸らしながら言う。

 ナディーネが、「ちょっと、キャサリンさん」とたしなめているけれど。


 ……何から何までおっしゃるとおり、なんだよなぁ。


 まさか、このまま会えないのだろうか。





 ころん。

 からん。




 小狐亭の入り口。

 古びたドアベルが鳴る。



 ――もしかして、と期待して視線をやれば。



 そこには、小太りのおっさんが立っていた。

 はい、このターン終了!!!!


 そう思って、瞬時に視線を外したターニャであった。



「いやはや! 参った参ったぁ!! 忙しいなあ、まったく!!」



 聞こえよがしに、男は声をあげる。

 彼がお忍びでやってくるという噂のグルメ地方貴族だろうか。

 だとすると。

 全っ然忍んでなくて逆に驚くわ、とターニャは思った。



「いらっしゃいませぇ」



 接客をするキャサリンを値踏みするような目で見ると。

 ふふん、と鼻を鳴らして男は名乗る。



「新入りかね? ご店主は?」

「あー。祖母は身体を壊しておりまして。そのあいだ、私が店を預かっております」

「ほお、あの婆さんの孫娘にしてはなかなか別嬪だ!」

「……ご注文は?」



 無礼な物言いを無視して、キャサリンはメニューを手渡す。

 その頭の中では丸々太ったおっさんを、キャサリン得意の狐火球(ファイアボール・狐)でこんがりローストしているのは言うまでもない。

 まあ、喰いたくもないけど。



「いつもの」

「……はい?」

「だから、いつものだ。ルドルフ・フォン・バッヘル男爵と言えば厨房が分かるだろうさ」



 随分と横柄な態度である。

 しかし。

 無視を決め込むキャサリンの足をジロジロと眺めながら、自慢げに語る内容に。


 ターニャの耳は釘付けになった。



「しかし、厄介な女もいたものだよ。天下のオーデ城に乗り込んできたと思えば、『あたしは大魔女ラプラスだ、ハローハロー!』ときたもんだ。明らかに嘘だろうがなんだろうが、西の大荒野でワイバーンが狩られた一件があっただろう? いやいや、ワタシも王立魔導師協会の幹部として?? 原因究明にあたっているわけだがまーーぁ難題だねぇ?? んん~??」



 出た。

 出ました、権力ちらつかせムーブ!


 しかし今は、おっさん貴族……ルドルフの口から飛び出した「ラプラス」の一言の方が重要だ。

 その話、詳しく。


 ターニャの視線が、キャサリンのそれと交差する。

 キャサリンはゆっくり頷くと、さりげなく話を誘導した。



「ラプラスってぇ……あのラプラスなんです? すごくないですか、それ?」

「ん? まあ、狂言だろうさ。どうやら冒険者ギルドのランキング戦に出場していた女らしいが……まったく、冒険者になろうなんて女は、たいがいココがどうかしているな」



 ココ、といいつつ側頭部を人差し指でちょいちょい、とするルドルフ。

 そのジェスチャーに、むむ、とターニャは閃いた。



「ハハーン、そこに風穴をあけてください、というジェスチャーですね?」

「は!? なんだ、きみは!?」

「おっと、なんでもありません!」



 とターニャは口をつぐんで、ぐっとこらえる。

 キャサリンが慌てて話題をすすめる。



「ってことは、その偽ラプラスはお目こぼしってことなんですかぁ?」

「む? ま、まさか。王城の地下牢に繋いである。なんでも、マクスウェル様じきじきに取り調べをするそうだ」

「へえ……」



 間違いない。

 ターニャは確信する。


 ラプラスだ。

 マクスウェルに接触するために、わざと捕まった……のか?


 でも。

 どうして、自分たちにも黙って……。



「いやぁ~。この偽ラプラス騒ぎのせいで、連日連夜残業続きだ! 喰わなきゃやってられんさ。せめて、西の大荒野で勝手にワイバーンを狩った犯人くらいは早期に確保したいものだがなー。まったく部下が使えんよ! この私も逮捕権は保持しているわけだし、私が現場に出れば三日と立たずにそのような不届き者は逮捕できるだろうがなぁ!! なぁ!?」



 その、ルドルフの言葉に。



「私です」

「……………は?」

「っ、ちょ。ターニャさんっ!?」



 気がついたときには、身体が勝手に動いていた。




 ラプラスの居場所が分かった。

 王城の地下牢。

 そこに一番簡単にたどり着く方法が、目の前にある。




 ターニャは、ニヤリと笑いながら。

 ルドルフの胸ぐらを掴む。



「聞いてます? 私が、西の大荒野のワイバーンの首を落としました」

「へ?? はぇ??? な、なんだね君は!! っえ、ワイバーンを??」



 ついでに、キャサリンへの度重なる無礼(セクハラ)へのオトシマエとして、ブーツの一番堅いところでおっさんのスネを蹴り上げておいた。

 きゃん、痛い!? と涙目になっているルドルフ男爵に。

 ゆっくりと言い聞かせるようにターニャは告げる。



「ええ。私が西の大荒野のワイバーンを殺して、大魔女ラプラスの封印を解きました」



 大魔女ラプラスの封印。

 ターニャの口から飛び出した表沙汰になっていない情報に、ルドルフの顔色がさっと青ざめる。

 畳みかけるように、静かに。

 ターニャは言った。






「さあ、私を逮捕しなさい」

お読みいただきありがとうございます。

お陰様で14,000ptを突破しました! 百合パーティでこんな……びっくりです。

新章では、ラプラスさんがモラハラクソ男マクスウェルをぶっ飛ばしにかかります。

かっこいいターニャが活躍する予定ですし、そしてナディーネとキャサリンもかっこよく決めてくれるはずかと。


面白かった、続きが気にあると思っていただけましたらページ上部よりブックマークしていただいたり、以下より感想やポイント評価いただけますと嬉しいです。

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